敢えて唄い直さなかった『ヒマワリ』
──『smile』には「楽しいもん勝ち そうでしょ?」という歌詞がありますが、これは柴田さんの信条なんでしょうか。
柴田:笑ったもん勝ちだなとはいつも思っていますね。いつも朗らかに笑っている人のところに人は集まってくると思うし、「笑う門には福来たる」って言うじゃないですか。すぐにではないかもしれないけど、笑っていれば結果的にいいことが起こると私は信じています。もちろん辛い日だってあるし、毎日は笑っていられないかもしれないけど、何かしら笑えることや幸せなことが普段の生活の中には必ずあると思うので、私はそれを進んで見つけたいんですよ。
──『believe』のように単独で歌詞を書き上げたいとは思いませんでしたか?
柴田:もちろんありましたよ。絶対にひとりで書くんだ! と思っていました。でも、アップテンポの曲の歌詞を書くのは初めてだったので、『Love Me More』でもお世話になった河合さんにアドバイスをいただきながら、共作という形でお手伝をして頂きました。河合さんのお陰でライヴで進化しそうな曲になりましたね。
──ライヴと言えば、アコースティック・ギターを基調としたミディアム・バラードの『ヒマワリ』はすでにライヴで披露されている曲ですよね。
柴田:そうですね。11月のソロ・デビューの前から温めていた曲です。ちょうど去年の今頃にレコーディングした曲なんですよ。
──震災の直後ですか。
柴田:計画停電があった頃ですね。あれから1年近く経って唄い方も変わってきたと思ったし、シングルとして出すにあたってホントは唄い直したかったんです。今ならもっと上手く唄える自信もあったので。
──でも、敢えて1年前に唄ったものが収録されていると。
柴田:あの時特有の空気感、私の思いや感情が去年レコーディングした『ヒマワリ』には詰まっていて、それは今再現できることではないですから。「明日に続く この道/走り抜けて 諦めないで」という歌詞の一節は震災の直後だったから余計に胸に響いたし、私はこの曲を唄わなきゃいけない義務があると思ったんです。そういうこともあって、唄い直しはせずにそのままの音源を入れることにしたんですよ。どんな曲でもそうですけど、完璧に唄い込むからいいってわけじゃなくて、どれだけ気持ちを込めて唄えるかが大事なことなんじゃないかなと思いますね。
──『believe』は幅広い曲調の楽曲が収録されていてソロ・シンガーとしての可能性を感じられましたけど、『セツナ』の収録曲には柴田さんが唄う必然性を強く感じますね。その意味でも前作以上にまとまりがいいと思います。
柴田:私もそう思います。ちゃんと進化しているのを自分でも手応えとして感じられましたし。
15時間ぶっ通しで撮影した『セツナ』のPV
──表現者としての強いこだわりは『セツナ』のメイキング・ビデオからも窺えました。朝まで15時間ぶっ通しで撮影に臨んで、納得の行く演技ができるまで何度も撮り直しをしていたじゃないですか。よく集中力が途切れないものだなと思って。
柴田:そういうのは私、大丈夫なんです。逆に、何で集中力が途切れるんだろう? と思いますね。だって、途中に必ず休憩が入るし、ずっと撮影しているわけじゃないですし。
──でも、何度も同じ歌を当て振りするのは疲れませんか。
柴田:唄っているのが大好きですから。ただ、7時間くらい唄っていたので、明け方のコメントは声が嗄れましたね(笑)。自分でもびっくりするくらい声がガラガラでした(笑)。レコーディングの日も、実は声が本調子じゃなくて、午後からのレコーディングの前に咽喉科へ行ったんですよ。そうしたら、予約をしていないと午前中の検診は無理だと言われて。ヤバイ! どうしよう!? と思って、塩を使って鼻うがいをしたんです(笑)。
──その悲惨な状況が一番の「セツナ」じゃないですか(笑)。
柴田:だから私、スタジオでティッシュを持っているんですよね。ドキュメンタリーを見てもらえば分かるんですけど。
──メイキング・ビデオには、撮影の合間にドラムを練習するシーンもありましたね。
柴田:練習と言うか、あれは遊びですよ。
──でも、シークレット・バースデー・イヴェントでは数小節とは言えドラム演奏をしっかりと披露していたじゃないですか。
柴田:リハーサルの休憩時間になると、ドラムセットの前に座って叩いていたんですよ。私がいろいろと質問するものだから、ドラムの方の休憩時間はありませんでしたね(笑)。
──柴田さんが叩くと、ベースもギターも音合わせしないわけにもいかないでしょうしね(笑)。
柴田:そうなんですよ。休憩の時じゃないと遊べないじゃないですか。でも、そこで私が遊びで叩くからみんなの休憩を奪うことになってしまって(笑)。
──あれだけ楽しそうにドラムを叩いていれば、周りも止められないでしょう(笑)。
柴田:叩くのが楽しいんですよ。私、右利きなんですけど、ドラムを叩く時は左利きになるんです。両手を交差させずにドラムセットを叩くオープンハンドっていう奏法を学んだんですが、そのスタイルがリンゴ・スターさんと一緒みたいで。なので、そのスタイルを変えないで、リンゴ・スターさんを目指して頑張ってみようかなと思って(笑)。
──リズム感が養われると、ヴォーカルにもいい作用がもたらされるでしょうね。
柴田:自分でドラムを叩くとリズムの強弱のポイントが分かるし、それは歌にも活かされるんですよね。だから一見遊びのようで、決して無駄じゃないんだなと思います。今までは楽器屋さんの前を通ってもスルーだったんですけど、ドラムセットがあると気になって眺めるようになりました。マイ・スティックもスタッフさんに買って頂いたし(笑)。電気屋さんを回ってワクワクする感覚が楽器屋さんにも出てきましたね。それが最近一番の変化です。
──それは大きな変化じゃないですか。
柴田:スティックにもいろんなタイプがあって、色や形も違うし、有名なドラマーのモデルがあったりして、そういうのを見ているだけでも面白いんですよね。電化製品で言えばテレビの規格の違いみたいな感じで(笑)。些細なことかもしれませんけど、そういう興味の変化はいいことだなと思って。
──やっぱり柴田BANDを始動させたことが大きいんですかね。
柴田:そうですね。それはあると思います。
──それにしても、あれだけラジオやブログで柴田BANDに代わるバンド名を募集していたのに、最終的に柴田BANDに落ち着いたのは如何にも柴田さんらしいと言いますか(笑)。
柴田:結局、柴田BANDが一番分かりやすく皆さんに伝わると思ったんですよね。