"ROCKA-ROLLA"2部作の制作過程を追った迫真のドキュメント・ムーヴィー『THE ROAD OF ROCKA-ROLLA』、過去10年分のカタログから厳選コンパイルしたベスト盤&PV集『ROCK'N-TWIST PARADE THE 10th ANNIVERSARY S.77〜S.87』、カリフォルニアで録音された炎のロックンロールEP盤『LET ME ROLL』に継ぐザ・マックショウのプレミアム・イヤー・リリース第4弾は、満を持しての新作フル・アルバムである。その名も『GREASY!』。ヴィンテージ機材を使った全編ノン・デジタルのアナログ・テープ一発録音という"ROCKA-ROLLA"2部作の手法を受け継ぎつつも、カリフォルニアの名門スタジオ「サンセット・サウンド」特有の臨場感に溢れた音は本作ならではの醍醐味と言えるだろう。
古今東西のロックの名作を数多く生み出してきた同スタジオでのヴィヴィッドかつエキサイティングなセッションは、現地のエンジニアも「これこそ本物のロックンロールだ」と手放しで称賛するほどのハイ・クオリティ。これはつまり、時代と逆行するような手法と流儀を頑なに貫き通してきた彼らの純国産ロックンロールが本国アメリカからもお墨付きを得たということである。愚直なまでに心血を注いで体現された本物のロックンロールは如何にして生まれたのか。また、なぜ彼らは敢えて荒野を突き進むようなやり方で貪欲に創作活動を続けるのか。答えはこのインタビューの中にある。困難の中にこそチャンスが眠っていることを熟知した彼らは、今日もまた血気にはやるだけの全力疾走を続けるのだ。(interview:椎名宗之)
帰国後に聴いたマスター・テープの違和感
──先月ここ(ロックスヴィル・スタジオ・ワン)へお邪魔させて頂いた時は、まだアルバムのミックス作業の真っ只中でしたよね。
TOMMY MACK(以下、T):いつものことだけど、今回もかなりの突貫工事状態だったしね(笑)。
KOZZY MACK(以下、K):(ジャケットを指さしながら)俺たちの後ろにまだ車がなかった頃だから(笑)。向こうでやったラフ・ミックスでも充分だと思ってたんだけど、こっちへ帰ってテープを聴き返したらイメージが全然違ったんだよ。機材や卓、録った部屋の違いもあるから同じように聴こえないのは当然なんだけどさ。
T:空気感が全然違ったよね。
K:そう、空気の鳴りが全然違った。それで描いてたイメージに近づけるために自分たちの持ってる機材を使ってミックスすることにしたんだけど、その準備にけっこう時間が掛かってね。テープの規格も向こうとは違うし、電気の周波数の違いもあるので、何ヶ所かスタジオを回ってテープの音質を整えてからここで作業を始めたわけ。
──最後の最後まで丹念な作業にならざるを得なかった、と。
K:まぁ、レコーディングの行程って従来そういうものだからね。今回は自分でマスター・テープを持ち帰ってきたんだよ。録ったマルチ・テープが8本あって、曲だけで切ってまとめてもらったんだけど、それを手で持って帰ってきたんだよね。空港でも「これはX線を通さないでくれ」って係員にお願いしてさ。
BIKE BOY(以下、B):通したら全部消えちゃいますからね。
K:サンセット・サウンドのスタッフは「空港で言えば分かるから」って言ってたし、俺たちも前にそういう経験があったから要領を得ていたんだけど、テープだって言っても若い係員には分かってもらえなかったね。「ミュージック・テープって何?」みたいな感じで(笑)。
B:今どきテープって! っていう(笑)。
K:できるだけ年輩の係員に言えって聞いていたのでそうしたら、ちゃんと理解してくれて手順を教えてくれたけどね。でも、チェックした若い係員はテープの存在自体を理解してなかった。「これに音が入ってるの?」って訊かれたからね(笑)。
──そんな苦労の甲斐もあって、『GREASY!』の音の鳴りは過去随一ですよね。“ROCKA-ROLLA”2部作の真に迫りつつも端正な音像も素晴らしかったですが、今回はそのニュアンスを受け継ぎながら、全体的にセッション色が強くて適度に粗野な感じもあるじゃないですか。曲の頭にカウントが入っていたり、意図的にノイズが残されていたり、メンバーの息遣いまでもが感じ取れる臨場感に溢れた音作りに仕上がっていますよね。
K:そこは狙った部分なんだよ。名門のスタジオだから凄く綺麗に音を作ってくれたんだけど、ラフ・ミックスを聴き返したらちょっと綺麗すぎるかなと思ってさ。もともと入ってる音はもっとワイルドだったし、自分なりに頑張って音を戻した感じだね。
T:基本的に元がいい音だから、ちょっと手を加えただけでもかなり理想的な音になったよね。
K:しかも、向こうのエンジニアが残してくれたキューシート(マルチトラックのレコーダーの各チャンネルに何が録音されているかを記した表のこと)が的確でさ。タムとフロアタムがここに入ってるから、あまり左右に振るなみたいなことが英語で書いてあるわけ。恐らくライヴ感が出なくなるからってことなんだろうね。センターにマイクが立ってたし、ステレオにすると位相が悪くなるから。昔はいろんなエンジニアが携わって、いろんな所にテープが回っていったから、そういう説明書きが必要だったんだと思う。そのキューシートを見ただけでも「おお、本物だ!」って感動したよね。
T:まぁ、英語だから何て書いてあるんだろう? っていうのもけっこうあったけど(笑)。
K:コーラスも「Cho」とは書いてなくて、「B.G.V.」だったからね。「Back Ground Vocal」の略で。
──初回限定盤の特典DVDを見て意外だったんですけど、サンセット・サウンドってそんなに大きなスタジオじゃないんですね。
K:うん。けっこうこぢんまりとした所だよね。
T:早稲田にあるAVACOスタジオのほうがでかいんじゃない?(笑)
K:よっぽどね(笑)。まぁ、日本のスタジオに比べたら部屋は大きいほうだけど、プロが使ってるような日本のスタジオはコントロール・ルームが異常に広いんだよね。あれは外人がびっくりするらしいよ。要は、スタッフを始めとしてレコード会社や広告代理店の人間、メンバーの家族とかレコーディングに直接関係のない人までいっぱい来るから広いっていうね。