東日本大震災を契機に生まれた「遥か繋がる未来」
──「十代の衝動」で難局を乗り切って2000年代に突入したビーツですが、ターニング・ポイントとなった5曲目の曲はどれになるでしょうか。
OKI:直近になりますけど「遥か繋がる未来」(2013年4月)ですね。あの曲、あのアルバムが生まれたことはビーツにとってすごく大きかった。発表から5年経ったいまでも非常に重要な位置を占める作品ですね。1990年代の終わりから2000年代に入って最初の10年くらいというのは日本全体の世の中の不景気も尋常じゃなかったし、そういう世相とも相まって、ビーツ的にも独立事務所の「NEOVISION」の体制を立ち上げたり、ずっと波乱万丈のなかをバタバタしながらもなんとか乗り切ったような感じで。映画『クローズZERO』シリーズでそれなりに注目を集めた時期もあったけど、まぁ全体的に見ればまさに怒涛のような10年という感じでしたね。
──第2期ビクター時代の『ETERNAL ROCK』(2005年3月)辺りから若いオーディエンスが増えて、息を吹き返すようにバンドの勢いが増してきた印象があるのですが。
OKI:そうですね。だから本当は「拳を握って立つ男」に代表されるあの時期の曲を「遥か繋がる未来」の前のワンクッションとして挙げたいところなんだけど、それだと6曲になっちゃいますからね(笑)。「ETERNAL ROCK'N'ROLL」や「男として人として」とか他にもその時代の大切な曲はもちろんたくさんあるんだけど、それもその後の震災以降のことを思えばやはり全体を俯瞰で見れば過渡期だなと思うんですよね。そのなかでビーツは2002年に山根が加入して以降、まずツアーをしっかりやれる状況をキープしながら、リリースに関してもキティ/ユニバーサル時代の後、まぁなんとか2004年の結成20周年の『REBEL SONGS』をもう一度ビクターから出せたことをきっかけにして、その後の『ETERNAL ROCK』からの『凛として風の如く』(2007年10月)、『さすらいの歌』(2009年4月)というアルバム3作品につなげていったという感じでしたね。
──「遥か繋がる未来」を生み出さざるを得なかった東日本大震災という未曾有の大災害がビーツにとっても、日本にとっても大きすぎるターニング・ポイントだったように思いますね。
OKI:そうですね。震災ですべてが大きく変わったと思うし、世の中の価値観や我々を含めた日本人の人生観にとてつもない影響を及ぼしたと思いますね。何のために音楽は存在しているのかということを突き詰めて考えたし、その結果、誰かを元気づけたり、誰かの喜びや力になれる音楽を届けるんだという根幹的なところに行き着いた。それは俺たちだけではなく、クリエイティヴなことに携わる人たちはみな自分たちの足元を見つめ直す機会になっただろうし、一般の人たちだってそういう部分はあったと思うし。それぞれの生きる場所、それぞれの立ち位置というところで。ひたすら自分たちのためだけに必死に生きた若き頃を経て、年齢的にもキャリア的にも自分たちの音楽を通してもっと大切なメッセージを送れることがあるんじゃないかという思いから生まれたのが「遥か繋がる未来」ということになりますね。
──そして『遥か繋がる未来』から続く『NEVER STOP ROLLING』(2014年4月)、『PROMISED PLACE』(2016年4月)の三部作がいまのビーツにとってとても重要な意義を持っていますよね。
OKI:すごく大きいですね。『遥か繋がる未来』からの三部作も実質4年間で3枚つくっていて、ビーツの歴史を振り返ってみるとそういう、三部作になるケースが多いみたいですね。自分のなかでひとつ大きな柱ができれば、そこからスイッチが入って連なる作品をつくっていることが多いんだなってことを今回のベスト・アルバムを監修するなかで改めて感じましたね。創作モードとしては三部作周期でひとつの節目になっているというか。結果的にですけどね。今回のベスト・アルバムの選曲にあたっては、いちばん最近の三部作の曲をもっと世に知らしめたい気持ちもあったので、特に「終わらない夏を生きて」を入れられたことと、最後を「歌うたいのクロニクル」で締められたのは個人的にも嬉しかったですね。