自分なりのライヴの形を作っていきたい
──3月3日から全国各地でインストア・イヴェントを敢行されていますが、今回は大阪や福岡にも足を伸ばすそうで。
柴田:大阪や福岡は初なので嬉しいですね。大阪は今までキャンペーンだけで、柴田個人のインストアは初めてなんです。
──そして、今のところ各地で雨には随分と悩まされていますが(笑)。
柴田:日曜日は晴れるんですけど、3月3日以外の土曜日はすべて雨でしたからね。[編註:取材翌日の3月31日(土)は雨に加えて暴風にも見舞われた]
──まぁ、関東近郊では2月半ばから3月にかけて7週間連続で土曜日が雨でしたからねぇ…。
柴田:ミニ・ライヴも1回雨で中止になったんですよ。メロンの頃からライヴ当日は雨が降ることが多くて、ソロになってからも天気が味方してくれないんですよ(笑)。ある意味、雨って浄化作用のあるものだから、柴田がいる所はパワースポットなんだと思うようにしたんです。そうしたら、ツイッターでファンの方に「歩くパワースポットだね」と書かれたんですよ(笑)。
──インストア・イヴェントの手応えはどうですか。柴田さんのファン以外の方も見ることになるわけですけど。
柴田:そういう方に見て頂くのを期待してやっているんですが、何せ天気が悪いものですから…。柴田のことを応援して下さっている方は雨に関係なく会いに来てくれるじゃないですか。でも天気が悪いと、そもそも傘をさして出歩く機会も減るだろうし、ショッピングモールへ行くのも晴れてからだと思うんですよね。オープンスペースで「初めまして! 柴田あゆみです!」みたいな感じでやらせて頂いたのが今のところ1回しかないんですよ。
──せっかく柴田BANDもいることだし、ぼちぼち新宿ロフトみたいなライヴハウスでワンマン・ライヴをやって頂きたいですね。[編註:このインタビューはワンマン・ライヴの開催が決定する前に行なわれた]
柴田:是非やりたいです。シークレット・バースデー・イヴェントはCDを購入して下さった方から抽選でご招待したんですけど、今度は「今の柴田を見て下さい!」っていう感じのライヴを堂々とやりたいんですよ。
──配信限定の『GENKI』を合わせれば、これで公式のレパートリーは8曲じゃないですか。それにラジオで鍛えたMCを加えれば充分ワンマンができますよ。
柴田:「今年はもう何本見たんだろう?」っていうくらい、最近はいろんな方のライヴを見させて頂いているんですよ。そこで勉強になるのが、演奏の時間とトークの時間のバランスなんです。そのバランスが非常に大事だなと思いました。長い時間椅子に座っているわけでもないし、ステージに立つ人のことを知らないケースだってあるし、ライヴをやる上での構成が凄く大事なんだなって。ライヴの進め方やテンションの持っていき方も凄く勉強になっていますね。
──特に勉強になった歌手やバンドはいますか。
柴田:たくさんいらっしゃいますよ。お客さんといろんなものを共有してきているからこそ生まれる絆みたいなものを感じたり、「無理に喋ろうなんて、別にそんな決まりはないじゃないか」と思ったり。何通りもライヴの在り方があるんだなと改めて勉強させて頂きました。
──喋りがすべって照明が落ちるライヴがあってもいいでしょうし(笑)。
柴田:それは避けたいですけど(笑)。でも、私もいろんな経験を積み重ねて場数を踏んで、自分なりのライヴの形を作っていけばいいんだなと思って。いろんな方のライヴを見ると素直にそう思えるんですよ。だからこそ、いろんなジャンルのライヴでもちゃんと足を運んで勉強したいんです。絶対無駄にならないし、そこで得たものは自分のライヴにも必ず反映されますから。だから今は凄く視野が広がっていますね。
笑いながら一瞬一瞬を大事に生きる
──ドキュメンタリーを見ても、柴田さんは歌もMCも堂々としているじゃないですか。だから「間が持たないから無理に喋らなきゃ」っていうのは意外ですね。ライヴに対して真摯であるがゆえの不安要素はもちろんあるんでしょうけど。
柴田:ステージの上で不安要素を出したら負けだと思っていますから。それは今ソロで活動しているからでしょうね。サポート・メンバーの方もいらっしゃいますけど、結局は私ひとりだし、すべて自分自身に跳ね返ってくるし、そんな甘ったれたことを言ってちゃダメだと思うんです。
──そろそろフル・アルバムを出してもいい頃合いだと思うんですが、漠然と構想はありますか。
柴田:どんな楽曲であれ、歌詞はストレートで分かりやすいものにしたいですね。老若男女関係なく、誰でも気軽に口ずさめるような曲を揃えたいです。インストア・イヴェントをやっていても、上はお爺ちゃん・お婆ちゃんから下は小さいお子さんまでが立ち止まって私の歌を聴いて下さるんですよ。そんな光景を見ていると余計に幅広い年齢層に聴いて頂ける歌を唄いたいんですよね。親しみやすいポップ・ソングやノリの良いロック調の曲もあれば優しいバラードもあるような、いろんな色合いの曲が揃ったアルバムを作りたいです。メロン記念日のレパートリーはまさにそういう幅広さがあったし、今度はそれがひとりでも表現できるようにもっと成長したいですね。
──NACK5のラジオ番組『STROBE NIGHT!』火曜日でパーソナリティを務めている経験も歌に活きているように思うのですが、如何ですか。
柴田:1年やらせて頂いて、自分の中で変化はありましたね。自分が感じたことや考えていることをブログに書く時に、表現の幅が広がった気がします。たとえば一言に「凄い」と言ってもいろんなニュアンスの「凄い」があるし、どう「凄い」のかを具体的に伝えるようになりました。「美味しい」もただ「美味しい」じゃなくて、どこがどういうふうに「美味しい」のかを書くようになって、いろんな表現方法が身についたと思います。あと、インストア・イヴェントで30分の持ち時間があるとして、体内時計が働いて時間を読めるようになりましたね。「そろそろ歌に行ったほうがいいかな」とか「ここでトークしてみようかな」とか考えながら進めていって、終わった時点できっかり30分なんです。コメント録りもそうで、30秒、60秒、2〜3分といろいろ長さがあるんですけど、どれも指定の時間通りに話せるようになったんですよ。
──こうして話を伺っていても話術が磨かれてきたのがよく分かるし、ラジオ・パーソナリティはこれからも是非続けて頂きたいですね。
柴田:インストア・イヴェントにもラジオのリスナーさんが来て下さるんですよ。私のことはよく知らないけど、ラジオを聴いて来ましたという方も多くて、凄く嬉しいです。番組には10代の方からのメッセージもけっこう多くてとても嬉しいんですが、「そんなに遅くまで起きてて大丈夫?」ってちょっと思いますね(笑)。
──メロン記念日の解散以降、少しずつ蒔いてきた種がここへ来て花開いた感もあるし、さらなる飛躍を求めるためにも『セツナ』をひとりでも多くの人たちに広めたいですね。
柴田:今はそのことに専念したいです。いつも思うことですけど、今が一番大事なんですよ。大事だと思うから余計に怖さもありますしね。何事も一生懸命やればやるほど不安や怖さも比例してつきまとうもので、毎回「次はないぞ!」と自分に言い聞かせながらいろんなチャレンジをさせて頂いています。
──「もう船はないぞ!」(メロン記念日がデビューして3枚のシングルを出した後に当時のマネージャーから言われた言葉)と(笑)。
柴田:まさに(笑)。その言葉を改めて噛み締めていますね。
──でも、井上さんからもお墨付きを頂いたじゃないですか。「切なさや儚さを表現できる人はその時々を一生懸命に生きている人だ」って。
柴田:ライヴでもラジオでも、一瞬一瞬がとても儚いんですよ。だからこそ今この瞬間を大事にしなければと思うんです。井上さんから有り難いメッセージを頂いてから余計にそう思うようになりました。そんなせっかくの一瞬だったら笑っていたほうがいいよね、って。物事は考え方次第じゃないですか。「今日は辛いな」と思っていたら辛い1日のままだし、確かに辛いこともあるかもしれないけど、何かひとつでもいいことを探せばいい1日になるかもしれない。だったら笑ったもん勝ちじゃないかなと私は思うんですよ。逆境の時こそ朗らかに笑いながら、一瞬一瞬を大事に生きたいですね。