結成5年目にして初のフルアルバム『N'importe ou hors du monde』をリリースするParadise。ボーカル宮腰呼詩の放つ圧倒的に不穏な雰囲気と、冷牟田王子が鳴らす冷たく硬質のギターが聴く者の心を抉り取っていく中、ドラム関口はじめのポップ感覚は異様なほどに際立ち、石川潤によるベースも馴染みやすいフレーズを刻む。ダウナーとポップという相反する要素を孕んだバンドの、核をなす3人にフルアルバムやバンド、そして音楽との向き合い方にいたるまで、お話を伺ってきた。(interview : Asagaya/Loft A 山崎研人)
自然とこうなった
── まずはアルバム発売、おめでとうございます。
一同「ありがとうございます!」
── 2枚組25曲というのは大ボリュームのアルバムだと思うんですが、なぜいきなり2枚組で出そうと思ったんですか?
冷牟田王子「音源にしていない曲が山のようにあったので。それをまとめたいと思って」
── 全部で曲数ってどのくらいあるんですか?
王子「もう1枚はアルバム出せるくらいですかね」
宮腰呼詩「40曲くらい?」
関口はじめ「曲はどんどん作ってるんで」
── 結構なペースで曲はできていくような感じですか?
王子「1人で作ってなくて3人みんなで作る感じだから、そのぶん、どんどん曲ができていくんです。主に僕とはじめが作って、呼詩が歌やアレンジでいろいろ引っ張っていって。3人が平等に曲を作っているような感じ」
──みなさんメインボーカルを務める曲もありますが、歌い分けはどうやって決めてるんですか?
王子「自然とそうなるというか」
呼詩「はじめちゃんが作った歌は彼に任せて、適当に歌ってくれって部分は僕が歌います」
はじめ「決まってないところをやってもらう、とか」
── 3人で合わせながら、現場でできあがっていくような雰囲気が強いんですか?
王子「そうですね。この3人でやったら自然とこうなったんです」
── 今回のアルバムの選曲はどうやって決めたんですか?
呼詩「ある曲をありったけ入れて。曲順とか流れは僕が考えて」
── 曲順とかでこだわりはあったんですか?
呼詩「『デュモンド』ってタイトルをつけた時点で、大体の曲の流れというか、こういう風にストーリーが展開してくっていうのは頭の中に強いイメージがあるんです」
── まずタイトルを決めてそこに曲をあてていったような感じ?
呼詩「そうですね。元々、そのタイトルをつけようっていうのが最初からあったんで。以前『Alcohol River』ってのを作ったんですけど、それも曲を並べる前にタイトルが先行してるっていうか。そういうのが多いですね」
── 今回のアルバムタイトルは、ボードレールの散文詩(詩集『パリの憂鬱』内の『どこへでもこの世の外なら』)からの引用ということですが、なぜこのタイトルにしようと?
呼詩「僕が以前読んでいた本に〈anywhere out of the world〉っていう英語の言葉が出てきて、これは俺が考えていたことと一緒じゃないかって。その原題をたどっていったらボードレールだったっていう。それで小難しいフランス語のタイトルになってしまったんですけど」
はじめ「読めないからね」
── 今回のアルバムですとdisc-2の1曲目『Tristan et Iseut』も古典文学からの引用ですが、そういった文学から、曲の着想やモチーフを得るってことは結構あるんですか?
呼詩「僕がテレビやネットがない暮らしをしているので、どうしても昔の情報しか入ってこないんですよね。それで昔の本とか古典を読んで、好きなやつを曲にあわせて使えたら使うっていう」
── 自分が共感できるようなものを?
呼詩「そうですね。自分が共感できて詩の中にある感覚を、ありありと掴めるかどうかっていうのがポイントです」
── やはり、Paradiseってバンドは呼詩さんの世界観が強いみたいですね。
王子「そうだと思います」
── ライブを拝見しても、周りのメンバーが呼詩さんを信頼してる感じは、すごい伝わってきます。
呼詩「本当(笑)!?」
はじめ「最近よく言われますね。そういう風に見えるって」
王子「でもね、多分そうなんですよ。一昔前は、はじめ君も呼詩のこと嫌みたいな時もあったし。僕はわりと一貫してると思うんですけど。ベースの石川君を含めて4人のバランスがいいんじゃないかと思いますね」