ふざけてワガママで情緒不安定な本来の自分に立ち返ろう
──確かに。絶対に普段はこんな言葉使いしてないだろって(笑)。
YUKARI:もちろん、真面目にしなきゃいけないのはわかるんですよ。ただ自分に立ち返ったら、私はそんな万事深刻な人じゃないなって。曲の中には怒りとか、こうでありたいとかこうなりたいとか、これはやりたくないとか、そういうことはいっぱい入れてますけど。でもそのことだけを思い詰めて生きてるわけじゃないし。
──そうだよね。真剣だけど、深刻ではない。
YUKARI:そうそう、そうなんですよ。真剣に遊んでいたいんです。リミエキはずっと変化し続けていて、初期の頃は歌詞なんか考えてないし、意味があることなんか歌ってなかった。そこから変わっていって、怒りや自分の気持ちをパッションとしても曲の中に入れて原動力にしていくようになったんです。それを本来のYUKARIらしくやればいいじゃんって。もっと好き放題やっていこうぜって気持ちにもなっているんですよ、今。
──まさにこの前のワンマンライブ、怒りや気持ちを込めた意味のある曲が、意味なんか吹き飛ばしてるようなパッションとエネルギーに満ちていた。
YUKARI:良かったぁ。嬉しいです。
──あのライブの最後のMCで、「成し遂げなくてもいい」って言ってましたよね。それは?
YUKARI:『女パンクの逆襲──フェミニスト音楽史』【※1】を読んで、カッコイイ女パンクたちが道を開いて興味深く面白かったんです。勉強にもなったし、自分の気持ちにもすごく火がついた。カッコイイ女がいっぱいいて最高! たくさんの人に届いて欲しい。だけど、音楽をやってる女性として自分も何かやらなきゃ、何かしてないとカッコ悪いって思えてきて。ちょっと焦燥感が出てきたんです。
──YUKARIちゃんは充分過ぎるほどやってるけど。でも何もしてないとしても、それを恥じることはないんだよね。
YUKARI:そうなんですよね。少なくてもうちのライブを見てる間は、いろんなことを一旦ちょっと置いておいて、ただただ楽しく過ごしたり、一緒になって怒ったり、そういう時間でもいいんじゃないかなって。
撮影:大橋祐希
──「フォーメーション」(2019年)を作った頃はどうでした?
YUKARI:「フォーメーション」の頃は、やらなきゃ! って凄く思ってたし、やれる! って思ってたし、やりたい! って思ってたし、私がやってることが絶対にどこかに繋がるから全力でやらなきゃ! って思ってました。大袈裟な言い方になるけど、全部を犠牲にしてでもやらなきゃって思ってましたね。
──ライブハウスで活動している女性ミュージシャンたちが参加している「フォーメーション」のミュージックビデオのように、いろんな女性がいるぞっていうメッセージですよね。
YUKARI:そうです。聴いてくれた人に、そういう、ジェンダーにおける意識の目覚めみたいな自分が感じている何かを伝えられたらいいな、ひとりじゃないんだみたいなものができたらいいな、それぞれが生きてる場所で感じてくれたらいいなって。勝手に使命感みたいなのもあったんですよね。ちょっとでも自分の動きを緩めると、ダメだダメだって感じにもなってたし。それを自覚したときに、私ごときが気負いすぎじゃないか? って思って。
──自分が自分に縛られてる感じがしてきたんだ。
YUKARI:そうなんですよ。勝手にこうあらねばって思いこんで。たとえば…、私は女性で、母親で、妻で、やりたいこともやってるぞ! ってことをやらなきゃいけないっていう。
──ああ、自由だぞってやってたことが、こう、義務感みたいに。
YUKARI:そうなんですよ。そうじゃなく、もっとリラックスしていいんだ、だって楽しいからやり始めたんじゃんって。本来の自分って、もっとふざけてるし、ワガママだし、すぐ怒るし、情緒不安定気味だし。そこに立ち返ろうと。
──それがこの連続シングルの3曲に繋がっていった。
YUKARI:そうです。