歌っていうのは普遍的であるほうがいい
──この先、地震や原発と直接関係するような曲が生まれたりしますかね?
M:そういうこともあるかもしれないけど、歌っていうのは普遍的であるほうが僕はいいと思うから。地震が起きたから歌の内容が変わるなんていうのは何かイヤだなって言うか。何だろう、そこが上手く言えないからテキトーな言葉で唄ってるのかもしれない(笑)。まぁ、仮に自分の中で答えがあったとしても言う必要はないし、僕は基本的に楽しければいいだけなんで。たとえば『森へ行こう』にしても、僕としては“森へ行こう!”っていうコール&レスポンスをライヴでやったら面白いだろうと思っただけなんです(笑)。ただそれだけがやりたかった。そういうことしか考えてないんですよ。
──マモルさんにしか唄えないし、最高です(笑)。
M:この間のロフト(8月6日、『LONDON NITE SUMMER JAMBOREE '11』)で初めてこの曲をやった時も、お客さんは知らないはずなのにちゃんとコール&レスポンスをやってましたよ(笑)。それがバカみたいに面白くてね。“森へ行こう!”“森へ行こう!” …アホか!? っていうね(笑)。
──でも、初めて聴いても無条件にノレる曲ですからね。
M:うん、ノレると思う。“森へ行こう!”だけどね(笑)。これから全国各地で“森へ行こう!”なんていうコール&レスポンスができると思うだけでワクワクしますよ(笑)。
──どの曲もメロディ・ラインの秀逸さは折紙付きなんですが、その中でも『マボロシ』はとりわけ極上のメロディアス・ソングで突出した出来ですよね。
M:特に練ったわけでもないんですけど、やっぱり“いい曲を作りたい”っていうのを年がら年中考えてますからね。“いい曲”の基準っていうのは僕の場合ビートルズなんだけど。『マボロシ』は僕の中ではあまりないパターンの曲で、自分でも新鮮に感じました。
──個人的には『ロマンス』や『ドロ沼天国』みたいにソリッドでいて粘着質もあるR&B調のナンバーにDAViESらしさを感じますね。
M:まぁ、マージービートとか古いR&Bとかがやっぱり好きなんだよね。その手の曲はDAViESが一番しっくり来ると言うよりも、僕の思うところをメンバーがちゃんと理解してくれるからね。
──DAViESのメンバーにはマモルさんの意図することを事細かに伝えるんですか。
M:いや、伝えないですよ。僕はアレンジするのが好きだから基本的にデモをしっかり作るし、それをみんなに聴かせて「コーラスはこんな感じにしよう」とか言う感じです。意外と簡単にできちゃいますね。デモをただなぞるわけじゃなくて、みんな+αの要素を考えてもくれるし。
──『もっともチンケな愛のウタ』は照れ屋の主人公がぶっきらぼうながらも精一杯愛情を表現しようとする様がとてもいじらくていいですよね。
M:照れ屋って言うかひねくれもんなんですよね、やっぱりね。
──でも、そんなひねくれもんが『星空ブレイクダウン』では汗だくになりながら“本当のことをうたう声 君には聞こえるかい”と問い掛けているじゃないですか。
M:でも、それも僕のことじゃないかもしれないからね。僕がうたってるとは唄ってないかもしれない。
──そういうところがひねくれもんなわけですね(笑)。
M:まぁ、その辺はご想像にお任せしますよ(笑)。
──ただ、『星空ブレイクダウン』ってマモルさんの曲にしてはいつになくストレートな歌詞だなと思ったんですけど。
M:そうかもね。でもこれも、“星空ブレイクダウン”って言葉が響きとしてもいいなと思ったのがすべてなんですよ。だいたいそういうのだけで行っちゃいますから、最近は。
──じゃあ、『素敵なダンス』はビートルズの『I'm Happy Just To Dance With You』(邦題:すてきなダンス)にあやかったとか?
M:そうですよ(笑)。僕はあの曲が大好きでね。
──『You Can't Do That』のギター・フレーズも入ってましたけどね(笑)。
M:ああ、あったっけ?(笑) いずれにせよ、『すてきなダンス』はビートルズの中でも相当好きな曲なんですよ。
──ジョンがジョージにプレゼントした曲ですよね。
M:そうそう。マイナーで地味な曲なんだけどね。
ただいい曲を作ることだけを考えている
──『キャデラック』シリーズは今回で“4号”ということで、今や収録されていないと寂しさすら覚えますね(笑)。
M:これからも増えます。意地でも増やします(笑)。行けるところまで行きますよ。
──10号まで作ったら企画盤が作れますね(笑)。
M:そういうのいいね。1号から10号まで全部『キャデラック』しかやらないライヴとかね(笑)。まぁその前に、ちゃんと10号まで作れたらいいけど(笑)。
──マモルさんの場合、収録する11曲きっかりを持ち寄ってレコーディングに臨む感じなんですか。
M:もう何曲かは持っていきますね。それを全部並べて、曲の良し悪しじゃなくて合う合わないでカットしたりします。あとは気分ですね。結局は気分なんで。“このアルバムにはやっぱり入れたくねぇな”とか“いい曲だけど要らねぇ”とか、そういう気分は大事です。凄いヒット曲を作るつもりもないし、最高傑作を作るつもりもないんですよ。だから、何が何でもこういうことが大事みたいな決まり事はない。何度も言うように、僕はただいい曲を作りたいだけですから。その曲が面白いものになっていればそれでいい。
──マモルさんのアルバムにはどれもシングル・カットが可能な曲がバランス良く並んでいるし、それは言い換えればヒット・シングルを作る発想に近いのでは?
M:ガレージとかパンクとか、特定のジャンルをやる発想はないですね。何でもいいってわけじゃないけど、ジャンルのことなんて考えたら音楽はできないし、第一つまらない。それよりも“これが全部僕の音楽です”っていうのをボーンと出せればいいと思ってます。まぁ、それしかできないってことなんだけどね。
──通り一遍のことを伺いますが、この『MEXiCO MONK』というタイトルは一体何なんでしょうか。
M:全く意味はないです。単なる思い付きで、これをロゴにしたら格好いいなと思って。ジャケットも思い付きなんですよ。パッと頭にジャケの絵が浮かんだら、それをレポート用紙とかにボールペンで描いてみる。それを最終的にちゃんと絵にするんです。レコーディングと同時進行で“ジャケットどうしようかな?”って考えてるんで、編集の合間とかにアイディアが浮かぶことがあるんですよ。タイトルもふとした瞬間に“おおッ!”っていうのが思い付く。誤解されるかもしれないけど、全部テキトーなんですよ。テキトーでいいと思ってるんです。
──『キャデラック4号』になぞらえて言うならば、“カンケーねぇ!”と。
M:そうです。歌の中身もカンケーねぇし(笑)。
──でも、『MEXiCO MONK』というタイトルにせよ、マモルさん直筆のジャケットにせよ、脳内に沸沸と湧き起こるイメージがあるんですよね。
M:イメージはロックですよ。ロックと言えばチンポと唇かな? っていう高校生的な発想ですね(笑)。
──ウサギのマークも然りですか?(笑)
M:ウサギもロックのシンボルですね。あと、今年は卯年だし、僕も卯年生まれなんですよ(笑)。そういう発想しかないんです。
──“MONK”と言えばセロニアス・モンクなのかなと思いましたが…。
M:そうだね。あと、“文句”かもしれないし。“このヤロー、いつも文句ばかり言いやがって!”っていうね(笑)。
──ジャケットがブルーノートとかプレスティッジみたいなジャズのレコードっぽいじゃないですか。その辺もセロニアス・モンクと関係あるのかなとか思ったんですが、それはなさそうですね(笑)。
M:でも、ああいうジャズのジャケットは好きなんです。ブルーノートとかアトランティックとかのジャケットの色やデザインは好きで、そういうのが載ってる本を昔よく友達の家で眺めてたんですよ。凄く格好良かったし、やっぱり影響はあるんでしょうね。
──マモルさんが凄いのはああいう絵をサラッと描けてしまうところですよね。
M:いや、あんなのテキトーですよ(笑)。僕は高校生の頃、銀のジュラルミン・ケースみたいなものを学校へ持って行ってたんです。そのケースにザ・フーのロゴとかを描いてみたりしてね。中身は弁当箱だけで、勉強道具なんて一切持って行かなかったけど(笑)。