“このために生きてるんだな”と実感するライヴでの一体感
雨宮:今回のイべントのタイトルは『バンギャル ア ゴーゴー』と言うんですけれども、皆さんはバンギャルのことをどう感じていますか? 応援しているファンのことをどう思っているのかが知りたいです。
猟牙:純粋に心から愛しい存在ですね。俺は元々ヴィジュアル系に限らずいろんな音楽が好きで、ステージに立つことにもの凄く憧れがあったキッズだったんですよ。今こうやってライヴをやれているのはファンのお陰だし、自分にファンがいてくれたら嬉しいっていうのはバンドをやる動機のひとつでもありますから。だから、BORNにとってファンは一番大切な存在じゃないですかね。
TAKA:うん、そういうことですね。
MAKI:僕もそう思います。
猟牙:ズルいなぁ、俺だけに喋らせて(笑)。
TAKA:まぁ、ホントにそうですよ。バンドに限らず、世の中にこれだけ多種多様の音楽がある中で、どこかに引っ掛かって自分たちのバンドを気に入ってくれるわけだから。バンギャルの人たちは一生懸命バイトとかをしてチケットを買って、休みの都合をつけてライヴハウスに足を運んでくれるわけでしょう? ライヴハウスという空間で出会えたこと自体が凄いですよね。自分たちの音楽を好きになってくれて、そこに膨大なエネルギーを費やしてくれるんだから最大の理解者だと思うし。
MAKI:かなりのライヴ本数をこなす中で毎回来てくれる人たちも多いので、仮に毎回同じセットリストでも違う感動を与えなくちゃいけないという気持ちが常にあるんですよ。僕自身、音楽が好きでライヴに通い続けていた時期があって、何回見てもいいものはいいわけです。ただ、それは見る者を飽きさせない演者側の努力の賜物なんですよね。客として通っていた頃はそれが判らなかったんです。自分がステージに立つようになって初めて、お客さんがずっと喜んでもらえるようなライヴをやり続けるのは難しいと痛感したんですよ。そういうことを知れたのはお客さんのお陰だし、今は常にお客さんの気持ちになって物事を考えていますね。
雨宮:皆さんもいち音楽ファンとしてライヴハウスに通っていた時期があったんですね。
猟牙:もちろんありましたよ、中学生の頃とか。
TAKA:俺は如何せん田舎のほうだったので、小さなホールでのコンサートだったりとか。みんなの話を聞いていて共通するのは、バンギャと同じく純粋にバンドが好きなキッズだったということですよね。ただのキッズから始まって、ステージに憧れを抱いて、今はこうしてステージに立つことができている。かつては今のお客さんと同じようにフロアにいたからこそ、ステージに立つことの凄さや責任感がよく判るんです。だからお客さんの気持ちがよく理解できるんですよね。
猟牙:ライヴのウリってステージに立つバンドを見ることだけじゃなくて、場内の一体感を含めて快感を得るものじゃないですか? 演じる側と見る側がひとつのものを共有して盛り上がる瞬間が理屈抜きで気持ちいい。それがキッズの頃に病み付きになったんですよ。ノッてる側がこれだけ楽しいんだったら、ノッてる側を操っているステージの上の人たちはどれだけ楽しいんだろう!? と思って。だから、10代の後半の頃から“音楽をやるしかない!”という気持ちがずっとありましたね。
雨宮:ステージの上はどれだけ気持ちがいいものなんですか? さぞ気持ちいいんだろうなぁ…と思いながらいつもライヴを見ているんです。もちろん見ているこっちも充分気持ちがいいんですけど。
TAKA:自分でステージに立ってみようと思ったことはないですか?
雨宮:昔、維新赤誠塾というバンドのヴォーカルをちょっとだけやっていたことはあります。ただ、それは愛国パンク・バンドだったので、どのライヴハウスも出入り禁止になってしまって(笑)。
TAKA:それは気になる(笑)。
雨宮:イラクでライヴをやった時はお客さんが1,000人入ったんですよ。反米バンドだったので、アラブ語でアメリカの悪口を言ったらお客さんが異様に盛り上がって。その時は凄く気持ち良かったです(笑)。もう12年くらい前の話ですね。20代前半の頃。
──まぁ、唄うと言うかアジると言うか(笑)。
雨宮:基本は演説でしたね(笑)。それ以降は作家になって、もっぱら見ることに大満足していますけど。このイベントの第1回目の時、舞台の袖から客席を見させて頂いたんですよ。そしたらお客さんが凄い笑顔でみんな可愛くて、ステージに立つ人はいつもこんな光景を見ているんだなぁと思ってビックリしたんですよね。
MAKI:ヴォーカルだから、お客さんの前で歌を思い切り唄えるわけじゃないですか? それ自体がすでに凄く気持ちいいことなんです。その歌を聴いた人がいいと思ってくれたら、何かそれ以上のことを望むのはおこがましいですよ。自分が歌を唄うことで感動してもらえるというのは、もう言葉にならないくらいの喜びですね。
猟牙:ライヴでファンとの一体感が凄い時は、“ああ、このために生きてるんだな”って実感するんですよ。大袈裟じゃなくそれくらい気持ちがいい。日常生活じゃ絶対に味わえないものだし、だからこそライヴは凄く貴重なものだし、一本一本のライヴを大切にしたいんです。あの光景を目の当たりにできるから、飽きることなく音楽とライヴを続けられるんだなと思いますね。
TAKA:俺もライヴがやりたくて音楽を始めたようなところがありますからね。初めてステージに立ったのが16、7の頃だったんです。対バン形式で、普通のコピー・バンドでしたけど、俺たちの前のバンドがやってるのを見て、早くあの憧れのステージに立ちたいという気持ちでいっぱいでした。ステージと言っても、田舎にあるライヴハウスとも呼べない小さなホールでしたけど。実際にステージに上がって唄って、技術もへったくれもないし、全然唄えてもいなかったし、演奏もムチャクチャだったけど、人前で唄ったり演奏する行為がホントにやめられなくなった。それがずっと今日まで続いているような感じなんです。とにかくライヴが好きだから今もバンドを続けているんだと思う。長く続けていくと、より高度なことを求めていくものだし、ヘンに頭でっかちになる部分もあるんだけど、やっぱり音楽は楽しくて。作るだけじゃ物足りなくて、自分たちの作った音楽をライヴで表現するのが凄く楽しいんですよ。しかも、さっきも話したように俺たちの音楽に共感するお客さんがいてくれる。こんなに純粋な行為は他にないと思うんですよね。自分たちが作りたいものを作って、それを好きな人たちが集まって一緒に騒いで…凄くピュアじゃないですか?
雨宮:そうですよね。混じりっけなしですし。
TAKA:そんな純粋なやり取りの虜なんですよ。ここにいる3人はみんなそうだと思いますけど。