Rooftop ルーフトップ

INTERVIEW

トップインタビュー友川カズキ(Rooftop2013年12月号)

無頼の酔いどれ詩人が突きつける歌という自爆テロ

2013.12.01

客と刺し違える覚悟で臨むステージ

──せっかく阿佐ヶ谷ロフトAにご出演して頂くのでロフトの話も伺いたいのですが、西荻窪にあったロフトで鼻の骨を折ったという話は事実なんですか。

友川:ホントの話ですよ。客とケンカになって、店の人ともケンカになったんじゃないかな。オーナーの平野(悠)さんがいたかどうかは覚えてないんだけどね。西荻のロフトって狭かったじゃないですか。私が唄ってる横で焼きそばを作ってたりして、それも頭に来たんだよね。あと、一番前の客が唐揚げか何かをムシャムシャ食べてたのよ。それも頭に来てケンカになって、客に殴られたわけ。それで店の外で血だらけになって倒れていたところを、たまたま通りかかった諏訪優さんが助けてくれたんですよ。ウィリアム・バロウズやアレン・ギンズバーグの翻訳で知られる詩人のね。それがきっかけで諏訪さんと親交を深めて、なぜか東北のツアーを一緒に廻ったりもしましたよ。

──じゃあ、ロフトに対してはあまりいい思い出がありませんか?(笑)

友川:そんなことないですよ。ただ、平野さんが曼荼羅の渡部(洪)社長と何かの音楽雑誌で対談していて、「もう二度と友川をロフトに出さない」って話していたのを読んだんです。「友川のことは絶対に許さない」って。許さないも何も、鼻の骨を折った私のほうこそ許さないよって感じでしたけどね(笑)。でも、それから何年も経って新宿のロフトに2、3回呼んでもらったはずです。バンドとの共演でね。今度の阿佐ヶ谷ロフトAは私一人ですけど、ガッツリ気合いを入れてやらせてもらいますよ。

──63歳となった今もずっとあの尋常ならざるテンションのままでライブをやり続けている友川さんですが、体力的な衰えを感じたりはしませんか。

友川:いや、それはないな。ステージの体力はなぜか全然大丈夫。でも、酒の体力はだいぶ落ちましたね(笑)。しこたま呑んじゃうと次の日が全く使い物にならない。ステージは未だにペース配分も何もなく、ただひたすら気合いを入れて唄うしかないんですよ。そうやるしか方法がないので。

──今の友川さんならもう少し広い会場でも充分にライブをやれると思うのですが、100人に満たない規模の会場でライブをやるのは意図するところがあるんですか。

友川:きっちり決めているわけじゃないんですけど、だいたい100人くらいが限界ですね。野外は全部お断りしていて、それは私が散漫な気持ちになってしまうからなんです。自分が出た高校の学園祭に呼ばれた時は能代市の文化会館を借りて1000人の前で唄いましたけど、あれはまぁ反面教師としてだったから(笑)。ホールはやっぱり、どこか他人行儀な気分になるんですよ。客と刺し違える感じにはならない。金をもらうか、金を払うかの違いはあっても、私と客は同等の立場ですからね。

──友川さんの歌は、友川さんと同等の立場にならないと真正面から向き合えませんよね。身体が弱った時にはとてもじゃないけど聴けない。計り知れないエネルギーが歌に渦巻いているから、こちらが参っている時は拮抗できないんですよ。

友川:そうでしょう? 私だって体調が悪い時に自分の歌を聴いたら死ぬと思いますよ(笑)。ただ、ステージだけは体調が悪くても全然やれる。体調のいい時のほうが歌も空滑りしちゃうし、適度に体調の悪い時のほうがいいんです。だから体調が悪くても全然大丈夫。何かしら鬱屈した溜めがないと、球が遠くまで飛ばないんですよ。ポーンと水鉄砲みたいになっちゃう。

──ということは、堕落して濁る一方のこの島国で暮らす以上、友川さんの歌がますます冴え渡っていくことになるんでしょうね。とても皮肉なことですけど。

友川:多分、私の歌を聴く若い人たちが求めているのはそこなんでしょう。若い人はそれを見つける嗅覚が優れているし、捕まえるのが早いんです。今の日本はこれだけ危機に瀕しているのに、テレビを見ても何もかもが明るいじゃないですか。全部が全部、上っ面だけでね。自分の口の中へ手を突っ込んで内蔵を掴み出すような感覚をみんな忘れている。人間は本来、獣なんですよ。それを忘れて表面だけつるんとした生き物になってしまったから、原発みたいなものに簡単に騙されるんです。この国はなぜ原発を残したいのか。要は金です。自国の放射能汚染もろくに処理できないのに、他国へ原発を輸出しているんですよ? 最低でしょう? 「盗人猛々しい」とはまさにこのことですよ。

──今もこうして唄い続けているのは、時代に呼ばれているからという感覚もありますか。

友川:長く唄ってきて良かったとは思っています。やっと時代に間に合ったんだなという気持ちですね。だからもうちょっと頑張ってふざけないとダメだと今は思っているわけ。ちゃんと期待に応えてね。

──こんな時代だからこそ全力でふざけてやろうと?

友川:そう。全力で一人盆踊り(笑)。客を集めて鼻をかんだ程度のことをやってもシラけるだけ。ここはやっぱり自爆テロを仕掛けて目に物見せるしかない。だからまだまだ作品を作り続けなくちゃダメだと思っていますよ。まぁ、音楽よりも競輪を優先するのは変わらないけどね(笑)。

 

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復讐バーボン

MODEST LAUNCH ML20140130
定価:2,500円(税込)
紙ジャケット二つ折り/歌詞(日英併記)ブック付き
2014年1月30日(木)発売

詩人、歌手、画家、競輪愛好家、エッセイスト、俳優、酒豪。
真に自立して生きることが忘れがちな時代にあって、無頼詩人のロマンを奇跡的に体現するアーティスト、友川カズキ。
この冬、前作から3年ぶりとなる待望のフル・アルバム『復讐バーボン』をリリースする。
1974年のレコード・デビュー以来、実に40年。安泰とも枯淡とも無縁の場所を歩み続ける男の現在地であり、今なお剥き出しのまま転がり続ける魂が到達した新境地——。

【収録曲】
01. 順三郎畏怖
02. 風のあらまし
03. 兄のレコード
04. 復讐バーボン
05. 『気狂いピエロ』は終わった
06. 犬は紫色にかみ砕かれて
07. わかば
08. ダダの日
09. 馬の耳に万車券
10. 夜遊び
11. 家出青年

LIVE INFOライブ情報

本牧の夜〜友川カズキ〜
2013年12月15日(日)横浜:ゴールデンカップ

出演:友川カズキ(Vocal, Guitar)
開演 18:30
前売 2,500円/当日 3,000円(共に1ドリンク付き)
【問い合わせ】ゴールデンカップ 045-623-9353

友川カズキ独演会 〜VINTAGE A VOL.13〜
2013年12月19日(木)東京:阿佐ヶ谷LOFT A

出演:友川カズキ(Vocal, Guitar)
開場 18:30/開演 19:30
前売 3,000円/当日3,300円(共にドリンク代別)
LOFT A店頭、ローソンチケット(Lコード:36536)、e+にてチケット発売中
【問い合わせ】LOFT A 03-5929-3445

友川カズキ そして りりィ+洋士&深沢剛
2013年12月24日(火)東京:渋谷La.mama
出演:友川カズキ(Vocal, Guitar)、りりィ(Vocal)+斎藤洋士(Vocal, Guitar)&深沢剛(Harp)

開場 19:00/開演 19:30
前売 3,600円/当日3,900円(共にドリンク代別)
La.mama店頭、ローソンチケット(Lコード:73215)、e+にてチケット発売中
【問い合わせ】La.mama 03-3464-0801

友川カズキ『復讐バーボン』リリースライブ at APIA40
2014年1月25日(土)東京:APIA40
出演:友川カズキ(Vocal, Guitar)、永畑雅人(Piano, Accordion, Mandolin)、石塚俊明(Drums)、金井太郎(Guitar)
ゲスト:ギャスパー・クラウス(Cello)

時間・料金は後日発表
【問い合わせ】APIA40 03-3715-4010

友川カズキ『復讐バーボン』リリースライブ in 大阪
2014年1月29日(水)大阪:心斎橋ジャニス
出演:友川カズキ(Vocal, Guitar)、永畑雅人(Piano, Accordion, Mandolin)、石塚俊明(Drums)
ゲスト:ギャスパー・クラウス(Cello)

開場 18:30/開演 19:30
前売 3,800円/当日 4,200円(共にドリンク代別)
ぴあ(Pコード:216-758)、ローソンチケット(Lコード:58462)、e+にてチケット発売中
【問い合わせ】心斎橋ジャニス 06-6214-7255

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