詩に関して
——お互いに数えきれないほどの曲数の作詞をされてきたと思いますが、大変だったり苦しいなって感じた作詞の曲は何ですか?
有紀:Riceの場合は、曲作りには無理に時間やお金も掛けずに出てきたものを出てきたタイミングでストレス無く形にしようっていう感じです。
——期限を決めるのではなく、曲が生まれたからリリースする、という感じですか?
有紀:そうそう! 「録音するからには1回くらいスタジオに入って、細かいところを整えようか」とか、そんなのばっかりなので。創作に関する生みの苦しみとは縁遠いスタンスです。急いだこともないし。
——どのくらいの頻度で作っているんですか?
有紀:どうなんですかね? ここ1年くらいはリリースしてないなあ。
——詩を書き留めておいたりとかしますか?
有紀:ないですよ。3ヶ月後にアルバムを出そうかってなったら、そこから10曲書くとか、そんな感じばっかりなんで。
——景夕さんはどうですか?
景夕:俺は常に生みの苦しみにさいなまれてますね(笑)。この曲がこんだけ大変だったっていうのばかりすぎて、どれを挙げればって感じで(笑)。でも、バンドをやり始めて1年後くらいに出した初のミニ・アルバムの中で、結果的に『また会う日まで』っていうタイトルになった曲があるんですけど、その曲は「何を書いていいか」っていう序盤のところでつまずいて。歌詞もどういう風な構成にしたらいいんだろうっていう悩みがありつつ、歌録りのぎりぎりまでやってて、何とか滑り込みでできたっていうのは、印象に覚えてますね。
有紀:でもそういう類だったら、確かにあるかもしれないなあ。歌入れの直前まで作詞をしているとか、そういうのはありますけど。Kraさんの場合は、バンド編成だからメンバーの分だけ思考があるでしょうから、そういう意味では大変そうですよね。
景夕:そうですね。最初のうちは勢いとかでいけてたものが、年数を重ねるうちに、そこがよりみんなの性格が鋭利になっていくというか。
有紀:そうですよね、こだわりが出てきたりとか。同じ方向を向いてる瞬間って、バンドって多分すごい強いと思うんですけど、足並みが揃わない時って、揃えるまでが大変なんだろうなって思って。
景夕:大変ですね(笑)。何年やってても、同じようなスパンでそういう時がやってくるというか。
有紀:そうですよね。うちなんて2人しかいなくても、微妙に噛み合わない時がありますから。だから2人でも大変なのに、人数が多いと何かそういう苦労もあるんだろうなって。
景夕:お2人での年数は長いですよね?
有紀:そうですね。僕はドラムのヒロ(村田一弘)とは、1つ前のRaphaelってバンドから一緒なんで、もう20年一緒にやってるんですよね。
——長いお付き合いですね! では逆にサクッとかけた曲はありますか?
有紀:はまりがいい時って、すらすら進みますよね。
景夕:そうですね。
有紀:僕は曲を作る時に、パソコンに向かってテキストを開いて、そのまま歌いながら書いていく感じなんですけど。めちゃくちゃ調子が良かった曲は、やっぱり過去に何曲かあって、一度も止まらずにそのまま書いていけると曲の尺の分だけなんで、大体4〜5分で1曲できるってこともありますし。
——最短な作詞時間ですね!
有紀:早ければいいってものではないと思うんですけど、時間を掛けて熟考した曲よりも、意外とファンの方のウケが良かったりとかっていう時もあったりとか。
景夕:4〜5分の作詞は、俺は1回も経験がないですね(笑)。
有紀:たまにあるんですよね。でも何か、背徳感があるじゃないですか。それができちゃった時に、「本当にこれでいいのかな?」って。で、2〜3日考えてみて、「やっぱりここは手直ししよう」って思うと、どんどん手直しの箇所が増えていって。そうなると創作期間が1週間とか10日の曲になっちゃうんですけど。ある日、背徳感に打ち克てた作品があって、「これはこれでいいんじゃないか」と思えてからはすごく気持ちが楽になりましたけどね。この曲で言い切れなかったこと、書き残したものは、次の創作で新しく綴ろうっていうスタンスに切り替えてからは、苦悩しなくなったというか。少なくともそこでつまずくことはなくなったんですね。うちは、相方のドラムはほとんど詩も曲も書かなくて、99%くらいは僕なので、必要以上に1つの創作で立ち止まっているとかえってチームに迷惑をかけてしまう。あと僕の場合は、音源にしてしまった曲でも部分部分で、「やっぱりこっちじゃなくて、この言葉を使えば良かった」って曲は、ライブでは平気で違う歌詞で歌ってたりするので。お客さんに「何で音源とあの部分の歌詞が違うんですか?」って聞かれると、「音源にした時はそう歌いたかったんだけど、今はこう歌いたいからこうしてるんだ」って、平気で結構言えちゃうので(笑)。だからあんまり創作の苦労はないですね。
——その考えもいいですね。
有紀:B型らしく(笑)。
景夕:あれ、同じB型なんですけど(笑)。
有紀:そうなんですね。じゃあきっと、表面化していないだけでそういう感性も潜んでるんだと思いますよ。何かのキッカケで開花するかもですね(笑)。
景夕:今日このお話を伺ったので、調整してみるっていうのもいいかもですね。
——景夕さんがそれをしたら、歌詞を間違えたって思われそうですね(笑)。
景夕:俺の場合、それ系が多いかもしれないですね。
一同:(笑)
有紀:あと僕の場合は、セルフのマネジメントでの時間も随分長くなっちゃったので、意見を交わし合える間柄の人がいないのもあるんですけど。メンバー2人でいいねと思ったら、それがGOにすぐ繋がっちゃうので。選曲会議があるわけでもないですし、メンバー2人しか居ないってのもあってカチっとしたミーティングの席が特にあるわけでもないので。そういういろいろな条件がリンクして、よりサクサクっと進むのが多いのかもしれないですけどね。
景夕:そういう部分だけ聞くといいなって思う部分と、でも自分だけだと俺は多分できないなって分かってる部分も大きくて。
有紀:「フリーが羨ましい」とか、「自由に好きな音楽がやれてていいね」って結構言われるんですけど、ものすごいずっと慢性的に心細いですし、何かあった時に、結局矢面に立つのも自分なんですよね。だからやっぱりプロダクションに所属しているとか、バンドでメンバーがちゃんと3人とか4人とかいるのとか、ものすごい羨ましいですけどね。
景夕:多分、各々が抱えていて見えているものと、向こう側のものとは、すごく輝きが違って見えるんじゃないですかね。
有紀:そうかもしれないですね。
——ちなみに景夕さんがサクッと書けた曲は?
景夕:ないかもしれないんですけど…。いや、あるんですよ(笑)。ただ、何も書かずに頭の中で何となく「この曲はどういう曲かな?」っていうのを考えてて。その期間が長かったりして、1回書き始めたらサッといったっていうのはありますね。『イマチュア』っていう曲だったかな。
——その時の心境は覚えてますか?
景夕:心境は、「よっしゃあ、終わった! 次!」
一同:(笑)