訛りとアクの強い友川の歌声は生命の擦れるささくれ立ったノイズだ。親和性の高いチェロやヴァイオリン、パーカッションの不穏な音色と相俟ってその凄みは増幅し、感情沸騰の臨界点で爆発する。聴き手の心の傷を癒すどころか傷口をさらに引き裂く鋭利で凶暴な音のウイルス。その一方で、石原吉郎、北村透谷、西東三鬼といった敬愛する韻士の詩句を蘇生させ呑み込み、詩情溢れる独自の世界を構築する手腕も実に見事だ。ライブではお馴染みだったものの今回が初音源化となる「革命の朝」や畏友・遠藤ミチロウのカバー曲「思惑の奴隷」など本作の聴き所は多々あるが、白眉は山崎春美が朗唱で参加した「三鬼の喉笛」。夭折した友川の実弟であり詩人、及位覚の「愛しい時間」から一部引用された詩を咆哮する春美が友川の歌とせめぎ合う様は実にスリリングだ。これぞアヴァンギャルドの極北であり、やけっぱちで丸腰のまま立ち向かうステゴロの美しさに敵うものはない。(Rooftop:椎名宗之)