今まで充分やってきたから悔いはない
──『ひょうたん』の再発盤のほうに追加収録されたのは、活動休止前の音源になるんですか。クレジットには1997年と書かれてありますけど。
二宮:そう…ですね。その1997年とかいうのもけっこう曖昧なんですよ。たぶんその辺の時期だろうっていう(笑)。
林:でも、大きな間違いはないでしょ? 数ヶ月ぐらいのズレはあるかもしれないけど。
──その1997年頃のデモ音源4曲の中に「円い月(独身バージョン)」という曲があるように、当時はモテない独身男のシミったれた行き場のない生活が主に唄われていて、共感できるところが多々あったんですよね。
二宮:その頃は日本のフォークをよく聴いていたので、それが反映されている部分もあるのかもしれません。あと、昔好きだったブリティッシュ・ロックに回帰した頃で、音にはそういうのが出ていると思います。
林:あの人の影響もけっこう大きかったんじゃない? 畑中純さん。
二宮:ああ、そうだね。漫画家でもあり版画家でもあった畑中純さんの世界にどっぷりハマっていた頃があって、どんな表現者よりも一番の影響を受けた人なんですよ。
──ちなみに、カセット音源は当時どれぐらい出回ったんですか。
林:大して作っていないよね?
二宮:50本ぐらいですかね。家のカセットデッキでせっせとダビングできる範囲ですよ。
──じゃあ、デモ音源の初CD化はやっぱり凄く貴重なんですね。
二宮:貴重と言えば貴重なんでしょうけど、それほど需要があるのかどうか(笑)。でもまぁ、最後にこうしてCDにすることができて良かったですよ。
──『UEN』のほうで、「UEN」、「夏の日の午后」、「秘密」とインストが続く流れが絶妙だなと思ったんです。最後の新曲も結成間もない楽曲もインストで、ひょうたんの20年間の地層をグラデーションのように表していると言うか。さまざまな音楽的変遷を重ねてきたけど、ひょうたんの音楽性はこうして一周してきたんだよと現在と過去を上手くつなげているように思えて。
二宮:ああ、なるほど。意図的にインストを並べたわけではないんですが、最初に新曲を入れたくて、その後に時系列に音源を並べたら自然とこうなったんです。でも、並べて聴いてみると面白いですよね。
──それにしても、ひょうたんが解散してしまうとニノさんの味わい深い歌声が生で聴けなくなってしまうのが凄く惜しいですね。自ら唄うバンドを他に始める予定は今のところありませんか?
二宮:今は何も考えていないですね。まぁ、何かやるかもしれないですけど、明日ライブが終わったら考えてみます。
──林さんもこれで叩ける場がなくなってしまいますよね。
林:まぁ、何か機会があればまた叩きたいなとは思っていますけどね。まだ身体も動くし、何かしらのご縁があればまた音楽をやりたいです。
──奥平さんはどうですか。
奥平:そうですねぇ…。なんとか現地で生き残ることが優先になるんで、とりあえずベースは断つつもりでいます。
──愛着のあるひょうたんの曲をもうライブでやれない寂しさがあるんじゃないかと思うんですが。
二宮:まぁ、それはもちろんそうですけど、今まで充分やってきたから悔いはないです。解散を決めた直後はいろいろと思うところもありましたけど、嘆いてばかりいても仕方がないですからね。
──このインタビューが読まれる頃にひょうたんはもう解散してしまっているのですが、今日明日のライブはバンドの集大成的な内容になるんですか。
二宮:そうですね。練習に費やせる時間が限られていたので、その範囲の中でできるだけ多くの曲をやろうと準備してきました。曲が被るのは避けられないですけど、やれるだけのことをやるつもりです。
──今回発表される2枚のアルバムの発売記念ライブを自主企画でやるつもりはなかったんですか。
二宮:実はあったんですよ。CDのリリース時期まで考えた上で自分たちでライブのブッキングをしなくちゃいけなかったんですが、結局ちゃんとできなかったんです。ライブハウスを押さえようとしたら空いていなかったりとかして。だったらもう、今日明日のライブを最後にさせて頂こうと思って。
──ラスト・ライブの2本とも他人の企画という、最後の最後までマイペースなのが実にひょうたんらしいですよね(笑)。
二宮:まさに他力本願ですよね。最後は人のふんどしで相撲を取るっていう(笑)。