ヴォーカルの入れ替わりは王道!?
──収録曲について訊かせて下さい。「きこえないラヴ・ソング」は現地で書かれた曲だそうですが、他にもそういう曲はあったんですか。
K:「IT'S SO HEAVY」はその場で作った曲だね。
──ストーンズの「SHAKE YOUR HIPS」を彷彿とさせるナンバーですね。
K:『メイン・ストリートのならず者』もサンセット・サウンドで生まれたアルバムだし、やっぱりそれっぽい曲をやっとかなきゃまずいだろうってことでね(笑)。
──「誰も知らない本当のビートは/犬も食わないダウンタウン生まれ」という歌詞も秀逸で、即興で書いたとはとても思えませんね。
T:けっこうすぐに出来たよね?
K:うん。遊び心で最後にちょっと「GOOD OLD ROCK'N'ROLL」を忍ばせて(笑)。
T:そこは熱心なファンが「おお、来たぞ!」って思うポイントかもしれないね(笑)。
──ドン&デューイの「JUSTINE!」とチャック・ベリーの「BACK IN THE USA」をカヴァーしたのはどんな理由で?
K:せっかくアメリカで録るなら、チャック・ベリーをやっておかないと失礼なくらいだからね(笑)。「BACK IN THE USA」は最初もっと緩いアレンジだったんだけど、ちょっと膨らませてみた。「JUSTINE!」は単純にやってみたかったんだよね。「JUSTINE!」から「サニー・カリフォルニア」の流れにしたかった。「JUSTINE!」のオリジナルは凄い勢いで、メチャクチャ濃い曲なんだよ。俺が初めて聴いたのは『クールス・オールディーズ・スペシャル』っていうアルバムに入ってたクールスのカヴァーで、それがまた凄くいいんだよね。
T:それを先に聴いていたから、オリジナルのコーラスをやるのがけっこう大変だったんだよ。クールス・ヴァージョンが染みついてるからね。
──何ならクールスのほうがオリジナルなんじゃないかっていう(笑)。
T:俺の中では完全にそうだよ(笑)。
K:ドン&デューイのオリジナルは今もダウンロードできるし、シングルも出てるけど、クールスがカヴァーしていなければそんなことあり得ないからね。そもそもシングル曲じゃなかったわけだしさ。
──EPとして先行発表された「LET ME ROLL」は最初からアルバムのリード・チューンにしようと考えていたんですか。
K:結果的にそうなった感じだね。「REAL DEAL ROCK AND ROLL」か「LET ME ROLL」がリードになるんだろうなと漠然と思ってはいたけど。「LET ME ROLL」みたいに溜めの効いたスローな曲をシングルにして意表を突きたかったところはあるかな。
──トミーさんは「今夜はビート・クレイジー」、バイクボーイさんは「ヘイ!リトル・リッチ・ガール」でそれぞれリード・ヴォーカルを執っていますが、どちらも持ち味が良く出ていますね。
T:「今夜はビート・クレイジー」は途中でコージーが唄ってるんだけど、あれは俺たちにとって王道っちゃ王道って言うか、昔やってたバンド(ローリー)っぽい感じって言うか(笑)。
K:どこがどう王道なんだよ!? って話だよね(笑)。俺とトミーがやってたバンドもそうだし、バイクボーイがやってたバンド(スカッツ)もそうだし、ヴォーカルが入れ替わって唄う曲がよくあったんだよ。「今夜はビート・クレイジー」の俺が唄うパートは最初なかったんだけど、何か普通だなと思って、その場で即興で作ってみた。ちなみにあの曲はVOXオルガンのコンチネンタルを使ってるんだよね。VOXオルガンでジャガーはよく見るけど、コンチネンタルは珍しいんだよ。
──ああ、あの音色には心底シビレますよね。ミッキー・スリム・マック(伊東ミキオ)さんによる名演のひとつだと思います。
T:ホントにね。チープさもあって凄くいい。
K:あれこそ本物のオルガンの音なんだよ。今回はホントにお金を掛けたよねぇ、ミッキーの楽器には(笑)。調味料にもの凄く投資をしたって言うかさ(笑)。でも、あのオルガンの音色に触発されてBメロの俺が唄うパートを作れたんだよね。
──バイクボーイさんの歌録りは如何でしたか。
B:やっぱり難しかったですねぇ…。いつも通りフジー・マック(藤井セイジ)に歌唱指導をして頂きまして。僕はどうしてもフラットに唄いがちなので、強弱の波を付けるようにといろいろ教わりました。「そのフレーズの2文字目を上げて唄ってみよう」みたいな感じで。
T:フジー・マックは後輩のバイクボーイには優しいんだよね。
B:あと、「歌録りする日の朝から発声練習をしてみなさい」とか(笑)。朝起きた時から自分が出せる一番低い声と一番高い声を交互に出して、発声しやすくするっていう。
K:それ、ホントに効果があったのかよ!?(笑)
T:でも、今回はいつもより早く歌入れができたんじゃない?
K:そりゃ3分にも満たない曲に時間を多く掛けられないからね(笑)。
──トミーさんはフジーさんから歌唱指導を受けないんですか。
T:受けないね。タメだから「オマエには教えない、自分でやれ」みたいなところがあるんじゃないかな?(笑)