磯谷直史(monokuro)、朱雀佑輝(NANANINE)、大坪徹志(hare-brained unity)によって、2011年春に結成された3ピースバンド・THE ANDS(ジ・アンズ)。60年代ブリティッシュロックや90年代オルタナティブロック、ブリットポップがバックグラウンドの彼らが提示した1st フルアルバム『FAB NOISE』は、全曲英詞の1曲平均3分以下という全ての無駄を削ぎ落としたサウンドを聴くことが出来る。また、今作は磯谷の地元福島にあるレーベル"Nomadic Records"からのリリースとなり、原点に戻り再び覚悟を決めて歩き出したと言える。
今回は『FAB NOISE』のリリースツアーを一緒に回る彼らが尊敬する先輩"wash?"の奥村 大(vocal&guitar)を迎え、7月16日新代田Live Bar Crossingでのライブ前に対談を行なった。ありがたい先輩の言葉を頂き彼らはきっと一回りも二回りも成長を遂げてファイナルの下北沢SHELTERに戻ってくるのだろう。(interview:やまだともこ)
次に進むことしか考えていなかった
── RooftopにTHE ANDSとして登場するのは初めてなので、バンド結成の経緯からお話ししてもらえますか?
磯谷直史(vocal &guitar):昨年2月にmonokuroが活動休止を発表したんですけど、僕は次に進む事しか考えていなかったのですぐに頭を切り換えて、飲み仲間だった朱雀くんに声をかけて一緒にやることになりました。
朱雀佑輝(bass):数年前ロフトにライブを見に行った時の打ち上げで共通の知り合いに磯谷を紹介してもらって、そこからmonokuroのライブを見に行ったり飲みに行ったりするようになって、monokuroが活動休止したって聞いて、「なんかやるんだったらやるよ」という話をしていたんです。
磯谷:それでバンド活動休止と同時に大量に曲を書いて、早速2人でスタジオに入ったんだよね。
朱雀:その時はドラムがいないしパソコンも使えないから、リズムマシーンを使っていたんですけど、「めんどくさいね。ドラムいたほうが早くね?」って話になって。それで磯谷がヘアブレのイベントにDJで出ていた時に打ち上げでてっち(大坪)が話かけてきて。
大坪徹志(drums):2人とは交流があったんです。朱雀さんとは一緒に住んでいた時期もあって。もともとオルタナは好きだし、ヘアブレはまだその時活動をしていたんだけど、純粋に自分も混ざりたいなって思ったんです。それでデモを聴かせてもらって良かったから、「ヘアブレと同時進行は厳しいかもしれないけれどやります」ってスタジオに入って。
朱雀:好きなものが近いし、年代も近いし、てっちともうまくはまったので、この3人でやっていくことにしました。
磯谷:最初のスタジオに入って1ヶ月後にはレコーディングして、3カ月後の初ライブでは音源売り始めてました。
── 最初からしっくり来た、と?
磯谷:すごく音楽的でした。少なからず3人とも10年以上音楽活動をやってますから。monokuroと同じスリーピースという形態で人が変わるとどう変わるのかなって思っていたけど、新鮮なことばかりドキドキの連続で。
朱雀:でも、本当に磯谷が作る曲はわかりやすいし、キャッチーだし、やる方も気持ち良いというか、そういう意味でもすごく合わせやすいんです。磯谷が持ってきた曲を聴いて雰囲気を掴んで、みんなで20〜30分ぐらい合わせると形になっていくというか。
大坪:「これは8ビートで」みたいなところだけなんとなく話すぐらいで。
磯谷:良い曲は簡単にできる。
── お互いこういうのが好きなんじゃないかという雰囲気もわかってますし。
磯谷:共通言語がいっぱいあるんですよ。これはニルヴァーナの『about a girl』っぽくとか、スマパンの『Today』みたいに静と動を出そうとか、同世代なので聴いてきたバックグラウンドを共通言語として使いますね。
朱雀:ここはオアシスみたいとか。
磯谷:「オアシスのあれ! 曲名わからないけど、ほら! わかるでしょ?」って言うと、「ああ、あれね」っていう話になって(笑)。
── 長年連れ添った夫婦のような(笑)。でも結成してまだ1年ぐらいなんですよね。
磯谷:1年半ぐらいです。音を出す前からバンドのテーマというか、こういう感じで臨もうみたいなものは決まっていたので、音楽を作るのに苦労してないですね。
大坪:そこに関しては全然。
磯谷:ひとつバンドを越えて人間的にも色々学んだし、THE ANDSは3人年が1つ違いで、それも良い具合に作用してるかも。僕が一番年下で好き勝手な事やって、上の2人がが交通整理してる。
── 一番上は大坪さんでしたっけ?
朱雀:…僕です。
1st にはイメージのままに、やりたいことを全部詰め込んだ
── そして、8月8日の末広がりの日に1st アルバム『FAB NOISE』がリリースされます。デモに入った曲もあり新曲もあり、サウンドは勢いがありますし、先ほど言っていたバックグラウンドもよくわかる作品ですね。
磯谷:1stは勢いがやたら主張されているイメージがあるので、そのバンドの勢いのままに、やりたかったことを全部詰め込んだ感じですね。
朱雀:自分たちが好きなものを詰め込んだんです。こういう音楽が好きだし、こういうのがやりたいって。
── 大さんは今作を聴いていかがでしたか?
奥村:良いアルバムだと思います。世の中がこういう音ばかりになれば良いのにって思います。
朱雀:それはそれで偏ってますけど(笑)。
奥村:結成当初に売ってたデモも良かったし、今回は更に純度を高めた感じが好きですね。このアルバムは、1曲目(『Dakota』)の始まりのリフで勝ちじゃないですか? あとコーラスがすごい良い。コーラスって乱暴になりがちなんだけど、コーラスがちゃんとしてるから曲が締まってる。オルタナティブ的なものって自己発散で終わっちゃうことが多いんだけど、コーラスがしっかりしてるというのは受け取ってもらうことを高いレベルで意識しているということだから。
磯谷:コーラスが入ることで3×2=6人分の音が出せるって事じゃないですか。だからコーラスもサボっちゃダメだなって思ってます。
朱雀:今日はアコースティックのライブですけど、スタジオでもコーラスの練習を中心にしてましたから。
── このアルバムはギターもギュンギュン来てすごく良いと思いましたよ。
奥村:ギターの個性が一番にバーンと飛び込んでくる。キラキラしてて、綺麗なんだよな。それがすごく良い。エグイんだけど、最後にちゃんと食べやすくなってるというか。全然悪い意味じゃなくて。それが出来たら俺ももうちょっとラクなのにって思うよ(苦笑)。
── THE ANDSのサウンドはカラッとしてますよね。
奥村:それがメロディーとも相性が良いんですよ。
朱雀:磯谷が持ってくる曲はポップソングとしてもちゃんとした要素があって、ギターは激しさもメロディアスなものもあるんだけど、ワーッてやって終わりじゃなくて、ちゃんとポップソングとして成立してる。
奥村:ポップは大事だよね。
── 英語はわからないけれど、鼻歌で歌いたくなりましたよ。
朱雀:だから若い人にも聴いて欲しいんです。自分らが20歳ぐらいの時に洋楽を聴いてかっこいいって思ったような感覚を、THE ANDSを聴いて自由な感じがいいねとか、ライブに行きたいとか思ってもらえると良いなって思います。ライブはライブで熱量もあるし。
奥村:熱量あるね。首大丈夫かなって思うよ。
朱雀:僕今年33なんですけど、2日後ぐらいに痛みが来ます(笑)。ライブならではの音の迫力もあるので、そういうのも楽しいと思います。