イースタンユースの二宮友和がギターとボーカルを務めるひょうたんがさる2月10日、11日に下北沢THREEで行なわれたライブをもって20年にわたるバンド活動に終止符を打った。その置き土産として発表されるのが、秘蔵音源をボーナストラックとして加えた1stミニ・アルバム『ひょうたん』の再発盤、新曲3曲と初期の貴重な音源を収録した編集盤『UEN』(ユー・イー・エヌ)の2枚だ。純真かつ実直な歌心を真ん中に据え、変幻自在の特異なアンサンブルを繰り出すひょうたんの歩みを辿るにはうってつけの作品であり、気負うことなく我流に徹してきた彼らの音楽がこうしてアーカイブされたことは実に喜ばしい。
9年前にバンド初の公式インタビューを掲載した本誌としては、やはり最後に彼らの肉声を聞いておかねばと思い立ち、ラスト・ライブ初日の『toddle presents「riddle」vol.8』開演前にメンバー3人を直撃。柳に風とばかりに飄々とした佇まいと話しぶりは相変わらずで、その後のライブ本番もいつも通り淡々と、五臓六腑にじんわり染み渡る滋味に富んだ歌と演奏を聴かせてくれた。最後の最後までマイペースなひょうたんらしさを貫いた彼らに本誌は最大級のエールを贈りたい。(interview:椎名宗之)
なるべくしてなったマイペースな活動
──活動休止ではなく解散を決断した理由から聞かせて下さい。
二宮友和(g, vo):次にまたやるかどうかも分からないのに、活動休止っていうのもどうかなと思ったんですよ。
奥平厚志(b, cho):他のメンバーを入れずにやめるから解散ってことなんじゃないですかね。
──あくまでこの3人だからこそのひょうたんでありたかったと?
二宮:うん、そうですね。
──結成以来ずっとマイペースに活動を続けてきたバンドなので、ここであえて解散しなくてもいいんじゃないかとも思ったんですが。
二宮:奥平が新しいことを始めることになったので、このタイミングでスパッとバンドをやめて新しいことに集中したいという理由もありまして。
──奥平さんが始めようとしている新しいことっていうのは?
奥平:ニュージーランドへ移住しようと思って。向こうで仕事を探して新しい生活を始めたいなと。ビザが下りればの話なんですけど、とりあえず期限を決めずに向こうで過ごそうかなと思ってます。
──なるほど、それじゃ物理的にバンドはやれませんよね。今回発表される『ひょうたん』の再発盤と新曲も収録された『UEN』は、解散という選択肢がなければ世に出なかった作品というわけですね。
二宮:そうです。せっかく作ったので新曲だけ出したいと最初は思っていたんですけど、「3曲だけのシングルのリリースはちょっと厳しい」ってレーベル側から言われたんですよ(笑)。
林康雄(ds, cho):そこからずいぶんと話が広がってしまって(笑)。
──最後に新曲だけのフル・アルバムを作ろうという考えはなかったですか。
二宮:あと2、3曲新しいのを作って欲しいとレーベルからも言われたんですけど、具体的にリリースを決めたのが夏ぐらいだったんです。その時点で今回入れた3曲は作りかけてあったものの、夏以降はイースタンユースのツアーがあったから、スタジオに入る時間が全然なかったんですよ。1月ぐらいには全部の音を入れないと発売が間に合わないということで、逆算してスケジュールを考えると、新曲をさらに2、3曲作るのは到底ムリだったんです。それで昔出したデモ音源を蔵出しして、2枚もCDを出すことになったんですよ。
林:あと2、3曲新曲を作るなら、少なくとも4、5年はかかるよね(笑)。
奥平:間違いなくそうなるね(笑)。
──でしょうね(笑)。2004年に坂本商店からリリースした『ひょうたん』は捨て曲皆無の名盤だし、これで廃盤から免れたわけだから実に喜ばしいですよね。
二宮:せっかく作ったアルバムだから聴けなくなったのが悔しかったし、もう一度出したいなと前から思っていたので良かったです。
──『UEN』に収録された新曲はどれも明るい表情を湛えたものばかりですよね。ライブでも披露されていた「太陽橋」はまるで大海原を駆け抜けるような雄大さがあるし、「遠雷」はザワザワと焦燥感を覚える不穏なメロディだけどジメジメした感じはしないし、「UEN」は温かみと浮遊感のあるインストだし。どれもあまりひねった構成や凝ったアレンジになっていないのも特徴のような気がします。
二宮:ひねって作ろうと思って作った曲は今まで割とあったと思うんですが、ひねったものを作ろうという意識がだんだんと薄くなってきたんじゃないですかね。それよりもっと自然に出てくる感じの曲を残しておきたかったんですよ。
林:ただ、けっこうスケジュールがギリギリで、「遠雷」と「UEN」はほとんど形になっていないところから作っていったんです。最初は僕が「遠雷」の歌詞を作ろうとしたんですけど、いざ書いてみたらちょっと重い感じになっちゃったので、友和君にお任せしたんですよ。
──この3曲で新曲のストックはすべて出し切ったんですか。
二宮:そうですね。前のアルバム(『給水塔』)を出したのが2008年だったので、5年の間に3曲しか作らなかったことになりますけど(笑)。
林:マイペースにも程がありすぎるよね(笑)。
──20年間でミニを含めてアルバムが4枚ですからね。しかも、2004年以降に4枚(笑)。
二宮:いやいや、カセットも折にふれて出していましたから、一応は(笑)。
奥平:そのカセットの音源を掻き集めて、何とかアルバム1枚ぶんにはなったしね(笑)。
林:レパートリーは全部で50曲あるかないかぐらいじゃない?
──まぁ、それぐらいゆったりしたペースがひょうたんにはちょうど良かったんじゃないですか?
二宮:望んでこのペースでやってきたわけでもないんですけど(笑)。まぁ、なるべくしてこのペースになったんでしょうね。