収録曲にはどれも英語のタイトルが付いている
──「今夜は私も眠れない」はビートルズからの影響が窺えるメロディアスなナンバーですね。
西牧:自分なりにビートルズっぽい曲をやりたかったんです。でもギター・サウンドはニルヴァーナみたいにしたかった。
熊田:最初はビートルズとニルヴァーナがケンカしてるみたいなイメージだったけど(笑)。
西牧:デモの段階では全部適当な英語で唄ってたんです。あとで英語と同じ発音に聞こえる日本語をはめていきました。
──「犬になりたい」も性急なビートと畳み掛けるようなサビに惹き込まれる、いかにもライブ映えしそうな一曲ですね。
西牧:「犬になりたい」もそうだけど、イントロからAメロ、Bメロとメチャクチャやってるのにサビで急にキャッチーになる曲がこれまでは多くて、それはたしかに僕ららしさなのかもしれない。
──「マイランドスケープ」は本作の中では珍しいミッドテンポの曲で、アコギが絶妙な隠し味となった繊細なアレンジは〈まだ大人にはなれないな〉と唄いつつもちょっと大人っぽい印象を受けますね。
西牧:僕が仕事を辞めるか辞めないかで悩んでいた時期の曲なんです。激しいタイプの曲もやってて楽しいんだけど、最近、自分としてはこういうミッドの曲のほうが好きなのかもしれないなと思って。
──「マイランドスケープ」と「少年と海」でアコギを弾いているのはどちらなんですか。
西牧:僕です。
──デモもアコギで作ることが多いんですか。
西牧:ちゃんとしたデモ的なものはないんです。当日スタジオに入って、「よし、曲を作ろう。Gで」みたいな感じなので。データを事前に送ったりもしますけど、メンバーにもインパクトを与えたいのでその場で聴かせてやり取りをするほうが面白い。みんなはいい迷惑だろうけど(笑)。
矢満田:でも実際、その場でみんなで一斉に作った曲のほうが残ってるような気がします。
勝田:曲作りは彼だけど、みんなけっこう自由にやってるんですよ。僕も最初は好きなように叩かせてもらって、それからみんなにああしてこうしてと言われて整えていくような感じですね。
西牧:ギターやベースと違ってドラムの詳しいことはよく分からないので、一度は任せるんです。
──ライブ同様、ドラムの音はアレンジを詰める段階から異常なデカさなんでしょうね。
熊田:ドラムがデカくないと、前の3人も音をデカくできませんからね。
西牧:ドラムがあってこそのCASANOVA FISHなんですよ(笑)。
──「夢で逢えたら」と「少年と海」は本作の支柱と言うべき名曲で、この2曲はとりわけ“FLASHBACK”感が強いように思えますね。
西牧:実は今回の収録曲にはどれも英語のタイトルが付いていて、「夢で逢えたら」は「FLASHBACK IN MY DREAM」なんです。タイトル曲みたいなものですね。
──ああ、やっぱり。音はけたたましいけど、曲調は文字通りドリーミーな雰囲気がありますしね。それぞれに英語のタイトルがあるということは、「犬になりたい」は「I WANNA BE YOUR DOG」ですか?
西牧:そうです。「今夜は私も眠れない」は「FROM YOU TO ME」なんですよ。
──「FROM ME TO YOU」ではなく(笑)。「深夜徘徊少年少女」は?
西牧:「BOYS AND GIRLS ON THE RUN」。悲しみから逃げてるんですね。「少年と海」は「THE BOY AND THE SEA」。ヘミングウェイの『老人と海』の原題が「THE OLD MAN AND THE SEA」だから、最初は「THE YOUNG MAN AND THE SEA」にしようと思ったんですけど。
──なぜ英題を付けようと思ったんですか。
西牧:浜田省吾さんに倣って(笑)。浜田省吾さんのアルバムの裏ジャケは曲タイトルの表記が英語なんです。尾崎豊さんのアルバムでもそういう表記があって、それに影響を受けた僕が今回はやりたいようにやらせてもらいました。
──「夢で逢えたら」は別れた恋人の幸せを願う曲ですが、やはり恋が終わった時期のほうが曲は生まれやすいものですか。
西牧:僕の場合、だいたいは恋が終わった後の曲ですね。幸せな時に曲ができることはほぼないです。
──恋に落ちた直後の昂揚感で曲ができたりは?
西牧:書いてみたいとは思いますけど、どうなるんでしょうね? 浜田省吾さんにもそういう曲はあるし、その手の曲に抵抗感は全くないし、ただ僕自身が不幸せな人間ってだけなんだと思いますけど。