9月にワンコインシングル『I LOVE YOU』と『Blood Red Shoes』を2枚同時リリースしたばかりのa flood of circleから、早くも4枚目のフルアルバム『LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL』が届けられた。今作は現メンバーになってからの初のフルアルバムであり、「ロックバンドを聴くんだったら、今年のアルバムでこれが一番正解だと思っています」と、vo.&guの佐々木亮介が胸を張って言うほど、自信のある作品。紆余曲折し、模索しながら、それでも彼らは信念を持って前に進み、バンドと音楽を転がし続けている。彼らの真っ直ぐな言葉を、サウンドを、受け止めて欲しい。そして、佐々木亮介のひと言ひと言に込められた魂の熱さを感じて欲しい。(interview:やまだともこ)
重さを払拭したかった
── 今回リリースされる『LOVE IS LIKE A ROCK'N'ROLL』は、これまでの作品と比べると随分変化がありましたね。メンバーの変化もありますが、良い意味で隙のあるサウンドに変わったような気がしたんです。
佐々木:今までは隙がなんだかわからなかった部分もありましたけど、これまでの作品の中で一番軽快ですよね。軽さをキーワードにして作ったわけじゃないですけど、全く違う顔をしていると思います。特に前作の『ZOOMANITY』は、言葉や歌詞の書き方もいろいろ試して軽い曲も入っていたんだけど、ジャケットの雰囲気も含めて、全体を見ると妙に重さがあって、今回はその重さを払拭したかった。シングルの時の話と同じになっちゃうんですけど、大事なメッセージを込めたら、その分相手には軽く渡したいなというのがあって、どの曲にも行き渡っているかなと。それが今までと決定的に違うポイントです。
── 前作を出した23歳の頃って若さ故にかっこつけたかったりするじゃないですか。それが良い意味で取れてきた気もしますし。
佐々木:古いロックが好きだし、ブルースは大人がやってるものだという意識もあって背伸びはしていたと思います。今も完全じゃないし、余裕でもないけれど、やりたいこととやってることがリンクし始めているのかなと思います。
── 年を重ねるごとに面白くなって来ていますね。
佐々木:“ロックンロール”という言葉をタイトルに入れる自信がついたのもあるし、姉さん(HISAYO)が入ったのもすごく大きいですけど、曲を書いてきた歴史の中の必然的な変化と、メンバー全員前を向いてやれますということがあいまった感じですね。レコーディングは今年の2月ぐらいから毎月2曲ずつぐらい録ったんですけど、自分を俯瞰する時間があって、ロックンロールの3コードでシャッフルでという曲が多いんだけど、表情は豊かになっていると思うし、「『PARADOX PARADE』ぐらいバリエーションを感じる」って言ってくれる人もいました。つまらないアルバムにはなってないと思います。
── 2枚同時リリースした『I LOVE YOU』と『Blood Red Shoes』が、このアルバムの導入部としても役割を果たしている感じもありますね。
佐々木:シングルのモードには近くなったと思います。曲調や表情はいろんなものが入ったと思いますけど、根本的なスタンスは、「今の日本にはこのロックンロールが必要だと思うんですけど」という11曲を選びました。やっぱり『I LOVE YOU』と『Blood Red Shoes』という核になる曲ができた時点で、確証を得られた部分はありますよ。ロックのフォーマットの中でやってないことをどんどんやってみようって思えたから、『感光』の6/8拍子とか、『YU-REI Song』のアコギだけのものとか、悩むことはありましたけど、健康的な悩みというか、ストレスなく出来ました。
── 重さを払拭したかったとは言え、『感光』はafocの中でもすごく重たい雰囲気のある曲でしたが…。
佐々木:一番重いですよね(笑)。『感光』の歌詞は震災があった次の日の朝書いたんです。最後の「生きていて」という歌詞以外はほとんど変わってるんですけど。アルバムに入れる曲を並べた時に、軽さだけのアルバムになるのはちょっと違う。この軽さを持って曲を書けば今までと違う曲が出来るんじゃないかと話をして、この曲は今年中に歌わなきゃだめだって歌詞を書き直していったんです。「生きていて」にどう辿り着くかを考えて、宇宙っぽい視点から始まって、国から街の視点、最後に自分の視点、そして心までクローズアップして、「生きていて」に繋がるというストーリー。サウンドもアレンジもそういう順序で作ったし、伝えようという意志が入っている曲です。
── 壮大なサウンドですし、1曲の中にストーリーが刻まれてますし。
佐々木:前まではアルバム全曲にそれをやろうとしていたから重たかったんですよ。
── 先ほど話に出た『YU-REI Song』は、初めてこのアルバムを聴いた時に一番インパクトが強かったです。アコギで、こういうゆるさがある曲も作れるのかという衝撃もあって。
佐々木:『感光』をこねくり回しながら作っている時に、息抜きしようってアコギをなんとなく弾いたら『YU-REI Song』のコード進行が出てきて、「生きていて」の対比というわけではないんですが、“俺は幽霊”という過程から入る歌詞を書き始めて、詞の雰囲気から書いたところもあったので、尺も4/4にしては変わった尺になっているんです。考えすぎなかったから出来た歪さみたいなものもあって、テンションも家でポロポロとギターを弾いてる時のような声を張らない曲になったし、みんなに聴かせたら「いいじゃん」って。この曲があるから、他の曲もゆるく聴くチャンスがあると思ったし、『YU-REI Song』はロックの軽快さがあるということを証明した感じになれたなと思います。これやっていいんだなという発見もありましたし。
── シングルでリリースして、今作の1曲目と2曲目に置かれている『I LOVE YOU』『Blood Red Shoes』の、お客さんの反応はいかがですか?
佐々木:今までで一番良いんじゃないかなってぐらいです。出す度にちょっとずつみんなが認知してくれてるというのは実感としてあって、メンバーが変わるたびに悩んだりもしたけど、作品ごとの工夫はメンバーチェンジ関係なくずっとやってきたので、それが一歩ずつ証明されてる感じもしてます。チャートアクションが今までで一番良かったのは自信にもなっているし、来年2月から始まるワンマンツアーも含めて結果をちゃんと残せているようだったら良いなと思います。とくに『I LOVE YOU』はリリース前にライブでやった時から反応が良かったんです。新曲って、こっちも恐る恐るやるし、お客さんも恐る恐る聴くというのがよくあるんですけど、最初からみんなが踊ってくれるような、受け入れてもらえるなとすぐに思いました。この曲を『Blood Red Shoes』と2曲同時に出せたというのがすごく大事だと思っていて、CDは自分たちの一面を切り出して見てもらうしかないんですけど、色の違う2枚を出したことによってafocの多面性を知ってもらうチャンスでもあるんです。『Human License』とか『ZOOMANITY』もすごく真剣に書いているけど、小難しいと思われていたと思うし、最近はその辺が良い感じに力が抜けて来ているし、ライブでも伝わり方が軽くどうにか手渡そうという気持ちが届いているんじゃないかな。