変拍子や細かな「キメ」も駆使し、関西弁とカタコトの英語を速射砲のようにまくしたてる異形のハードコア・サウンドに辿り着いた「おとぼけビ〜バ〜」が、ルーフトップに再び! 『いてこまヒッツ』の楽曲については7月に掲載された濃厚なインタビュー(こちらをクリック)をご覧いただき、今回は彼女たちの音と歌詞へのこだわりをフィーチャー。「お笑い」や「海外」、「ライブ」などのトピックを交えてざっくばらんに話してもらった。(取材・文:森樹 写真:Jumpei Yamada)
今みたいに曲で感情を表現するバンドになると思っていなかった
──おとぼけビ〜バ〜は今年で結成10年目ですが、現在のようなワールドワイドな活動はイメージしていましたか?
あっこりんりん(以下、あっこ):こうなるとは思っていなかったですね。当初の目標は、大学でオリジナルをやるバンドを組んで、タワーレコードに音源を置いてもらうことと、京都の人に知ってもらうことだったので。
よよよしえ(以下、よしえ):大学のサークル(立命館大学のサークル「ロックコミューン」)に入ってミーハー心で「くるりを生で見たい」と思っていたら、サークルに入った次の日にくるりが取材で部室に来てたんでこれで目標達成や!って(笑)。そこから先のことはあんまり考えてなかったです。
──ひろさんは2013年に、かほさんは2018年に加入しましたが、バンドのイメージをどのように捉えていましたか?
ひろちゃん(以下、ひろ):もともと私は大阪の「地下一階」というライブハウスで働いていたのですが、そこではじめて観たときからカッコイイなと。それまでガールズバンドでカッコイイと思えるバンドはそんなにいなかったし、前任のベーシストもすごく上手い印象があって。
あっこ:それはありがたい感想やわ。
かほキッス(以下、かほ):私はサークルの後輩なんですけど、サークル内で唯一好きなバンドだったし、大学外でやるライブにも行きたいと思える存在でした。あと、よしえさんのギターの位置が高くてカッコイイなって(笑)。
あっこ:位置が高いのはなんでやろね?
よしえ:あの位置にないと弾けないから、という真実はあるんですけど(笑)。最近は、「ギターは高い位置にあった方が踊れるでしょ?」という理由にしています。これはストロークスのアルバート・ハモンドJr.が言ってたのをパクってます。
──(笑)。ロックコミューンと言えばくるりやLimited Express(has gone?)などを輩出したことで知られますが、当時のサークル内ではどんな音楽が流行っていたんですか?
よしえ:当時はハードコアとかエモとかが流行っていて、そういうバンドがすごく多かった。あと、サークル内の女の子の割合も少なくて。だから、私たちみたいなバンドは浮いてました。
あっこ:最初は先輩ウケを気にして「スーパーカーみたいなバンドをやりたい」って言ってました。結果的にこんなバンドになって(笑)。
──結成当初の音楽性は今と変わらなかったんですか?
あっこ:結成当初は楽器の演奏がまったくできなかったんで、とりあえずバラードを3曲くらい作ったかな? でも、「これはちゃうわ、ほかの人がやった方がいい」と。
よしえ:何をしたいというよりは何をするにも手探りでしたね。
あっこ:最初はもっと普通に歌いたいな、バンドを組みたいなって思っていただけで、今みたいに曲で感情を表現しないとやってられない! みたいな人間になるとは思ってなかった(笑)。感情を表現するっていうとポエミーやけど。
よしえ:日々のフラストレーションとかストレスを曲にぶつけるとかね。
世界には、私たちを認めてくれる場所があるんやって思いました
──どこかのタイミングで、「これでいける!」って感覚はありますか?
あっこ:『目撃!ラブミ~・サイン』(2013/十代暴動社)をリリースして、少年ナイフと対バンしたときがおとぼけにとってひとつの区切りだったんです。よしえが東京で就職して、そのあと前のベースが抜けて、活動が止まったんですよ。そのときに『あきまへんか』(2015/Damnably)の制作がはじまって、そこが私のはじまりですね。
──なるほど。
あっこ:私が作るとどうしてもこういう音楽になるんやな、これが私なんやなって思ってやっていながら、まだまだ試行錯誤してて。『あきまへんか』でようやく定まったというか。
──メンバーの脱退や就職があっても、あっこさんがバンドを続けていこうと思った理由は何ですか?
あっこ:よしえがいない一年間、酒ばっか飲んでたんですけど(笑)。人のライブ見にいっても、ステージに立ちたい! わたしらの方がおもろい! って思うばっかりで、こんなにライブが生きがいだったんだと気づきました。酒のせいで記憶が定かではないですが、真剣に悩んでいた時期でしたね。
ひろ:そのタイミングでメンバーに加入したんですけど、メールで入りたいと(あっこに)送ってから実際に加入するまで、三ヶ月くらいかかりましたね。
あっこ:連絡ねぇなと思っていたでしょ(笑)。その頃は病んでてまったく連絡を返してなくて、いろんな人に迷惑をかけました。
ひろ:(笑)。そこからスタジオに月一回入る時期が一年くらい続いて。
よしえ:それで、私が戻ってきたくらいに海外リリースやツアーの話が来たんですよ。全文英語の怪しいメールが届いて(笑)。
あっこ:一回目(2016年)のイギリスツアーは自腹やったからね。当時は新しい世界に飛び込むのが少し怖くて、お金もないしやめとこかーみたいなモードで。だけど、音源を出してくれていた長州(ちから)さん(十代暴動社)が、「絶対に行った方が良い」と助言をくれて、行くことにしたんです。
よしえ:あそこで行って良かった。
──海外での評価って、日本と違いましたか?
あっこ:そもそも、それまで評価されてると思ったことがあんまりなかったので。
よしえ:うん。
あっこ:『あきまへんか』は良いものできたと思っていましたけど、褒めてくれるのは周囲だけで。それがイギリスではどのライブもソールドだったし、お客さんのリアクションもダイレクトにあって、こういう私たちを認めてくれる場所があるんやなって思いました。
よしえ:単純に音を聴いて踊りだしたり、サークルモッシュしてくれたり、そういうリアクションがあって。
──それからパフォーマンスが変わったりもしたのでしょうか?
あっこ:MCがカタコトの英語に変わったくらいですかね。あとは、あの曲のあの「間」が良かったから、それは続けようとか変えようとか。一体感が出るような感じは意識してるかもしれないです。