次なる新作のタイトルは『加齢なるギャツビー』!?
──いい塩梅に肩の力が抜けた今の活動状況は、キャリアのなせるわざなのでしょうか。
PANTA:加齢だね(笑)。肩だけじゃなく、全身から力が抜けてる(笑)。
TOSHI:そもそも無理が利かない(笑)。
PANTA:無理を“しない”んじゃなくて、“利かない”(笑)。
──50周年の節目にお2人とも“69”歳になるなんて出来すぎた話ですけど、そもそも50周年を迎えられるバンドなんてそうはいませんよね。
PANTA:でもまだストーンズがいるからね(現時点で結成56周年)。せっかく50周年を迎えるんだから、ミックやキースにお祝いコメントくらいくれよと思ってるんだけど。あと、関わりのあったスティングやイギー・ポップとかにもさ。そういうのもちょっと考えてる。さっきも言ったけど、50周年ともなると記念のイベントをやるのも一苦労だね。海外の例を見ると、ボブ・ディランがデビュー30周年を迎えた時にジョージ・ハリスンやトム・ペティ、スティーヴィー・ワンダーとか大勢のゲストを呼んでライブをやってたけど、ああいうお祭りみたいな感じは頭脳警察らしくないと思うんだよ。それならいっそ誰も呼ばずに、シンプルにライブをやるほうがいいんじゃないかと思うしさ。
TOSHI:渋谷のガード下の小さな焼鳥屋で、10人くらいを相手にやればいいんじゃないの?
PANTA:それでもいいけど、焼鳥屋かよ(笑)。
──40周年の時には『俺たちに明日はない』(2009年10月発表)という会心作を発表したことですし、50周年の節目にもぜひ新作を聴いてみたいものですが。
PANTA:新作? なんにも考えてないね。タイトルを付けるなら『加齢なるギャツビー』かな(笑)。“華麗”じゃなく“加齢”。まぁそれは冗談として、新しい作品を作りたい気持ちは常にあるよ。
TOSHI:じっくりと時間をかけたレコーディングをやってみたいね。半年とか1年かけてさ。
PANTA:去年、『約束の地、メンフィス 〜テイク・ミー・トゥー・ザ・リバー〜』というドキュメンタリー映画を観たんだけど、世代も人種も超えたミュージシャンたちが一軒家でセッションしてたんだよね。ああいうのは憧れるな。
──TOSHIさんは頭脳警察としてどんな新作を作りたいと考えていますか。
TOSHI:なんて言うか、あまりまとまりのない、デタラメなアルバムを作りたいね。漠然としてるけど、はっちゃけたようなものができたら面白いのかなと思う。
PANTA:TOSHIは否定するんだけど、俺は昔からTOSHIにキース・ムーンの姿を重ねて見てるんだよ。「Happy Jack」で連打するあの感じ、機関銃のようなドラムって言うかさ。すごく似てると思うんだ。だから今、頭のなかでフーが鳴ってるんだよ。「The Kids Are Alright」とかね。そういう感じのアルバムを作るのもいいかなと思ってる。
──たとえば60年代から活動していたバンドの多くはリズム&ブルースやマージー・ビートの奪胎換骨みたいな音楽をやっていたし、欧米の音楽に頼らずに日本語で唄うオリジナルのロックを突き詰めようとしたバンドは結局のところ頭脳警察だけだったと思うんですよね。
PANTA:良くも悪くもその自負はあるよ。多くの日本のバンドが歌謡曲という土壌の中でロックをやっていたけど、俺たちはやっぱり歌謡曲には行けないんだよ。もちろん歌謡曲を否定する気はさらさらないけどね。ただ俺たちはそういう世代じゃないし、昔から歌謡曲を真っ向から否定してきたからさ。歌謡曲ではない日本のロックをやるにはどうすればいいのかが頭脳警察のテーマだったから。
──Disc-2の《焼けた煉瓦の下から》の終盤で「相棒の石塚俊明です」「相棒のPANTAです」と紹介し合う微笑ましいシーンがありますが、なぜここまで長くバンドを一緒にやってこれたのだと思いますか。
TOSHI:不思議なもんだよね。お互い趣味が違うから長く付き合えるんじゃない?
PANTA:それもあるね。あと、お互い干渉しないからじゃないかな。一時期はケンカもしたけどね。『仮面劇のヒーローを告訴しろ』(1973年7月発表)にTOSHIは参加してないから。ある時、TOSHIに「リズムをもう少し正確に叩けよ」と言ったら「俺は機械じゃねぇよ!」ってケンカになって、TOSHIは一度脱退したんだよ。最後の『悪たれ小僧』で復帰してくれたけどね。もっと遡ると、最初は5人いたメンバーが俺とTOSHIだけになって、そこでメンバーを探せば良かったんだよ。ボーカルとドラムだけなんだから。でも考えてみれば、大好きだったT・レックスも同じ編成だなと思ってさ、それでTOSHIに「俺がギターをやるからTOSHIはボンゴをやれよ、それで成立するじゃん」って言ったんだよね。
──ここから来年の50周年に向けて、忙しさがさらに加速していきそうですね。
TOSHI:あまり忙しくさせないように、ひとつよろしくお願いします(笑)。
PANTA:力は抜けていく一方だから、体調の管理をちゃんとしないとね。11月には“PANTA & HAL. EXTENDED”名義で『マラッカ』と『1980X』(1980年3月発表)のコンプリート・ライブが控えてるんだけど、そういうのも今やっておかないといつできるかわからないからやっておきたいんだ。あと、50周年のタイミングで1990年に再結成したメンバーでまたライブをやるとか、あるいは初期のメンバーでライブをやるとか、そんなことも打ち出せていけたらいいなと思う。50周年のピークがどこになるのかわからないけど、“RELAY POINT”はまだまだ続くってことだね。一里塚、二里塚、三里塚……それじゃ『幻野祭』になっちゃうか(笑)。