ロックの大事なスピリットや情熱は新宿ロフトの中に宿っている
──亜無亜危異やARB、ルースターズといった新宿ロフトをホームグラウンドとした骨太なバンドの系譜が今は音楽的地層としてどこへ連なっているのだろうと考えることがあるのですが、お二人はどう思いますか。
J:時代の移ろいもあるでしょうし、ただ、僕らはずっと良い時代を生きてこれたと思っているんです。音楽のフォーマットがレコードとテープだったのがCDやMDになり、今やパッケージすらなくなって配信の時代になり…その変遷をずっとリアルに見てこれたし、音楽と生き方が直結するような時代のバンドから2023年最新形のバンドまでを見てこれている。そうした流れの中で新宿ロフトはずっと存在し続けてきたわけで、その意味でもロックの大事なスピリットや情熱はロフトの中に宿っていると思います。その時代ごとに呼応してきた多様性、歴史の重みをステージに立つ側としてはひしひしと感じますしね。
アツシ:僕は先人のDNAみたいなものはあまり気にしないタイプなんです。それはその時代のものであって、今は今のやり方があるって言うか。僕は僕で一つの時代を作ったつもりだし、LUNA SEAはLUNA SEAで一つの時代を作ったけど、みんな今も第一線で元気にやってるわけで。過去よりも今が大事なんですよ。
──権威や権力に唾棄する亜無亜危異の歌やARBの“ワークソング”は日本経済が右肩上がりの時代に生まれたことを考えると、その系譜を継ぐレベルソングがこの時代に生まれない、あるいは支持を得ないのはなぜなんだろうと考えてしまうんです。日本経済はずっと低成長なのに物価高騰が続き、貧困層と富裕層の両極化は進むばかりで、軍備拡張を国民に負担させ、差別横行や人権無視を助長させる政権がそれでも支持を得る今の時代こそロックの出番じゃないかと思うのですが。
アツシ:……難しい話はよくわかりません(笑)。
──ロフトをホームグラウンドにしていたバンドから学べたこととは、たとえばどんなことですか。
J:バンドや音楽に全身全霊、すべてを賭けた人たち。バンドが発するオーラや佇まいというか、何か特別なものを身に纏っている人たちが多かった。今でもそういう人たちはいるんでしょうけど、当時は特にそんな人たちじゃなければ生き残れなかったんじゃないですかね。誰よりも尖ってぶっ飛んだものを持っていないと弾き飛ばされてしまう世界だったんだと思います。その気迫や覚悟みたいなものがあの時代には存在していたんじゃないかなと。全国各地からそんな個性の塊のような人たちがロフトへ目掛けて集まってきて鎬を削るわけで、ちょっと楽器が上手いくらいでは埋もれてしまう。だから僕らも自分たちのオリジナリティや個性を確立するのに必死でした。今では笑い話ですけど、僕らは鹿鳴館のオーディションにまだ受かってないんです。だけどその経験によって目を覚ましたところもあって、それなら自分たちらしくやっていこうと固く心に決めたり。そういう反骨精神みたいなものがバンドのアイデンティティとしてもありましたね。
アツシ:僕はナニクソ!みたいな感情は昔からないかな。そういう感情に自分で気づかないっていうのもあるけど(笑)。
──5月10日の共演がますます楽しみになってきましたが、セッションは期待して良さそうですか。
アツシ:僕らはぜひ、お願いしたいと思ってます!
J:その辺りはお楽しみに、ということで。ニューロティカほど新宿ロフトでライブをやったバンドは他にいないわけですし、あっちゃんはロフトを隅々まで知り尽くしたまさにロフトの番人ですよね。そんなロフトの番人が主催するライブに出させてもらえるのは光栄ですし、胸を借りる思いでぶつかっていきたいです。
アツシ:ありがとうございます。じゃあ、Jのバンドは会場入りの10分前に集合してもらって、まずは地下1階の事務所から案内します。
──どういうことですか?
アツシ:いや、ロフトの番人って言われたから隅々まで紹介しようと思って(笑)。それはさておき、当日はひとつよろしくお願いします!