作詞中は逃げたくなる!?
——お2人とも作詞をされてますが、歌詞の閃きのために何か普段からしていることはありますか?
卓偉::歌詞も不得意なんで、TAKAさんがどうやって書いているか聞きたいですね。僕は、死ぬ程歌詞に時間が掛かるんですよね。
TAKA:俺もそうですね。
——歌詞を書き溜めておいたりするんですか?
TAKA:いや、書き溜めれないですね。曲が出来てから、締め切りまでに書くっていう形ですね。
卓偉:じゃあ音符が決まってて、っていうことですよね?
TAKA:そうですね。同時にやるんですか?
卓偉:詩と曲をやるんであれなんですけど、昔は曲は曲で完全に音符で決めて、でたらめ英語とかで歌っておいて、そこに合う言葉をはめてったんですけど。例えば自分でも一番戦いだったのは、5つの音符に対して5文字の言葉をはめないといけないと思ってるわけじゃないですか。でも6文字や4文字のいい言葉が浮かぶわけですよ。「これ、1文字がはまんねーわ」と思って、それを諦めてきたんですよね。でもある時に「それでいいのか!」って自分の中で自問自答があって、「だったら音符を1個減らそうとか、増やそうとか、なんでそんなふうに思えねーんだろう」って単純に思ったんですよね。で、曲がある程度出来ても、詩をはめる時に同時にメロディも直すようにしちゃおうって、ここ4〜5年でようやくですね。気付くのがおせーだろってくらい、最初の10年はずっと首を絞めてやってきてましたね。
TAKA:それは分かりますね。俺も、自分も書いたり、メンバーが書いたりもするんですけど。今回のアルバムでもサビの1行目とか完全なメロディなんですけど、絶対この言葉を入れたいなっていうのがあって、メロディを変えちゃったりとか増やしちゃったりとか、「ここをこうやっちゃっていい?」って。
卓偉:それはやりとりするんですね。
TAKA:そうですね。で、変えてますね。
卓偉:作曲者によっては、「いや、そのメロディは…」とかはないんですか?
TAKA:うちはメンバーがもう長いんで、「こうでもいい?」って聞くと「あぁ、いいよ」っていう感じですね。曲の雰囲気を変えないようなメロディを増やしたりとかですね。あと、「サビの頭が3文字とかは勘弁してくれ」みたいなやりとりをしたり(笑)。
卓偉:そんなワードないですよね(笑)。
TAKA:そうそう。「そんなワードはないよっ! もうこれまでにいろいろ出したよ!」っていうのがあったり(笑)。作詞とかあんまりしないメンバーなんでね。でもそれによって作曲が縛られるのもどうかなって思うんで、あんまり言わないようにしてますけど。卓偉くんは両方やるんだもんね。
卓偉:結構大変ですね。でもサビの頭が3文字だと苦しいとか分かりますね。“だけど”とか“そして”とかしか入らないですよね。
一同:(笑)
卓偉:意味にならないっていう(笑)。
TAKA:でも昔から卓偉くんの詩のボキャブラリーが凄いなっていうのがあって、気にしてましたね。たくさん本とか読むのかなって。本は好きですか?
卓偉:本は常に読みますね。
TAKA:やっぱりそうなんですね。
卓偉:本、映画はやっぱり好きですね。ストーリー性があるものも好きですし、単なるワードの羅列とかも好きだったりしますね。歌になるとあんまりルールがないと言えばないじゃないですか。昔から詩に時間を掛ける=詩にこだわってるからこそ時間が掛かるっていうのがあるのかなって。ここ最近は、段々英語も使わなくなりましたね。じゃあTAKAさんも作詞に時間が掛かるってことなんですね。
TAKA:めちゃめちゃ掛かりますね。変なこだわりはなくなって、俺も英語はあんまり使わなくなったし、難しい言葉とかも昔は頑張って使いたかったりしたけど、今は「シンプルでいいじゃん」っていうふうになってきて楽になりましたね。そのメロディの時間内で、今、思っていることが入ればOKとしようって。それが上手くいく時もあるし、ちょっと尺に届かなかったなって時もあるけど、その時々でやっていけばいいんじゃないかなって考え方になって、ここ数年ちょっと楽になりましたね。
卓偉:時間が掛かるっていう作詞家のボーカリストの意見を聞くと、すごく勇気づけられるんですよね。1人でやってる作業中の時は、苦しくてどうしようもないんで。
TAKA:本当、発狂しそうになるよね。
卓偉:逃げたいって思いますよね。
TAKA:なんか、この曲はこの場所に届くだろうなってところがあってやってるけど、全然届かなくて(笑)。でもここまで届かせないのに作品で残るのは嫌だっていう思いが出てきて、逃げたいってなるよね。やめたい、助けてくれって(笑)。
——そういう時はポッと閃くんですか?
TAKA:そういう追いつめられてる時はダメですね。電車とかに乗ってる時に「あっ、キタ!」って。
卓偉:急にきたりしますよね。最近、歳と共に集中力がなくなってるんで、考えてダメな時はやんなくてもいいんじゃないかっていう開き直りもちょっとあって。全然違うことをやってる時に浮かんでくることとかがあるんで、悩んでる時間こそ他のことに使った方が、意外と客観的になれるのかなって思ったりもしてて。今、その途中でもあるんですけどね。でもやっぱり、毎回詩は苦しいですね。
——やらなきゃいけないことがある中で違うところにいくのって勇気がいりますよね。
卓偉:正直、楽しめないですよね(笑)。でもそういう時に閃いたりすることもあるってことなんですよね。
pics by Masayuki Kouda