時代とコミットしてやるのって、やっぱり「生きている」感覚
──あの、音楽を作る上でエポックメイキングな世の中の出来事ってありました?
AKURYO:俺は基本ないっすね。3.11前からこういうことしかラップしてないから。俺、20才の頃、一度ラップをやめたんです。ヒップホップのスタイルがちっと固まってるように感じて。それでいろんなジャンル聴いて、中でもデトロイトテクノが面白くて。もう一度マイクを握ろうって。その頃に同時多発テロがあった。アレは大きいですね。世の中のこと知っとかないとヤバイ殺されるって、強迫観念とかじゃなく普通に思った。
DJ TASAKA:アメリカで同時多発テロが起きた2001年の9.11、その頃に関してのドイツのWESTBAMってDJのインタビューを最近見て。それまではラブパレードみたいな大規模なレイブがどんどんデカくなって、ワンワールドみたいな、世界はひとつになれるんだっていう幻想意識がヨーロッパの先進国の人達にはあった。それが9.11があって、あの日を境に変わってしまった。世界には自分達を嫌っている人々がいるんだって皆が知った、と。
AKURYO:あぁ、音楽もワールドワイドになるかと思ったら...、
DJ TASAKA:そう。それまでのトランスとかに象徴される、多幸感に迷いのない音楽が、ミニマルで静かめになって、規模的にも小さくなっていって。「テクノロジーと一緒に、ワンワールドが発展する」っていう幻想が打ち砕かれた、といっていて。
──個的になってしまったんですね。
DJ TASAKA:そう。それ聞いてなるほどって思ったんだけど、日本はまた違って。日本は2011年の3.11があって、「俺達、もっとやらなきゃいけないことがあったんじゃないか?」って各自が気づいたっていうのがあるでしょ。
AKURYO:構造があらわになりましたからね。原子力発電所の構造なんて、まさに日本の構造の象徴のようなとこもあったわけだし。
DJ TASAKA:うん。で、そっちはそっちでそういう現実があるけど、イマジナティヴな音楽をやるっていうのも、ずっとやりたいこととして確かにあって。でもだったらつなげちゃったほうが面白いじゃんっていう。さっき言った、AKURYOくんが見てるものだから信頼できるリリックっていうのもそういうことなんだけど。
AKURYO:時代とコミットしてやるのって、やっぱり「生きている」感覚っていうか。そういう感覚で音楽を作っていくと、ダイレクトな手ごたえがあるんですよ。
DJ TASAKA:そうなんだよね。それは作ってるときだけじゃなく、リスナーともコミットしたいわけで。
AKURYO:そうそう。リスナーがもっとコミットしてくれば、リスナーともっとコミットできたら、音楽ってもっと面白くなると思うんですよ。
DJ TASAKA:だから反応が楽しみだし、多くの人に聴いてもらいたいし。ドンキホーテでもかかってほしい(笑)。
──うんうん。フリーダウンロードですしね。
DJ TASAKA:ひとつのやり方としてね。金の話、「make money」とか歌っていながら、その音源をタダで配っている矛盾ね(笑)。その矛盾がいいなと思ってて。
この後、CDを作るかもしれないし。メンバーが増えてるかもしれないし。
AKURYO:ここぞってときにやる奴はやるっていうね。
──ジャケットやアイコン的なオブジェも、ここぞ!って人の手による。
AKURYO:ステッカーにもしたジャケットは、佐藤B咲くっていう、昔から俺のジャケットを描いてくれてる人で。ストリートの落書きっぽいものに、宇宙の虹をバックに描いてきて。もうバッチリでしょ。
DJ TASAKA:AKIRA THE HUSTLERが作ったオブジェは左尻男くんって言って(笑)...、
AKURYO:苗字があるんだ(笑)。
DJ TASAKA:AKIRA THE HUSTLERもお上品なものはぶっ飛ばせ!って感じでね(笑)。最高でしょ。
──最高です。ホント、出会いそうで出会わなかった二人がこうして一緒にやるのは、同じ景色を見てきたからなんでしょうね。
AKURYO:全然自然なこことですけどね。共通の音楽を体験してただろうし。
DJ TASAKA:デモやカウンターで会ったのはデカイけど、行ってない人に届けなきゃって使命も意識もなかったんですよ。そのために作った曲なんかないし。だってそれは既にあるものだからね。
AKURYO:そうそう。だから気負わず表現してる。それで「ポリティカルってこんなんでいいんだ!」って勘違いしてほしい(笑)。