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INTERVIEW

トップインタビュー頭脳警察 - 結成50周年を見据えた"中継地点"に立つ時代の叛逆児

結成50周年を見据えた“中継地点”に立つ時代の叛逆児

2018.09.04

1stがプレス前に発売禁止となった裏事情

──TOSHIさんは近田さんと共演してみていかがでしたか。

TOSHI:うるせぇピアノだなと思った(笑)。昔からちょこちょこ楽屋ですれ違ったりはしたけど、一緒に音を出すのはこれが初めてでね。

PANTA:TOSHIは近田とセッションをしてみたら面白いと思うよ。ホッピー神山もそうだけど、近田もかなりぶっ飛んだところがあるからTOSHIと合うんじゃないかな。

TOSHI:その前に俺は、赤レンガ倉庫のライブに2ndを完全再現するコンセプトがあったのをいま話を聞きながら理解したよ(笑)。

──いまこの場でですか(笑)。

PANTA:完全再現と銘打つなら本当は曲順通りにやらなくちゃいけなかったんだけど、ライブの流れも考えて、あえて順番を入れ替えたんだよね。実際に再現してみて面白かったよ。のちのPANTA & HAL時代にメジャーセブン禁止令を出していたくせに、頭脳警察の頃からすでに「ふりかえってみたら」みたいな曲をやっていたりとかさ(笑)。

──初期の頭脳警察にはポリティカルでラジカルなパブリック・イメージがありますけど、その枠に収まらない音楽性の幅広さがあったことを証明していますよね。

PANTA:そうだね。3rd(1972年10月発表)の頃は「少年は南へ」みたいにフォーキーな感じになるしさ。

──しかしこれだけクオリティの高い楽曲が揃った2ndがなぜ発売禁止になったのか、理解に苦しみますね。今回のCDの歌詞カードで伏せ字になっている言葉もそれほど過激とは思えませんし。TOSHIさんは相次ぐ発売禁止の事態を当時はどう感じていたんですか。

TOSHI:うーん……どうだったんだろう。決して楽しくはなかっただろうね。「あれ、またかよ」って感じだったかな。

PANTA:1stを出そうという時に、世の中はあさま山荘事件に湧いていて発売禁止。それで慌てて過激な曲を外して2ndをスタジオ録音したんだけど、その発売と同じタイミングでテルアビブ空港乱射事件が起きてしまった。アルバムの1曲目が「銃をとれ!」だからね、そりゃ発売禁止にもなるよ(笑)。ただでさえ公安からマークされてたんだから。

81UUGmNwImL._SL1500_.jpg2018_ZK_2CD_h1_350.jpg──それだけ頭脳警察の存在と活動が時代と呼応していたということですよね。

PANTA:そうかもね。1stの時はまず頭脳警察という名前自体がいけないって言われたんだから。2ndの時は“マリファナ”って言葉が引っかかってたし。

TOSHI:1stの時はPANTAも最初から「こんなの絶対世に出ないよな」って言ってたよね。

PANTA:そうそう、言ってた。

TOSHI:だから1stが発禁になったのは自分たちでも当たり前だよなと思ったんだけど、2ndは「またかよ」って感じだったね。

PANTA:政治的で過激なバンドだからレコード会社も手をこまねいちゃうわけだよ。そのなかでビクターのMCAという洋楽のレーベルからデビューの話をもらったわけ。だけど当時は洋楽の部署が邦楽を制作するなんてあり得ない時代で、結局、MCAでは発売禁止となった1st、2ndをリリースしたのみで、その後、ビクターがマイナー・レーベルとして力を入れ始めたGAM〈ガム〉レーベルにディレクターの岩田廣之と一緒に移った。

──調べてみたら、麻丘めぐみのデビュー・アルバム『さわやか』がGAM-1001、頭脳警察の3rdがGAM-1002でした。

PANTA:そうだよね。1stと2ndまではMCAだったはずなんだ。だからなぜ発売禁止が相次いだかと言うと、邦楽の制作部からMCAにちょっかいが入ったんじゃないかという気もするんだよ。「なんで洋楽の連中が邦楽を作ってるんだよ!?」みたいな感じでさ。俺は「あんな過激な歌詞は絶対に放送禁止になるから、出すのはやめたほうがいいですよ」とMCAの鳥尾部長に一応言ったんだけど、「大船に乗った気でいてくれ」なんて言うものだから、ならやりますよと。でも蓋を開けたら1stはプレス前に発売禁止。そんなの異例中の異例だから、おそらく社内でよっぽどのチクリがあったんじゃないかな。プレスしてから発売禁止になるなら世間的な圧力みたいなことも考えられるけどさ。

──2枚立て続けに発禁になるなんて、今で言う炎上商法と捉えられかねない事態ですよね。当時の頭脳警察にそんな意識はもちろんなかったでしょうけど。

PANTA:結果的に炎上商法、ネガティブ・キャンペーンになっちゃった。2ndが発売禁止になった時は朝日新聞が大々的に取り上げてくれて、寺山修司とか各界の著名人がいろんなコメントを寄せてくれたんだから大宣伝だよね(笑)。

──結果的にネガティブ・キャンペーンになってしまったことで、バンドに箔が付くことにもなったのでは?

PANTA:箔を付ける余裕はなかったね。だってまだ1枚も作品が世に出てないわけだから。ちなみに言うと、2ndは個別回収せよというお達しだったんだけど、そんなのできるわけないでしょう。だから実際に何枚売れたのかはわからない。発売禁止になって話題を呼んで、けっこう追加プレスしてたと思うんだけどね(笑)。

 

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BRAIN POLICE RELAY POINT 2018

2018年9月19日(水)発売
TECH-50526〜27(2CD)
定価¥4,630+税

【Disc-1】赤い煉瓦の上から
YOKOHAMA RED BRICK WARHOUSE NUMBER1 3F HALL LIVE 2018.05.19
01. 銃をとれ!〜マラブンタ・バレー
02. 軍靴の響き
03. 暗闇の人生
04. ふりかえってみたら
05. お前と別れたい
06. それでも私は
07. いとこの結婚式
08. だからオレは笑ってる(未発表曲)
09. さようなら世界夫人よ
10. コミック雑誌なんか要らない
《Personnel》
頭脳警察:PANTA(Vocal, Guitar)、TOSHI(Percussion)
TAKUMI KIKUCHI(Guitar)、JIGEN(Bass)、CHERRY(Drums):M-1〜5、M-10
GUEST:HARUO CHIKADA(Keyboard):M-9、M-10

【Disc-2】焼けた煉瓦の下から
Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASURE LIVE 2018.01.13
01. 朗読:アメリカよ〜時代はサーカスの象にのって
02. 風の旅団
03. 銃をとれ!
04. 少年は南へ
05. 歴史から飛びだせ
06. サラブレッド
07.悪たれ小僧〜挿入曲:NOT FADE AWAY〜
08. さようなら世界夫人よ
09. 万物流転(Panta Rhei)
《Personnel》
頭脳警察:PANTA(Vocal, Guitar)、TOSHI(Percussion)
騒音寺:Nabe(Backing Vocal, Harmonika, Guitar)、Tamu(Guitar)、こーへい(Bass)、あやた(Drums)

LIVE INFOライブ情報

ZK_bousou_Vol1.jpg結成50周年へ向けて頭脳警察がLOFTでトークライブ・シリーズを始動!
第1回は大槻ケンヂをゲストに迎えた最新ライブ盤リリース・パーティー!

Road to 50th Anniversary
ZK Monthly Talk Session
暴走対談 LOFT編 vol.1
『BRAIN POLICE RELAY POINT 2018』リリース・パーティー(トーク&ライブ)

【出演】頭脳警察(PANTA / TOSHI)
【ゲスト】大槻ケンヂ
【司会】椎名宗之(Rooftop編集長)
【日程】2018年9月29日(土)
【時間】OPEN 18:30 / START 19:00
【料金】前売4,000円 / 当日4,500円(ともに税込・要1オーダー500円以上)
チケットぴあ(Pコード:128-179)、ローソンチケット(Lコード:72074)、イープラスでチケット発売中
【会場&問い合わせ】LOFT 9 Shibuya 03-5784-1239

OTHER LIVE
*9月2日(日)【頭脳警察】『夏の魔物2018 in TOKYO』(お台場野外特設会場J地区)
*9月16日(日)【PANTA】『PANTAX'S WORLD 2018』(福岡キャバーンビート)
*9月17日(日・祝)【PANTA & ROLLY】『高塔山ロックフェス2018』(高塔山野外音楽堂)
*9月29日(土)【頭脳警察】『「BRAIN POLICE RELAY POINT 2018」発売記念トーク&ライブ』(LOFT9 Shibuya)
*11月1日(木)【PANTA & HAL. EXTENDED】『「マラッカ」&「1980X」Complete』(ビルボード大阪)
*11月3日(土)【PANTA & HAL. EXTENDED】『「マラッカ」&「1980X」Complete』(ビルボード東京)
*12月24日(土)【PANTA】『UNTI X'mas』(渋谷La.mama)

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