こんなに面白い人たちを知らずに死んだらもったいない
──仮に今撮ったらまた違う内容になるんでしょうね。
大石:もし今年撮影していたら、『I ACCEPT ALL』のレセプション・パーティーのU.G MANが間違いなくハイライトだったでしょうね。
YUKARI:そうだろうね。でも、撮れたのは面白い時期だったと思いますよ。チーターズマニアの初ライブがあったり。
大石:いつ撮っても面白いと思いますよ。谷ぐち家の3人もそうだし、レスザンTVに集まるバンドもそうだし、こんなに面白い人たちを知らずに死んだらもったいないよ!? って思ってますからね。特に波風の立たない普通の人生でも、谷ぐち家なりレスザンTVっていうちょっとしたスパイスがあるだけで俄然楽しくなるんですよ。
大石:若い人たちに観てほしいですね。将来に不安を抱えている人は特に。わたしが谷ぐち家と出会った25、6くらいの人とか、不安だらけだと思うので。
YUKARI:「大丈夫! 何とかなるよ!」みたいなね(笑)。でもそうだよね、当時のくらのすけは「結婚できるかどうか分からない、子どもも欲しい気がするけど自分に母親が務まるか分からない」って言ってたもんね。
大石:そうなんですよ。でも今は早く結婚したいし、早く子どもを産みたいんです。谷ぐち家みたいに楽しい生活を送れると思うし、この家族のことを知ると自分の生活自体が楽しくなりますよ。
YUKARI:たまたまわたしたちは結婚して子どももいるけど、それが必ずしもベストじゃないし、わたしだって今の生活が正解だとは思ってないし、人それぞれでいいと思う。結婚しないでも、子どもがいなくても楽しく生きる方法はいくらでもあるはずだから。あくまでも選択肢のひとつとして、この映画を観て「こんな生きかたもあるんだな」って思ってもらえたら嬉しいかな。
大石:わたしたちと同じ女性、若い女の子にも観てほしいんですよね。YUKARIさんが共鳴くんを育てながらバンドをやる姿はなんて格好いいんだろう! って感じるはずだから。もちろん男の人にもYUKARIさんの格好良さは伝わるはずですけど。
YUKARI:わたしね、今まで男の人には絶対に負けねぇぞ! と思ってバンドと仕事をやってきたところがあるの。負けたくないからもっと武装しなきゃと思いながら身構えてたところがすごくあった。でも、この映画を観てくれた人たちの感想をいろいろと聞いて、無理に武装して強くなる必要なんてないんだなと思って。女性なりの良さを自然に出していけばいいんだな、って。
大石:女性を武器にするというわけではなく。
YUKARI:うん。特に気負わなくても闘えることを、この映画が完成してからの数カ月で知った。この間の『METEO NIGHT』のニーハオ!!!!のステージでも「わたしたちが『METEO NIGHT』唯一のガールズ・バンド!!」って胸を張って言えるようになったしね。それまでは自分に引け目を感じるか、逆に「絶対に負けねぇ!」って気負うかのどっちかだったから。
──それが、この映画を観てくれた人たちの感想を聞いて自身を客観視できたと言うか。
YUKARI:そうですね。あと、みんな意外と好意的に見てくれてたんだなと思って。もっと言えば、レスザンTVはわたしにとってはすごく大きな存在で、25年も続いて、根強いファンがいるすごいレーベルじゃないですか。そこにタニと結婚したわたしが急に現れてレーベルを手伝うようになって、あまりいい気がしてない人もいるんじゃないかと思ってたんですよ。この間のU.G MANのライブもそうですよね。わたしなんかがベースを弾いて、長年のファンの人を冒涜してしまったんじゃないか? とか思ったし。そういう新参者の気おくれみたいなものが今までずっとあったんですけど、自分がどう思われようと別にもういいかなと思って。わたしはわたしでしかないし。
大石:そこまでYUKARIさんが吹っ切れるきっかけになった映画だから、余計にYUKARIさんのお母さんには観てもらわないとですね。
YUKARI:うーん。自分で曲を作っといてなんなんだけど、言いづらいんだよね、映画のタイトルが(笑)。