若いバンドが目指すライブハウスでいてほしい
──シェルターがオープンしたのは下北沢にロック系のライブハウスがまだ屋根裏くらいしかなかった頃なんですが、下北沢はこの30年で音楽の街というイメージがすっかり定着しました。下北沢でやるライブはやはり他の街とは違う独特の雰囲気があるものですか。
TAISEI:安心感っていうのかな。下北は遊ぶ所でもあり飲みに行く所でもあるし、肩の力を抜いてリハをやるくらいの気持ちでライブをやれる。そういう気持ちで臨めるのは下北ならではだと思う。渋谷でも新宿でもちょっとは構えるからね。
鈴木:ピリつく感じはありますよね。ちょっと出かけてきますみたいな。でも下北だとふらっと行ける感じがある。
TAISEI:よくライブのMCでも下北のことを「マイ・ホームタウン!」って言うんだけど、ホントにそれくらい20代の頃から下北で遊んでたから。
増子:よく飲んでたしね。いつも誰かしらライブをやってたし、どこかの打ち上げに合流したりして。
鈴木:今でも下北を歩いていれば誰かに必ず会いますしね。
増子:人の打ち上げに必ずいるのはグレ(COMMONS)だけどね(笑)。
──下北にいればかなりの確率でグレさんに遭遇しますからね(笑)。
増子:しかもかなりの確率でただ飲みしてるから(笑)。
──たとえばQueや251、ガレージなどと比べて、シェルターにはどんなイメージがありますか。
増子:シェルターは特別だよ、やっぱり。
TAISEI:ステージの高さもキャパも絶妙なんだよね。ハコの大きさが絶妙。
増子:あと、ニシ(3代目店長の西村仁志)がここで築いたものが大きいよね。シェルターは最先端の音楽が生まれる場所だったし、北海道から出てきたbloodthirsty butchersやeastern youthがここを活動の基盤として自分たちでイベントを組んだりしてたのが誇らしかった。シェルターでここまでできるんだと思ったし、他で出れなくてもホントに格好いいバンドがちゃんと出れるハコだよね。それはニシの時代から始まってると思う。
鈴木:シェルターはやっぱり格好いいし、硬派ですよね。下北のハコの中でも一番硬派なイメージがある。
──あと、自分が客として通っていた頃から感じていたのは、どれだけ爆音でもちゃんとクリアに聴こえる音響システムの素晴らしさなんですよね。
TAISEI:音はいいよね。やってて気持ちいいんだよ。
増子:まあ、ステージ上は死ぬほど熱いけどね(笑)。天井から水蒸気がポタポタ落ちてくるから。
TAISEI:でもそこを超えられるんだよね。自分の感情がその状況を超えられるし、むちゃくちゃにできるっていうか。
──今後のシェルターに期待したいことがあれば、ぜひお願いします。
増子:このご時世だから、とにかく存続してほしいよ。あとは古いものにこだわらずにいてほしい。それがシェルターの良さだから。
鈴木:今度の30周年のスケジュールを見ても思うけど、もっと若いバンドをどんどん出してほしいですよね。
増子:出るバンドの高年齢化が進んで、今や養老院みたいになってるハコも多いじゃない? 30年前から出る面子が変わらないみたいなさ。シェルターにはそうならないでほしいね。ブッキングする側の感性も衰えてくるから、ライヴハウスの店長は年齢制限を設けたほうがいいよ。
TAISEI:シェルターといえば、若くてちょっと嫉妬するくらいの格好いいバンドが出てるイメージがあったよね。今でも20代のロックンロールバンドで「こいつら格好良すぎるだろ!」みたいな奴らはいるだろうし、そんなバンドがどんどん出れるハコであってほしい。
増子:こないだSAとNEATBEATSが若手のロックンロールバンドと回ってなかった?
TAISEI:ああ、JOHNNY PANDORAね。
増子:彼らはめちゃくちゃ格好いいでしょ?
TAISEI:うん。見た目はキャロルっぽいんだけど、音楽的にはヒルビリー・バップスっぽいところもあるんだよ。
増子:ちょっとスイートな感じね。しかもツイストがバカうまだから。
──へえ。今もそんなバンドがいるんですね。
TAISEI:いるいる。
増子:まあ、局地的にそこしかいないけどね(笑)。でもすごく格好いい。パンクもそうだけど、たとえばCYbER dYNEの細い服が似合うような若い世代のバンドが目指すライブハウスになってほしいな、シェルターには。あそこに出たいと常に思われるようなさ。
TAISEI:若い時しかできない細身のファッションってあるよね。服を見せるためだけにライブをやる奴らっているじゃん。歌や演奏は二の次でさ。若い奴らはそれで充分なんだよ。
増子:俺らの歳で細身の格好してたらただの病気だからね。具合悪そうなおじさんが出てきたと思われるだけだから(笑)。
鈴木:若い世代のことで言うと、僕らは2年前にシェルターでbachoっていう若手の格好いいバンドとブッキングしてもらったんですけど(2019年10月16日、『SHELTER presents.「地下室ノ正義」』)、それまで接触のないバンドとやれるのはすごく刺激になるんですよ。だから若いバンドと交流を図れるブッキングはぜひ続けてほしいですね。
増子:そういう対決シリーズはいいよな。何度も言うけど、シェルターっていうのは特別だから。その特別感をずっと保ち続けてほしいよね。