新宿LOFTでの忘れられないエピソード
——みなさんには、新宿LOFTに何度もご出演頂いていますが、LOFTでの忘れられないエピソードを一つ教えて下さい。
小高:俺はBARのステージの所から落ちて、左手を骨折しました。
——いつ頃ですか?
小高:2006年の3月かな?
合田:結構前だったな。覚えとるよ。
小高:LIQUIDROOMのワンマン(2006年4月2日)が初めて売り切れた10日前だったんです。「どうすんの?」みたいになって(笑)。
——どうしてBARのステージから落ちたんですか?
合田:酔っ払ってですね(笑)。
卓偉:結構お酒を飲まれるんですか?
小高:飲みますね。最近は家で飲むばっかりで、飲みには行かなくなっちゃいました。飲みに行った最後の記憶がないくらい前ですね。
合田:逆にツアー中とか、楽しそうなんですよ。
——飲めるからですか?
合田:そうそう。解き放たれるから(笑)。
小高:楽しそうって言ったって、一緒に飲むのはメンバーですけどね(笑)。
卓偉:(笑)あとスタッフとね。
小高:今はスタッフも連れて行ってなくて、メンバーの4人だけなんですよ。スタッフもいれば、それはそれで楽しかったんでしょうけど。4人で回れちゃう感じなんですよ。
卓偉:ローディーさんも?
小高:連れて行ってないです。
卓偉:そうなんですね。でもそういう時代だと思いますよ。レコーディングの話になっちゃいますけど、僕もドラム以外は基本的に全部自分でやります。出来るようになっちゃったって言うか。結局は自分で曲を書いてるから、キーボードもベースとかも弾けるようになってしまうんですよね。合田さんみたいにスラップは出来ないですけど(笑)。合田:いえいえ(笑)。今はでもそういう方が多いですよね。ドラム以外は家で全部自分でやっちゃうって人とか。
小高:なんならドラムは全部打ち込んじゃったりね。
卓偉:そうそう。そういうデジタルチックなアルバムとかになれば、リズム・ループを組んで、フィルだけ貼ってっていうやり方もありますよね。最新のアメリカの音楽なんか、みんなそうですし。それを割り切れて、尚かつライブでは生演奏をするっていうのは、ありなのかなっていう気にはなってきましたけどね。
——時代は変動していきますよね。では話を戻させて頂いて、小高さんはワンマンの10日前に骨折して、LIQUIDROOMでのライブは大丈夫だったんですか?
小高:理由が理由だったし、お客さんがいる前だったんで…。
卓偉:あっ、お客さんがいる前で骨折したんですか! 散々じゃないですか(笑)。
一同:(笑)
小高:だから、恥ずかしいから一切骨を折ったことも発表しないで。
卓偉:じゃあ、ギターを弾いたんですか?
小高:はい。でも指が動かないから、端折ってやりました。ギプスも取ってやっちゃったので、超痛かったんですけど。ライブ後に楽屋に来てくれた友達とかに、「実はこうだったんだよ」って話したら、「プラマイゼロだな」って言われました。「どんだけ頑張っても、それでゼロだから。骨を折ったお前が悪い!」って。
卓偉:まあその分、自分が頑張ればね。
——骨を折った時は、周りにいたお客さんは骨が折れたとは思っていなかったんですか?
小高:思ってないですね。俺も2〜3日放置してたんで。その時は、「指が曲がるから大丈夫だよ」って周りからも言われて、それを俺も信じちゃったんで。でもパンみたいに腫れちゃって。「絶対に折れてない」って信じてたんですけど、2〜3日経ったくらいに周りから「絶対に病院に行け」って言われて一応行ったんですね。で、レントゲンを撮ったら、「折れてますね」って(笑)。
——すごいですね。合田さんはどうですか?
合田:何かあるかな〜。
小高:あれじゃない? 昔、ビラを配ってたら怒られたって。
合田:あー、LOFTには当時は、本当に僕らは相手にしてもらえなかったんで。
小高:何回、CD-Rを送ったかね。
合田:ビラを配りに来たら、「そこはダメ」って怒られて。「怖いわ、この箱」っていうイメージでしたね(笑)。
——(苦笑)かなり初期の歌舞伎町LOFTの頃ですね。
合田:そうですね。2000年くらいですよ。
——当時は完全NGだったんです。すみません(笑)。卓偉さんはどうですか?
卓偉:ここ(歌舞伎町)になって、初めて出させて頂いた2002年の時だったんですけど、1曲目にシーケンスを流して、バーンとバンドが演奏をして、そこに自分が登場していく流れだったんですけど、ギタリストがレギュラーチューニングのギターじゃなくて、半音チューニングのギターを持っちゃってて。最初にバーンと弾いた時に、すごく音がずれちゃってたんですよ。当然ですよね、半音ずれてるわけですから。ベーシストやローディーも、「あれ? おかしいよね」って感じになってて、袖から見てて押さえてるフレットは合ってるから、持ってるギターが違うなって思って。登場して行ってから演奏を止めて、「ギターが違うから、もう1回やろう」とだけ言って、1回楽屋に戻りましたね(笑)。
一同:(笑)
卓偉:で、SEをかけてやり直したオープニングがありましたね(笑)。
——箱側で何かミスがあったのかと思って、焦りました(笑)。
卓偉:いえいえ、たまたまギタリストがそっちのギターを持っちゃったんですよね。
——緊張してたんですかね?
卓偉:多分、素で間違えちゃったみたいですね。ローディーの責任でもあるんでしょうけど。その後に4曲続くセットリストだったんで、冷静に考えたら絶対に無理だなって思って。「ギターを持ち替えて、もう1回やろうぜ」って言って帰っちゃったもんだから、ファンの人たちがびっくりしてましたけどね(笑)。「何か、卓偉が指示を出して、帰ってったぞ」って。「次は出てくるのか?」みたいな(笑)。
一同:(笑)
——怒ってるのかなって思ったんですかね?(笑)
卓偉:いやいや、もう冷静に。もうしょうがないって思ったんで。
——潔いですね。
卓偉:いやいや、そんなことないです(笑)。思い出と言ったら、僕はそれですかね。
小高:あっ! 俺はギターを裏口階段で盗まれたことがありました!
合田:あったね。そのギターはたまたまサブだったんですけど、ローディーさんが、「俺のせいで…」ってヘコんじゃってたよね。
卓偉:いやいや、楽器盗みって有り得ないですからね。「こんな狭い界隈で、そのギターを弾けるのか?」って。
小高:あれ以降、裏口階段に竿だけは置けなくなりましたね。
卓偉:重い話になりましたね。
一同:(笑)
卓偉:でも楽器はミュージシャンにとって、命だからなあ。
小高:本当にサブだったから、まだ良かったけど。サブは何の思い入れもないギターだったんで、メインのギターじゃなくて良かったって、しみじみ思いますね。メインは、それこそ田渕ひさ子さんのサインが入っているし、「レリックしたんですか?」って言われるくらい、自然に塗装が剥げているし。
合田:そうだね。他に何かあるかな?
小高:最初はね、LOFTって本当に感じが悪いなって思ってたよね。「お高くとまりやがって」みたいなね。
一同:(笑)
合田:でも今となっては、こういうライブハウスは本当に珍しいなって思うんですよね。完全に縦の繋がりがしっかりあって、軍隊みたいなところがあるなって。でも俺はそれがすごく好きで。
小高:働いている人たちもね。
——今もありますか?
合田:昔から脈々とありますよ。
卓偉:下に厳しくするのは大事なことですよ。ライブハウスは厳しいくらいの方がいいんじゃないですかね。
小高:そうですね。縦社会ですね。当時は俺らがしょぼすぎて、LOFTがお高くとまってるように見えたんですよね。
卓偉:みんな最初のうちはそうやってあしらわれて、すごく冷たくされたっていうのは、どんなアーティストも、ほぼあるあるじゃないですか。だから簡単には受け入れられるものじゃないって風になっている方が、我々も努力したくなるんじゃないかなって。全部ウエルカムだと、「ここまですぐ行けちまったぜ」みたいなバンドがいても、やっぱりしょうがないっていうかね。
小高:今はね、LOFTには逆にめちゃめちゃ融通を利いてもらって、迷惑を掛けてるもんね。
卓偉:結果、そうやっていい付き合いが出来れば、美しい関係ですから。だからそういうことに若い子たちはめげないで欲しいなって思いますけどね。厳しくて当然と言うかね。
——そう言って頂けると救われます!