今年1月から3月、3カ月連続でシングルをデジタルリリースしたLimited Express (has gone?)。ダイナミックな躍動感で"ただのミュージック!"と叫ぶ「NO MORE ステートメント」、旅立った人たちへの"See you"を2022年のニューウェイヴでかっ飛ばす「R.I.P, friends」、予測不可能、カオスなのにメチャメチャ痛快な「INVITATION」。そしてリリース後の3月27日に新宿ロフトでワンマンライブを敢行。コレが最高だった。楽しく、エネルギッシュでスリリング、吹っ切れて突き抜けて、そしてポジティブ。
ここ最近、YUKARI(vo)は、"ただの音楽"や"意味なんかない"という言葉を口にしていたし、「NO MORE ステートメント」では"ただのミュージック"と歌詞にもした。ワンマンライブは言葉通り頭の中が空っぽになっていくような痛快さと、言葉とは裏腹とも言える意志とメッセージを強烈に感じた。
"ただの音楽"、"意味なんかない"、その言葉にはどういう思いがあるのか、どうしてもYUKARIに聞きたくなった。
2019年に「フォーメーション」で女性の多様性を示した。そして今、リミエキはアップデートし続けていく。(interview:遠藤妙子 / photo:大橋祐希)
なんでもかんでもステートメントを出さなきゃいけないの?
──1月に「No more ステートメント」、2月に「R.I.P, friends」、3月に「INVITATION」と3カ月連続シングルのデジタルリリース。反響はどんな感じでした?
YUKARI:いつもとは違うリリースの仕方をしたので、ちょっと違う広がり方をしてる気がしますね。
──聴きたいと思ったらすぐに聴けるっていう。
YUKARI:うん、そうですね。
──まずリリースの順序がいい! 最後が「INVITION」でリリースのワンマンライブのタイトルにもなってる。YUKARIちゃんにインタビューしたいって思ったのはそのワンマンライブが素晴らしくて。ポジティブでエネルギッシュで楽しくて吹っ切れていた。で、ちょっと前からYUKARIちゃんは「ただの音楽」とか「意味なんかない」みたいなことを言ってますよね。
YUKARI:言ってますね。「ただの音楽」とか「意味なんかない」って。
──なんかわかるなぁって思ったんですよ、もともとLess than TVはそういうレーベルじゃんって。でも同時に、リミエキの曲やYUKARIちゃんの発言や活動は、特にここ数年、社会と向き合ってるしメッセージがありますよね。だから「ただの音楽」って安易に出た言葉ではなく、考えた末の言葉だと思って。
YUKARI:うん、そうですね。
──ワンマンが突き抜けててカッコ良くて、そうだよ! ただの音楽、ただのロックだよ! って興奮したんだけど、「ただの音楽」とか「意味なんかない」ってどういう思いがあるのか、YUKARIちゃんに言葉の真意を聞きたいなって。
YUKARI:はい。えっと、コロナが起きて、音楽、ロック、カルチャー、ライブハウスが悪者にされたじゃないですか。で、バンドマンやミュージシャンはライブをやるか/やらないか、表明しなきゃいけないみたいな空気になった。アレ? なんなんだろう? って思って。私にはなんか違和感があったんですよね。自分たちも初期の段階でコロナに感染していろんなところに迷惑かけて。状況説明と今後のことと、認識が甘かったってことは言ったんですね。でもなんか、おかしくないですか? いちいち「うちのバンドはライブをやります」「うちはライブをやりません」ってわざわざ表明しなきゃいけないの? って。
撮影:小野由希子
──確かに変な話ですね。
YUKARI:コロナという初めてのことで、どういうやり方がいいかわからないっていうのはあるけど。なんかこう、スタンスまで表明しなきゃいけないって感じになって。もちろんうちらも、ライブをやる/やらない、考えましたよ。ライブをやるとなったら、感染対策はもちろん、ライブハウスに来られない人もいて、そういう人を置いてきぼりにしてしまうことになって。自分が見えないところで起こっていることもあるわけで。ライブに来られない人、見えないことへの想像力は大事だなって思ったり。ホント考えることがたくさんあった。
──でも実はコロナの前からそういうことはあるよね。それぞれの生活、それぞれの事情でライブに行けないっていうのは、コロナの前からずっとある。
YUKARI:そうそう。みんなそれぞれ何かを抱えて生きていて、それがコロナによって可視化されたっていうのはありますよね。
──だから自分たちのやり方や考え方やスタンスも、可視化させなきゃいけなくなって。
YUKARI:そうなんですよね。SNSが今ほどなかったら、10年前だったら全然違ってたかもしれないですよね。そういうのを経て、いろいろ考えて、自分のやってることは、「やります」とか「やりません」って宣言して認めてもらわなきゃいけないことなの? って。もっと軽い気持ちで…、もちろん、感染対策はちゃんとやった上で、自由にライブに向かっていいんじゃないの? って。自分はなんでバンドをやってるのかな? って立ち返ったら、やりたいからやってるだけで、そんな高尚なものじゃないなって。それと同時に、なんか最近、すぐにステートメントを出すじゃないですか。いいことだとは思うんですよ。社会的な問題と向き合っていることを発信するのは大事だし、その言葉に励まされている人もいっぱいいるだろうし、影響力のある人の言葉なら周知もできる。大事だと思うんです。思うんですけど、そんなになんでもかんでもステートメントを出さなきゃいけないのかな? って。なんか、ステートメントを出したことによって満足したりとか。
──何か問題が起きてステートメント出して、出したことでとりあえずおしまいって感じになったりとか。
YUKARI:そうそう。ステートメントはいいことだとは思うけど、でも大事なことってステートメントを出した後の行動ですよね。あとステートメントの文章って硬いし怖くないですか?(笑) 信用ならん!