自分には何ができるんだろう
──私はこの『Time Machine Music』と『象る天秤』を聴いた時に、存在の証明を一生懸命しているように聞こえたんです。"僕はここにいる"というのをすごく強く言いたいんじゃないかと。『象る天秤』の"この場所はもう俺だけのもんだ"とかは、すごくドキッとするフレーズでしたし。
高津戸:そういうのはあると思います。自分には何ができるんだろうとか、一人で部屋に籠もって曲を書いていると、不安にもなるし先のことも見えなくなるんです。それでも曲を書いている自分がいるし、誰にもぶつけられない感情というのはあります。
──その感情は歌詞にする以外に、ストレスの発散方法ってありますか?
高津戸:サウナです。銭湯巡りが最近好きなんです。サウナに入るって言ってもすごくこだわりがあって...(ここからサウナ話に花が咲きましたが、気になる方はライブ等で直接訊いて下さい)。
──サウナに入っている時ってリラックスしていると思うんですけど、そういう時に曲が閃くことはあるんですか?
高津戸:それはないです。僕の場合、曲作り自体が趣味みたいなもので、ギターを持って部屋に引き籠もっていると曲はけっこうできるんです。でも、歌詞は苦手というか、期間を設けられないと書けない。勉強する前みたいに、とりかかるまでに時間がかかる。でも、最近はいつまで書けるかわからなくて不安でしょうがないから、気になった言葉はノートに書き留めておくようにしています。
──単語がひとつ浮かんだら、そこからイメージがどんどん膨らむんですか?
高津戸:はい。この言葉にこう付け加えるとこんなに響きが違うんだとか。今回書いた曲に関しては追いつめられてバーッと書いたものが多くて、書き留めた言葉というのはあまり反映されてませんが、今書いてる曲には入ってます。
──追いつめられて書くのと、時間がある時にゆっくり詞を書くのと、ご自分にはどちらの方が合っていると思います?
高津戸:どっちも良い面があるんです。追いつめられてるから出てくる言葉もあって、あとで歌詞を読み返すとなんでこんな歌詞が書けたんだろうって思うこともありますから。『Time Machine Music』は、音楽の良さについて書いている部分があるんです。僕、理容美容の専門学校に通っていたんですけど、その頃に聴いていた音楽を聴くとその頃の気持ちに戻れたりするんですよね。当時聴いていた音楽を聴いて泣いたりもう一度感動したり、当時の風景が思い出されることってありません?
──あります。
高津戸:そういう感情を呼び起こせるところが、音楽の良いところだなって思うんです。自分もすごく助けられているので、そういうことを伝えたくて書いたんです。
──『Time Machine Music』の"孤独と共存する事で保とうとした僕の世界では...うん"の、"うん"があることによって、歌詞にリアリティーが感じられますし。
高津戸:"うん"だけでもいろんなバックグラウンドが出てくるんですよね。...って、今ここでアツく言ったらかっこ悪いですよね(苦笑)。でも、細かいところでそこに人がいるように見える歌詞を書いているので。
──それと、『moon wet with honey』の"...さぁ、ゆっくり歩こうか"という歌詞は、悲しいこともいろいろあるけれど、最後は上を向いて歩くみたいな、高津戸さんが先ほどおっしゃっていた言葉とすごくリンクしますよね。
高津戸:願望なんでしょうね。バンドも光のある方向へ行きたいなっていう。
──バンドとして具体的にはどうなっていきたいですか?
高津戸:長く愛されるバンドになりたいです。心の支えと言ってくれる人たちを裏切らないように。
──今バンドを結成して6年になりますが、長く続けて欲しいですね。年齢を重ねれば重ねるほど、もっと深みが増す気がするんです。今回のアレンジも繊細な感じがあって、どんな感じの人なんだろうなってすごく楽しみにして今日ここに来たんですよ。アレンジで言えば、『Time Machine Music』の最後の残像も雰囲気がありましたし、『象る天秤』はライブっぽいアレンジになっているじゃないですか。この流れもすごく良いですよね。
高津戸:曲が出来上がってから曲順を考えて、ライブでもやれるセットリストみたいなところはあります。
──この曲順通りにライブを見てみたいという気持ちが沸きましたよ。アレンジはライブの度に変わったりするんですか?
高津戸:『Time Machine Music』は音がたくさん重なっているので考えないとですが。あと、『桜川』はピアノなので、ライブでは前のバージョンになるかもしれません。
──今回もツアーでたくさんの場所に行かれますが、こういった大きなツアーは2回目だそうですね。前回のツアーはいかがでしたか?
高津戸:初めての全国ツアーで初めて行くライブハウスばかりだったんですけど、そういうところにもお客さんが来てくれて、やって良かったっていうツアーでした。今回はもっとたくさんの人に来てもらって、もっと幸せにさせたいって思っています。
──ツアーファイナルは、渋谷CLUB QUATTROになるんですね。
高津戸:前回のQUATTROがソールドしなかったので、今回はソールド目指して。
──アルバムが出てからのツアーになるので、今までよりも多くの人が手にとってライブに来てくれる可能性も高くなりますよね。
高津戸:期待に応えないと、ですね。
──今回は5月30日の福岡DRUM SONと渋谷CLUB QUATTRO以外は対バン形式となりますが、これまでに対バンしたバンドさんや仲が良いバンドさんから音楽的な影響って受けてます?
高津戸:影響というよりは、切磋琢磨というか負けてられないという気持ちもあれば、一緒に上がっていきたい気持ちもあります。ライバル的な気持ちも少しはあるんですが、あのバンドが一生懸命やってるから俺らも頑張ろうって思うことはたくさんありますよ。今回のツアーでも、仲が良いバンドや初めて一緒にやるバンドもいて、今からすごく楽しみなんです。
──では最後に、タイトルが『Time Machine』なので。タイムマシーンができたらいつの時代に行きたいですか?
高津戸:未来は見たくないですからねぇ。選択肢は過去になりますよね。...4/20ですね。つい最近のことなですけど、誕生会をスタッフの方々に開いてもらってすごい楽しかったので。
──本当に最近なんですね...。
高津戸:すごく心に残る誕生日だったので、戻りたいっていう気持ちが強いんですよ(笑)。