ロックにご用命があればどこにでも行く
──今なお無邪気に、とても楽しそうにアンサンブルに興じるロケッツのライブを見ると、バンドっていいなと改めて実感しますしね。
鮎川:バンドはほんと楽しいし、バンドっちゃ最高ってことに尽きるね。一緒に音を出せるだけで有難い。
LUCY:バンドは大変ですよ、メンバーがいるから。誰かがいなくなったらもうやれなくなっちゃうし。だけどいい大人たちが時間を合わせて大勢集まって同じことをやるなんて本当に奇跡みたいなものだし、そのバンドの一体感や凄みみたいなものを一度味わったらもうやめられなくなりますよね。
──ロフトのステージでは“Play The SONHOUSE”のパートを入れる予定はあるんですか。
鮎川:いや、今回はロケッツだけでやる。“Play The SONHOUSE”をちょっとだけやるやったら、別にワンステージやりたいね。
──それなら後日、新宿ロフトで“Play The SONHOUSE”の単独ライブをぜひお願いします。
鮎川:うん、こちらこそぜひロフトでやらせてほしい。“Play The SONHOUSE”を今年ロフトでやれなかったのを悔やんどるし、いつでもスタンバイしとるから。そういえば、こないだ誰かがサンハウスの「Light My Fire」をツイッターでアップしとったんよ。
──ああ、ドアーズのカバーを。
鮎川:聴いたら、川嶋と坂東(嘉秀)と浅田(孟)なんよ。そやけ、1978年の唯一のライブ。博多のインディペンデントハウスっちう大きなダンスホールでやったライブで、その音源が凄い良かった。特に川嶋が凄い格好いい。僕は5弦ギターで弾いとってさ。サンハウスの活動末期、キース・リチャーズの影響で5弦ギター(オープンG)で弾いてたんよ。そのキースの発明を、ロケッツの初期やYMOの『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』で自分なりに活かしてね。
──単純に期間の長さだけで言えばロケッツより長く続くバンドもいますけど、その多くが長らく活動休止だったなかでロケッツは一度たりとも休止したことがなかったし、実質的にロケッツが日本最長不倒バンドだと思うんです。ここまで続いたのは一本一本のライブと真摯に向き合い続けてきたライブバンドだからこそではないかと思うのですが、いかがですか。
鮎川:毎回が勝負やし、本気やけん、次があるち思うてないからね。
LUCY:いつもこれが最後と思ってやりよるよね。
鮎川:うん。みんないろんな病気にも罹らず、健康で同じように音が出せるのは幸せなことよ。
──奈良さんはロケッツがここまで長く続いたのはなぜだと思いますか。
奈良:曲がいいからじゃないですか。曲もバンドもありそうでないし。
──LUCYさんは?
LUCY:本人がやりたいからずっと続いてるんだと思います。お父さんが止まらないから、周りはそれに魅せられて必死に着いていくだけっていう(笑)。シーナが亡くなった後、お父さんと奈良さんと川嶋ベリーの3人でしばらくバンドを続けて、お父さんがシーナの歌を頑張って唄うんですよ。だけどキーが高くて上手く唄えなかったりして、ギターを弾きながら唄う大変さもあったと思うんです。そうやってお父さんがギターに集中できてないところを見ると、私としては「いつでも準備できてるよ!」っていうか。
鮎川:なんというか…この歳になるとライブをけろっとはやれんね。でもね、こないだも博多と別府で“Play The SONHOUSE”を1時間20分くらいやって引っ込んで、今度はロケッツで1時間半くらいやってさ。
──平均年齢70歳のバンドが3時間近いライブを2日続けてやるとは…(笑)。
LUCY:あれはさすがに、1日目で心が折れました。なんて無謀な計画を立ててしまったんだろうと思って(笑)。
奈良:初日が終わった途端、30分くらいボーッとしたもんね(笑)。
鮎川:でもどっちも最高に格好いいバンドやし、一生懸命弾きたいし。2日目も「これ大丈夫やろか?」とか内心思いよったけど、いざ音楽に身を委ねると夢の中にいるみたいで全然苦にならんし、普通にやれる。この歳になってもそういう経験したことのないことを経験できるのが面白いね。新しいことをあえてやるわけではないけど、実際にやってみたら前のハードルを越えてたみたいな、それが新しい体験やったりもするし。
奈良:結局、ライブが始まると楽しくなっちゃうんです。そもそも楽しくなきゃ、3時間近いライブを2日続けてやれませんよ(笑)。
──今のロケッツを見て、天国にいるシーナさんが「しっかりやりんしゃい!」と言ってくれていそうな気もしますね。
鮎川:いつもシーナが導いてくれるね。ロケッツが始まる前、レコーディングを見学しに来たシーナが「自分が唄うレコードを聴いてみたい」ち言うたことから始まって、シーナの話したいろんなことが自分の原点にある。ロックとブルースがシーナと僕を引き合わせて、シーナが連れてってくれた景色がいっぱいあるね。その導きが今も続いとる。
LUCY:私も今もずっとシーナの存在を感じながらステージに立っています。というのも、不思議なことがけっこうあるんですよ。ライブで自分が唄いそびれたところを誰かが唄ったように感じて、あとでPAの(佐久間)功くんに「あそこのディレイ、凄かったね」と言ったら「何もかけてないよ」と言われたり。それはきっとシーナが唄ってたんだと思うんです。だからシーナ&ロケッツとしてライブをやっているときはいつもシーナの存在をひしひしと感じています。ステージは熱狂と汗とみんなのいろんな感情が入り混じった空間で、そことシーナは繋がっているんだと思います。
──今度のロフトはシーナさんの誕生日だし、間違いなくいらっしゃいますよね。年末年始はまだまだツアーが続きますが、ロックができるところならどこにでも行くというスタンスは不変ですね。
鮎川:“Have Rock Will Travel”っち言葉があるんよ。ロックにご用命があればどこでも行くし、電源とアンプさえあれば生音ですぐ調整できる。いつでもどこでもロックができること、それが僕らの何よりの自慢やね。