OLEDICKFOGGY、フルアルバムとしては5年振りの新作『残夜の汀線 -ZANYA NO TEISEN-』がリリースされた。ベースとアコーディオンがメンバーチェンジし新体制となったオールディック。ポップで、勢いと疾走感があり、スッと耳と心に飛び込んでくるメロディが鳴り響く。だがそれだけじゃない。明るいかと思えば不穏な空気が流れ、軽快なのに憂いがあったり、熱を帯びつつクールだったり。レゲエ、アイリッシュパンク、スパニッシュ、スウィング...。様々な面を、奇をてらうことなく堂々と見せている。オールディックの王道でありつつ、ダイナミックで新鮮。
『残夜の汀線』、いい言葉だ。夜明け前の街を駆け抜けたくなる。(Interview:遠藤妙子 / Photo:Chabo)
レコーディングはゴールが見えないからこその面白さ
──最初に言っちゃいますが、今作、凄く良いです! フルアルバムとしては『Gerato』(2018年)から5年ぶりですが、その間にメンバーチェンジがありました。新メンバーが決まった流れを教えてください。
大川順堂(Drum):まず去年の春にアコーディオンのよっちゃん(yossuxi)が辞めることになり、オーディションで募集かけて、それで朋ちゃんに決まりました。メンバーも決まった、スタジオ入るぞーってなったら、今度はベースの上原子Kが辞めることになりまして。
──Kさんの脱退は急だったんですね。
順堂:そうなんですよ。次のベースを決めないといけなくなり、最初は何人か交替でヘルプで弾いてもらって。その中で鹿児島君が正式にメンバーになりたいって言ってきてくれて。
──アコーディオンのオーディションはどんなふうに?
順堂:課題曲の2曲を弾いてる動画を送ってもらって。
スージー(Guitar):朋ちゃんは、自撮りの動画で曲を弾く前に礼をして、終わってからも一礼していて、礼儀正しかったんですよ。それが決め手ですね(笑)。それだけじゃなく本当に演奏も上手いし。
順堂:技術面は申し分ないよね。あとは慣れてくれば。いやもう既に慣れてノビノビやってくれてます。
──朋子さんはオールディックに入ろうって思った理由は?
三隈朋子(Accordion, Keyboard):オールディックのことは前から知っていてライブもずっと観に行ってたんです。私はこれまでいくつかバンドをやっていて、最初のバンドはラスティック界隈でライブしてたバンドで、アコーディオンを始めたきっかけもラスティックっていうジャンルを知ってからなんです。ラスティックならアコーディオンだ! って。一番モテそうだなって(笑)。
順堂:バエるからでしょ(笑)。
朋子:そうです(笑)。
──いいメンバーですね~(笑)。鹿児島さんは?
鹿児島大資(Bass):僕もオールディックのライブにはよく遊びに行っていて、仲良くさせてもらってたんです。で、ベースが辞めるからヘルプとして弾かないかと誘ってもらって、やります! やらせてください! って。ヘルプは僕の他に何人かいて、こんな楽しいこと譲りたくないなってだんだん思ってきて。メンバーになりたいって自分から言いました。
──もともとオールディックは聴いていたんですね。
鹿児島:オールディックは聴いていたんですけど、実はラスティックはほとんど聴いてなくて。ずっとパンク、ハードコアを聴いていたんで。僕はオールディックはパンクバンドだと思ってるんです。
三隅朋子(Accordion, Keyboard, Vocal, Chorus)
鹿児島大資(Electric Bass, Chorus)
──その通りですよね。オールディックに入って、どうですか? 思った通りとか、こんなはずじゃなかったとか(笑)。
朋子:ずっと楽しいです。練習するのも楽しいし、毎週のスタジオも楽しみだし。仕事しながら曲のことを考えてたり。ここはこうやって弾くのがいいかな? とか。レコーディングも楽しかったです。何度かレコーティングしたことあるんですけど、こんなに楽しいレコーディングは初めて! って。
──アコーディオンのアレンジは自分で考えるんですか?
朋子:こういう感じでって言ってもらったときは、それを意識しながら自分なりに考えてやってます。
──鹿児島さんはレコーディングはどうでした?
鹿児島:楽しくやらせてもらいました。やればやるほどオールディックはカッコイイなって思って、そこについていくのに必死で。こんなはずじゃなかったって、自分自身に対して思ったことは何度もあって。もっと頑張りたいと思います。
──ベースの低音と、バンジョーやマンドリンとの音の落差というか、立体感があってとてもいいです。
鹿児島:ありがとうございます。レコーディングは、前にやっていたバンドはイメージを固めてから臨むことが多かったんですけど、オールディックは作っていく中で出来上がっていくっていうやり方で。そういう作業は初めてで、わからないことのほうが多かったんで必死でした。だから出来上がったときは感動しました。こうなるんだ! スゲェ! って。
──ゴールが見えないからこその面白さ。
鹿児島:あ、ゴールが見えてないのは僕だけだと思います。みんなは見えてたんだと思います。
順堂:『Gerato』の前ぐらいからプリプロを録ってやるようにしていて。その理由は、曲を固める時間がないから、プリプロやりつつ、細かい所は考えようというスタンスですね(笑)。僕らも、ゴールは見えてないんです(笑)。