Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビューLeft Ass Cheeks - DJ TASAKA × AKURYO【完全版】(Rooftop2016年11月号)

路上で生まれたワーキングクラス・ダンスミュージック!
ぶっ壊れた世界と渡り合え!!

2016.11.01

 去年の夏、愛と戦いのダンスミュージックを開花させたアルバム『UpRight』をリリースしたDJ TASAKA。様々なパーティーでマイクを握り作品をリリース、原発事故後はスピーディーに曲をweb上で発表しているAKURYO。出会うべくして出会った二人、クラブはもちろん、ストリートでも共にサウンドを放っていたが、いよいよユニットを結成。その名もLeft Ass Cheeks。この痛快で下世話なユニットのそのサウンドも痛快で下世話。だけどキラキラとしてるしポリティカルである。それは私たちの日常で、このしんどい今の日常を、へらへらゲラゲラ笑いながら立ち向かうタフさがある。こんなダンスミュージックで踊りたかったのだ。
 この『Left Ass Cheeks』、なんとフリーダウンロード。すぐに聴ける、誰でも聴ける。すぐに聴いてほしい。(TEXT:遠藤妙子/PHOTO:Yasumichi Noma)

原発反対っていう真面目なコールを、ケツとかプッシーとか言ってる奴らのノリでやってる(笑)

 
──ついにLeft Ass Cheeksがアルバム作っちゃいましたね。ライブ見たときはどうなるかと思ったけど(笑)。
DJ TASAKA:最初のライブね。遠藤さん、ライブの後、「アホだアホだ」って言ってたもんね。最高の褒め言葉(笑)。
──だって楽し過ぎたから(笑)。アルバムはシリアスとくだらなさが混在したダンスミュージックで凄くカッコよかったです。二人は東京大行進のサウンドカーやクラブのパーティーでは一緒にやったことはあるけど、音源を作るのは初めて。もともと知り合いだったんですか?
AKURYO:俺は知り合う前からDJ TASAKAという名前は当然認識はしていて。ミックスCDも聴いてたし。アルファのトラック作ったじゃないですか。「俺をやったほうがいいのに」って思ってましたもん(笑)。20代の頃はTASAKAさんが出るパーティーにも遊びに行ってますし。実際に知り合ったのは3.11以降の...
DJ TASAKA:2012年、原発稼動ゼロになったときにやった代々木公園でのブロック・パーティーなんじゃないかな。
AKURYO:その前後にも反原発デモのアフターパーティーで、俺、「げ~んぱつやめろ~」「さ~いかどうは~んたい」って酔っ払いながらコールしてたんですよ。そしたらスゲェ反応してる人がいて。「2 LIVE CREWの “we want some pussy” パクったべ!」って笑いながら寄ってきて。 それがTASAKAさんだった。俺、実はTASAKAさんの顔は把握してなかったから、「この人がDJ TASAKAか!」って。
DJ TASAKA:2 LIVE CREWってのは、ケツとかプッシーとかばかり言ってる、下品で下世話なマイアミラップグループね。AKURYOくんはそのリズムや節回しを真似てるからさ、アホだな~って思って(笑)。しかも原発反対っていう真面目なコールを、ケツとかプッシーとか言ってる奴らのノリでやってるっていう。
AKURYO:考えてみれば今回のアルバム、それとつながってますね。
DJ TASAKA:確かに確かに。
 

LIVE2.jpg

──その後、東京大行進でDJとMCとしてサウンドカーに一緒に乗って。
AKURYO:一緒のサウンドカーに乗ったのが2015年の東京大行進で、そのときのTASAKAさんのプレイが凄かった。
DJ TASAKA:デモやパレードのサウンドカーで、AKURYOくんはガチッとしたコールもできるんだけど、アドリブが効くというか。沿道にいる外国人の集団に向かって「ジョイナス!ジョイナス!」って呼びかけたり、「ビーボーイ達がパレードに入ってきたぜ!」って実況中継みたいなこともやれちゃう。そういうとこ面白い。
──そしてアルバムを作るわけですが。どんな感じにスタートしたんですか?
DJ TASAKA:去年の12月にAKURYOくんからメールがきて...、(そのメールを読み上げる)「お疲れっす。ちっと聞きたいんですが、TASAKAさんに頼むと一曲いくらになりますかね」って(笑)。俺は冗談で「3000円」とか返して。もちろん俺もやりたいって思ってたんだ。ラッパーと何か一緒にやりたいってのは常にあって。で、いいラッパーがいないかな、あ、いた!って。
AKURYO:すぐにTASAKAさんから音が送られてきたのね。おぉっ!って思ったけど、ちょっと違ったんですよね。
DJ TASAKA:そう。それまでのAKURYOくんのカラーに寄せ過ぎた。それまでのAKURYOくん、3.11以降、曲をどんどんアップしてしたけど、ハードでシリアスだったからね。
──ということは、AKURYOさんはハードでシリアスではないものがやりたくて。
AKURYO:そう。だからTASAKAさんに頼もうと思ったんだし、このルーフトップのTASAKAさんのインタビュー読んで、お互い似たようなバイブスの時期なんじゃないかって思ったんですよ。TASAKAさんは『UpRight』を去年の夏に出して、自分の中である程度整理できたっていうか、シュッとしたものをインタビューの言葉から感じて。2015年の春から夏っていったら国会前では結構な人が集まったり、SEALDsのおかげもあってメディアも取り上げてた。俺もそれまで結構ゴリゴリでストイックな感じの曲をサウンドクラウドやバンドキャンプにあげてたんだけど、ちょっと違うアプローチでやってみてもいいかなって。それでラテン系の「No PASARAN」を作ったんですよ。
DJ TASAKA:あれ、凄い良かったよね。「あの曲、良かったね」って俺がAKURYOくんに言ったのが新横浜のプリンスホテル裏で...、
──安保法制の地方公聴会のときですね。
DJ TASAKA:そうそう。そんなシチュエーションで「あの曲、良かったね」(笑)。
AKURYO:「No PASARAN」はTASAKAさんの反応が凄い良くて、そのタイミングでTASAKAさんのインタビュー読んで、なるほどなって思ったんです。コレは似たようなこと思ってるなって。一緒にやったらおもしれぇことになるなって。
DJ TASAKA:だけど最初は俺がAKURYOくんに寄せ過ぎちゃって。
AKURYO:これは一度呑みにでも行ってバイブスを確認し合おうって。
DJ TASAKA:五反田の中華料理屋にね。さっき言った3000円で(笑)。最初に話したのは例の下品なマイアミラップのことで。「やっぱケツだよね」とか「マイアミに左翼はいるのか」とか(笑)。
AKURYO:ケツとか尻ってマイアミラップの結構重要なアイコンだったりして、そしたらTLCにレフト・アイっているじゃないですか。それならレフト・アスってのがいてもいいじゃないかって(笑)。無駄話がどんどん膨らんでいって。
DJ TASAKA:「LEFT ASS」で検索したら「どうでもいいわ」って感じのスラング的な使い方もあるらしく。「レフト」内でのPTA的、品行方正なのを他人に要求する窮屈さってのを感じていて。それへのアンチな姿勢も示したくて。最初は俺、あくまでAKURYOくんのバックトラックを作るって感覚だったけど、ユニットにして二人でガツッと作るかって意識が変わって。
AKURYO:だからその後に届いたTASAKAさんからの音、凄かったもん。どんどん送られてくるし。コレはもうアルバムにしようって。TASAKAさんがどんどん送ってくるから俺も早く書かなきゃなくて。俺は基本リリック考えるの遅いんです。ポリティカルなやつだと言い回しも考えなきゃないし。でもこのスピードに乗っかろうと。そしたらザーッて感じで書けて。
DJ TASAKA:一筆書きだよね。
AKURYO:そうそう、一筆書き。
DJ TASAKA:音もそうだし。イメージが膨らむワードと音をセットで提案していって。
AKURYO:身体で書けた感がある。もったいぶった言い回しはしてないし、わかりやすく聴きやすい。重過ぎない。そうだ、最初に送られてきたのが「嘘ばっかで慇懃無礼」でしたよね。
DJ TASAKA:そうそう。風呂入ってるときに、その言葉と凄いチープなエレクトロみたいなイメージを思いついて。送ったらすぐにリリック乗っけてくれて。
──そのスピード感と楽しさとバカバカしさが、まさに凝縮されたアルバムだ(笑)。
AKURYO:でさ、このユニットにはDJ Left Assって謎のメンバーがいて、Mc Left Assにもなって歌ってるという。
DJ TASAKA:ま、それ俺なんですけど(笑)。
AKURYO:TASAKAさんはやっぱ歌いたかった、伝えたかったんだなって。『UpRight』でMC JOEさん、SoRAさん、Kinueさんと、MCやヴォーカリストをゲストに呼んでたけど、今度は自分でやりたいんだなって。
DJ TASAKA:実はやりたかったのかよ、っていう(笑)。
 
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