音楽を始めた時の衝動や原点に立ち返るべき
──『Jails』や『Paranoia』、『Kiddie』といった畳み掛けるような疾走チューンももちろん素晴らしいんですけど、不穏さを感じさせるメランコリック・ナンバーの『Elsie Cries Quietly』、マーチング・ドラムをフィーチャーしたミディアム・テンポの『Deadmans On The Dancefloor』、ファンクの要素と泣きのメロディが混在した『Orchid』、ブルージーなテイストとソフト・ロックを彷彿とさせる甘美なメロディが光る『Giant Skips』といった楽曲の出来が秀逸で、その引き出しの多さにバンドの可能性を強く感じたんですよね。
のび太:自分たちでもバラエティに富んだ楽曲が揃ったなぁと感じています。僕らは4人の聴く音楽がバラバラで、性格もバラバラで。共通点と言えば負けず嫌いなところくらいなんですけど。今までは僕がほとんど曲を作っていたところを、今作は4人で作り上げたっていう意識が強いんです。4人合わさったら引き出しの数はこれからも増えていくと思います。
──決して一筋縄では行かない構成の楽曲がWAの持ち味であることを改めて感じさせるアルバムですよね。
のび太:負けず嫌いだし、ちょっとひねくれてるんです。作っていても演奏していても分かりやすくノレる曲はもちろん楽しいんですけど、「何かこれ面白いな」ってニヤけちゃうような曲が好きなんですよね。最近はその辺のバランスをちゃんと取りたいと思っています。
──そういったバランス感覚は、TJGの新作からも窺えますよね。
Leo:「変化」が今回のアルバムのテーマだったんです。前作から2年を掛けて「変化とは何か?」ということをずっと考え続けてきたんですよ。たとえば、サナギが蝶に変化する瞬間ってあるじゃないですか。それは見た目の上では明確な変化だけれども、サナギのままでいたつもりがある日突然蝶になって飛んだのか、空を目指して頑張って変化を遂げたのか、考えれば考えるほどよく分からなくなる。人間にも絶えず変化はあって、7年経てば全部の細胞が生まれ変わる。となると、その中で変わらないものとは一体何なのか? そうやって突き詰めて考えて出した答えが『STAY COOL』、つまり「ありのままであり続けること」だったんですよね。
──スタジオファミリアで培った経験も楽曲に反映されているんでしょうね。
Leo:もちろん。ロックだけではなくヒップホップ、レゲエ、ブラックといったいろんなジャンルの音楽好きがスタジオに集まるようになって、彼らは音楽と生活が自然と密着していたんですよ。そこで音楽と生活の結び付きについて改めて考えるようになったんですよね。今は無料ダウンロードのせいでCDが売れないとかライブの集客が減ったとかいろいろなことが言われているけど、音楽とは本来お金になることがすべてじゃなくて、ただ必然的に鳴らされていたものだったはずなんです。近所の悪ガキどもがフラストレーションの溜まる生活の中で歌を唄いたくて、楽器を演奏したくてバンドを組んで、数十人でもライブを見てくれる人たちがいればそれで充分だったし、それがすべての基本だった。今はそうやって音楽を始めた時の衝動や原点みたいなものにもう一度立ち返るべきなんじゃないかと思いますね。
亮介:凄く正しい意見だと思う。ボブ・ディランがインタビューで、「無料でダウンロードされることで音楽の価値が下がっているように思いますが、どう感じていますか?」と訊かれた時にこう答えているんだよ。「音楽なんてもともと無価値だ」って。今のLeo君の話に似てると俺は思った。3人ともロフトっていうロックンロールの聖地を活動の基盤にしているし、自分の心に正直にやりたいことをやっているところもこの3人の共通点なんじゃないかな。Leo君みたいにストレートなメッセージを歌詞に込めたっていいし、のび太みたいに何を唄ってるのかよく分からないけどギターを掻き鳴らしてガツンとステージをキメること以上のメッセージはないだろうし、音楽を始めるスタート地点はLeo君が言うように「やりたいからやるだけ」だよね。CD代がいくら、チケット代がいくらっていうのはその後の話だから。俺たちがやっていることはお金がどうこうで始まったことじゃないしね。まぁとにかく、今日ここへ来ているお客さんやニコ生を見ているのはホントにロックンロールが好きな人たちだと思うし、俺は勝手に信頼しているので、WAとTJGの新しいCDをどうか……あ、ヤバイ、これじゃ「よろしくお願いします」になっちゃうね。それは言いたくないな(笑)。
のび太:じゃあ代わりに僕が言いましょうか? (声を張り上げて)WAとTJGの新しいCDをよろしくお願いしまーす! あと、afocのDVDも!
(客席から万雷の拍手)
Leo:何か俺と佐々木君、ダシに使われてない?(笑)
亮介:今日は結局、のび太がオイシイだけのような気がするなぁ(笑)。
photo by:Rina Kihara