君も今日からJAGATARAだ
──アケミさんの命日である1月27日のワンマンライブの翌日にLOFT9でトークライブ「Jagatara2020ナンのこっちゃい生サロン」を開催しますが、これはどういうものなんでしょう?
OTO:JAGATARAのライブを観たことがない人がバトンを受け取ってくれる所を見たいというのもあるけど、それは人に望むだけでなく、自分も自分なりにバトンを受け取っていきたいなと思っていて、それで気がついたら今こんな山奥に暮らしているんだけど(笑)。今、僕の中で生活費のために音楽をするという考えは全くなくて、自分が本当に必要な音楽をするために、日々を暮らしていきたい。それは、たぶん南もそうで、本当に踊りが必要な所に行って、踊りを届けようとしていると思う。アケミはもともと音楽なんかどうだっていいと言ってたんだけど、それがこういう事なんだとようやく分かったというか、多分アケミが言わんとしていたのは、世の中にはそれぞれの人生で果たしていく役割を全うしている人達がたくさんいて、そういう人達とのつながりを作らないと明るい人間関係はできないんじゃないかということ。香港の状況とか見ると、もう政治も国も人間に対して何もできないことが分かる。残るのは一人一人の意識しかない。その意識のネットワークを作るのが一番大事で、Jagatara2020が集まることの核はそこだと思っている。当日、LOFT9にどんな人が来るのか分からないけど、僕はそこに来た人の話をできるだけ聞きたいし、つながることがしたい。そういう声を聞く機会ってこの30年間ほとんどなかったんです。JAGATARAが『南蛮渡来』を出した頃、いろんな人がボランティアでレコードの納品を手伝いに来てくれて、その中には高校生のケラリーノ・サンドロヴィッチもいたんだけど、アケミは手伝いに来てくれた人達に「よーし、今日からお前もJAGATARAだ」って言ってたんです。その時の僕はなんとなく上から目線な言い方だなと思っていたんだけど、アケミの言った真意は、同じ場所でつながって動く人達との意識共同体という意味で「君も今日からJAGATARAだ」って言ったんだと最近わかった。今まさしくそういう意識が必要で、アムラーじゃないけど全国のジャガタラー達と出会いたい。いろんな現場にジャガタラーがいると思うし、そういう人達とこれから先どんどん出会っていきたい。
南:だから今回はバンドを再結成しただけじゃなくて、もっと範囲が大きい。バンドはその一部にすぎないから。
──ジャガタラーは全国にたくさんいますからね。
南:私もアケミのバトンを受け取りたいとずっと思ってた。それは自分のものにしたいという意味じゃなくて、受け取らなきゃいけないし、人まかせにしちゃだめなんだと。
OTO:自己告白すると、いずれアケミが生まれ変わって誰かがバトンを受け取るんだろうなとは想像していたんだけど、僕の場合、自分とアケミとのギャップがよくわかるから、どうやったらバトンを受け取るレベルまでいけるかと思っていた。もっと言えば、自分はまだバトンを受け取る資格がないんじゃないかと。でも自分はやっぱり一緒にバンドをやってたわけだし、いつまでも人まかせにしないで、時間がかかってでも、せめて歌の真意は理解できるようになりたいと。
南:それ、私も同じこと思ってた。私もバトン受け取れるようになりたい。
OTO:以前と比べれば、アケミの歌から感じることはたくさんあるし、自分なりに理解できることも増えている。だから今JAGATARAの曲を演奏するのは、30年前よりも断然面白いんです。それは自分で獲得したことや、空のアケミから教えてもらったことがたくさんあるから。なんだ、俺30年前にせめて今ぐらい音楽を理解できてたらなあと思うんだけど(笑)。まあ時間はかかったけど、今回の人生でJAGATARAの音楽を楽しく演奏できるのはうれしいことだし、その気持ちをお客さんとシェアしたいなと思う。
ナベ+江戸アケミ(撮影:松原研二)
南:アケミやナベちゃん、篠ちゃんがいなくなって、もうJAGATARAがなくなった時に、ああ、私が世の中で一番やりたいことはもう二度とできないんだという自覚をしたんです。これから私が出会うことは二番からのことなんだなと。それはすごいショックだった。それ以来、私は二番からのことを精一杯やろうと生きてきた。でも今回の30回忌ライブで、形は変わったけど、私の一番のJAGATARAに戻れることは本当にすごいことなんです。もうめっちゃ楽しみ!