我がロフトプロジェクトが擁するインディペンデント・レーベル"CRUX"に所属する三大バンド──a flood of circle、The John's Guerrilla、WHITE ASHが奇しくも今月の同時期に新作をそれぞれ発表する。こよなく愛するブルースを分母に置いて常に最新鋭のロックンロールをアップデートし続ける者、ゼロ年代以降の欧米のオルタナティブ・ミュージックのエッセンスを携えながら類い希なハイブリッド感覚で未曾有のグルーブを紡ぎ出す者、ガレージとサイケデリックを大胆に咀嚼しつつ聴き手の魂を覚醒させるべくアジテートする者。三者三様、志す音楽性も個性も容姿もまるで異なるものの、ストリートに根差したロフトというライブハウスのフレームに収まった途端に不思議と親和性が生まれるから面白い。それはつまり、変化を恐れずイノベーターであり続ける挑戦者の感覚をこの三者が共有しているからだろう。ロフトが一貫して支持してきたのは、彼らのように退路を断って音楽と対峙するひたむきな表現者たちなのである。
a flood of circleの佐々木亮介、WHITE ASHののび太、The John's GuerrillaのLeoというフロントマン三者が一堂に会したこの鼎談は、さる6月14日にロフトプラスワンで行なわれた『Rooftop presents"Rooftop公開対談2012年7月号編 ─弾き語りもあるよ─"』の模様を再構成したものだ。来月18日にはこの三組が総出演するタワーレコード新宿店屋上(まさに"ルーフトップ"!)での招待制ライブも開催されるので、その序奏としてこのまたとないインタビュー記事を堪能して頂きたい。(interview:椎名宗之+やまだともこ)
何かよく分からないけど格好いい!
──確かに(笑)。3人は同世代なんですよね。
Leo:歳は近いですね。
亮介:のび太だけは違うみたいですけど(笑)。
のび太:僕は永遠の小学5年生ですから!
亮介:……これ、あまり掘り下げないほうがいいのかな(笑)。
──バンドの活動歴が一番長いのは?
亮介:俺らは今6年目ですね。
のび太:僕らも6年くらいです。
Leo:ウチは8年目くらいなので、この中では一番長いのかな。
亮介:顔も一番先輩っぽいしね(笑)。
のび太:うん、ちょっと怖い感じ(笑)。
──この3組が奇しくも同時期に新作を発表するということで。まず、a flood of circle(以下、afoc)がライブDVD『LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL The Movie ─見る前に跳べ、何度でも─』を7月25日に発表すると。
亮介:去年の11月に『LOVE IS LIKE A ROCK’N’ROLL』というアルバムを出して、2月から19本のワンマン・ツアーをやったんですけど、4月にSHIBUYA-AXでやったツアー・ファイナルの模様をDVD化したんです。
──WHITE ASH(以下、WA)は待望のファースト・フル・アルバム『Quit or Quiet』を遂に発表しますね。
のび太:去年の11月に出した『Paranoia』、今年の2月に出した『Kiddie』というシングルを含めた全11曲入りのファースト・フル・アルバムを7月4日にリリースします。
──そしてThe John's Guerrilla(以下、TJG)は、WAのアルバムと同じ日にセカンド・ミニ・アルバム『ALL POWER TO THE PEOPLE』を発表、と。
Leo:『UNITED DIAMOND』から2年振りの新作ですね。全6曲、どれも自信作です。
のび太:リリースが重なったのは狙いなんですかね?
亮介:何か策略めいたものを感じなくもないけど(笑)。普段は全然会うこともないし、連絡も取らないけど、どことなく結束感はあるよね。WAが最初のCD(ファースト・ミニ・アルバム『On The Other Hand, The Russia Is...』)を出した時のレコ発はTJGが対バンで、俺も片平実さんと一緒にDJをやらせてもらったし。
のび太:2年前の10月にクラブ・エイジアでやったレコ発ですね。
──のび太さんはafocのツアー・ファイナルをご覧になっていましたよね。
のび太:はい。DVDはまだ見てないですけど、ホントの公演は見に行きました。
亮介:打ち上げにも来てくれて、「afocをブッ潰す!」って言ってたよね?(笑)
のび太:いや、言ってない言ってない! 僕は言ってないです!
亮介:言ったのはギターの山さんだっけ? まぁ、のび太が言ったことにしておこう(笑)。
のび太:そんな、僕たちを悪者にしないで下さいよ!
──お互いのことをそれぞれどう見ていますか。
Leo:俺を含めて欲望に忠実って言うか、表現欲が高いって言うか。バンドでやりたいことがそれぞれ明確ですよね。
亮介:この公開インタビューの前に新宿ロフトで3人揃って写真を撮ったんですけど、見ての通りバラバラじゃないですか。だけど、ロックの伝統の地であるロフトで顔を揃えると、何となく波長が合う気がしましたね。まぁ、実際の写真を見たらみんな笑うと思うけど(笑)。
──革ジャンにヒップホップにのび太ですもんね(笑)。
のび太:でも、今日はこれでも僕なりに精一杯のロック感を出したつもりなんですけどねぇ……。
──今、会場が失笑の渦に巻き込まれていますが(笑)。
亮介:WAは、「今度こういうバンドがCDを出すから聴いてみてよ」って言われて聴いたのが最初なんですよ。最初は「ギター&ボーカル:のび太」って書いてある資料と写真を見て、「こいつは一体どんな音楽をやってるんだろう!?」と思ったんだけど(笑)、ファースト・ミニ・アルバムの時点ですでにメチャクチャ格好良かった。だから多分、俺は今日ここにいる誰よりもいち早くフル・アルバムを待っていた人間なんじゃないかと思います。
のび太:そんなこと今初めて聞いたけど(笑)、素直に嬉しいですね。
亮介:さっきも楽屋で「BLACK BELLESの影響があるよね?」とかのび太と話していて、彼らのやろうとしていることが分かるし、初のフル・アルバムは期待通りの出来でしたね。さすがのび太さん! って感じですよ。
のび太:いやいやいやいや……。
Leo:WAは音が凄くオシャレだよね、こんな身なりだけど(笑)。
亮介:WAの曲って、最初に聴くと何語で唄ってるのかよく分からないでしょ? アルバム作りに向けて英語にするか日本語にするか決めてくるのかと思いきや、そのままのスタイルで来たから「ヨシッ!」と思って。歌詞の意味が分からなくても、ほとばしる熱さはちゃんと感じるし。
のび太:やっぱり、「何かよく分からないけど格好いい!」っていうのをこのファースト・フル・アルバムで一番形にしたかったんですよ。
亮介:格好いいって、それを自分で言っちゃうのが凄いよね(笑)。
──すっかり自画自賛ですね(笑)。
亮介:TJGはデビューも近かったし、メンバーも歳が近いからライバルみたいに感じているところがあって、「TJGには負けたくない」っていう気持ちがずっとあったんですよ。
Leo:それは俺も一緒。
亮介:アイゴンさん(會田茂一)をプロデューサーに迎えた『Peace』とかが入ってた『UNITED DIAMOND』は転換作だったでしょ? その次にどう来るのかなと思ってたんだけど、今度のミニ・アルバムは凄く攻めてるよね。俺はこのワルいLeo君を見たかったんだよ! って言うか。……何か俺、褒めてばかりでイヤだなぁ(笑)。