Dirty Old Menが、5月2日に1年3ヶ月ぶりとなるニューアルバム『doors』をリリースする。
この作品をリリースするまで、彼らは試練の連続だった。納得の出来る曲がなかなか作れず、焦りもがき続ける日々。加えて、リズム隊2人から脱退の申し出。途方に暮れる高津戸信幸(Vo & G)だったが、「一緒にやっていこう」という山下拓実(G)の言葉に奮い立たされ、新しいメンバーに出会い、こうして作品をリリースすることに至った。
今彼らは、新生Dirty Old Menとしてドアの前に立ち、新たな扉を開こうとしている。新しいメンバーと出会ってから書いたという『doors』では、彼らがスタートラインに立ったことを想像させ、『a heart of difference』では"共に笑い 共に泣き合える 仲間がいる"と、今のメンバーと出会い、音楽が続けられる喜びが最大限に表現されている。以前は物語性の強い歌詞が多かった彼らが、血の通った言葉を紡ぎ始めたのだ。長く続けていればバンドは必ず転機が訪れる。それが彼らにとっては今だったのだろう。"変化を進化に"。新生Dirty Old Menが動き出した。
今回は高津戸に話を訊いた。バンドを引っぱっていかなければという気持ちがこれまでよりも増し、ひと言ひと言から自信を感じることが出来た。(interview:やまだともこ)
ずっと変わらないものを探していた
── 4月14日の渋谷WWWで行なわれた、新メンバーお披露目ライブお疲れ様でした。初めて新しい姿の4人を見て、すごく漠然と“この4人でやっていくんだなぁ”と思ったんですけど、1曲目はお客さんも様子を窺っている感じがありましたね。ご自身としてはどんな感触でしたか?
「ライブから日にちが経って振り返ってみると、もっとやれることがあったと思いますけど、あの時は最高のライブが出来たと思ったし、この4人なら大丈夫という確信にも繋がりました。演奏で間違えたとか細かいことは気にしないで、今日を迎えられた感謝を伝えようって4人で話し合ってライブをやったんです。最初はすごく緊張しましたよ。ステージに出て行って1曲目に新曲の『doors』を演奏した時は、もちろんライブで初めて演奏するし、“新メンバーって誰なんだろう”という感じでお客さんも探り探りの感じがありましたし。でも、2曲目の『メリーゴーランド』は、前からある曲というのもあり、お客さんも盛り上がってくれたし、温かかったし、何より受け入れてくれてるというのはすごく感じました。この日のライブをやるまで、お客さん来てくれるかなとか、受け入れてくれるかなとか、不安がたくさんありましたけど、不安は取り除かれたような気がしてます」
── 新メンバーのお2人も緊張していましたが、楽しそうに演奏されてましたね。
「2人が楽しんでライブをやってくれたことが、一番かなと思います」
── 新しいリズム隊の2人は、どういう繋がりで加入することになったんですか?
「ベースの渡辺雄司くんはRIDDLEで、ドラムの岡田 翔太朗くんはserial TV dramaで活動していましたが、ギターの山下拓実と雄司は10代の頃に一緒にバンドをやっていて、そのバンドが解散して拓実がDirty Old Menに入って、翔ちゃんと雄司も1年ぐらい一緒にバンドをやってた時期があって、という繋がりです。2人とも昔からの知り合いです」
── 新メンバーの加入があって、旧メンバーの脱退の話は避けて通れないんですが、2人の脱退が衝撃で…というかすごくショックでした。
「それは僕も同じです。昨年は震災があって、それぞれが今後の人生を考え直す時間があったんですよね。それで、2人とも新しい人生を選択して脱退することを決めたんですけど、Dirty Old Menは高校2年の時に僕とドラムの野瀧真一、ベースの山田真光の3人で結成して、9年間一緒に活動してきたんです。だから、脱退の話が出た時は辞めて欲しくないという気持ちでずっと止めていたんです。でも、2人の気持ちが変わることはなく、こういう結論に至ってしまった。僕自身変わらないものを探していた時期でもあって、2人が違う道を歩き始めるということに対して、どこか喜んで背中を押せなかったんです。すごく未練がありました」
── でも最後はうなずくしかなかった。
「もう気持ちを戻すことは出来ないなって」
── それでも、バンドを続けたいという気持ちは強かったんですか?
「そこはすごく揺らいでた部分がありました。Dirty Old Menを辞めるなら、もう音楽を本気でやることはないだろうなって思ってましたから。でも拓実の存在がすごく大きかったんです。2人が抜けることになった時に、拓実が“一緒にやって行こう”って言ってくれて。その時に拓実との結束力を感じて『ふたり』という曲が出来て」
「むしろ強くなりました。拓実の熱意も感じたし、応援してくれる人たちや、支えてくれる周りのスタッフの皆さんやバンド仲間がいて、自分もしっかりしなくちゃって思ったし」
── 4月14日のライブでは、“新メンバーを探すのがすごく大変だった”と言ってましたが。
「昨年秋のツアーが終わってから拓実と探し始めたんですけど、全然うまくいかなくて、辛くてしょうがなかったです。何人にも声をかけたんですけど、タイミングが合わなくて断られ続け、拓実とも険悪になった時もありましたね(笑)。それで、今年の3月6日に正式に2人の加入が決まったんですけど、最初にドラムの翔ちゃんが決まった時は、拓実とハイタッチしちゃうぐらい嬉しかったです」
── でも、リズム隊が変わるって相当大きなことですよ。全く違うバンドになりかねないですから。
「ドラムもベースも野瀧と山ちゃんとしかやったことがなかったので、曲のノリが全然違い、1回目のスタジオの時は大丈夫かなって思いましたよ。でも2回目のスタジオからは、雰囲気も掴めたし、2人とも経験があるので合わせてくれる部分もあったし、今は気持ち良く演奏出来てます」
── 新しい2人からしたら、今までのイメージを変えちゃって良いのかなというためらいもありますよね、きっと。
「その話もして、イメージに合わせて縮こまるよりは、思いっきりやってほしいって。もっともっと可能性を見出して行きたいなって思います。それに2人とも“もっと良くする!”って、毎日メールでアツイやりとりをしています(笑)。前のメンバーも最高でしたけど、今も最高のメンバーでバンドが出来ることになりました。メンバーが全然決まらなかったのは、この2人に辿り着くためだったんじゃないかって思うぐらいです」
── これまでのDirty Old Menの曲は、歌詞に出てくる主人公がいつも泣きじゃくっていて、もっと頼りなかったし、繊細な印象が多く、それも魅力のひとつではありましたが、今回のアルバムに収録されている新メンバーが決まってから書いたという『doors』や『a heart of difference』の歌詞は、これまでとは全然違った力強さがありますね。
「今歌詞を読むと恥ずかしくなるような言葉も、昔の曲にはたくさんありますよ(苦笑)。弱いなって思いますし。でも、それが悪いわけではないと思うし、それがあってこその今ですから。これからはもっと強くならないとですけど」
── 『doors』は血が通っているというか、Dirty Old Menの歴史を重ねながら聴くと、鼻の奥がツーンとするような感慨深いものになってました。
「今の僕らの決意の曲です。今までは変わらないものを探していたんですけど、こうやってメンバーが変わり、変わることを恐れないで前に進むことになって気付けたことや、良いこともたくさんあった。でも前の2人と一緒に過ごしたから今の自分がいるということもわかっていて、言葉だけだとかっこつけにも聞こえちゃいますけど、新メンバーと今までのメンバーと6人分の気持ちを背負って次の扉を開いていきたい。変わらない気持ちを胸に、変わることを恐れず進んでいくという気持ちを詰めています。この曲は狙って書いたわけではないんですけど、ちょうど新学期とか新生活とかを始めるこの時期に聴いてもらうことが出来て、背中を押されたというコメントをいただいた時に、書けて良かったなってすごく感じました。与えられるだけじゃなくて、誰かに力を与えられるような人間になりたいし、そういう曲を書きたいと思っていたんです。だから、今は『doors』や『a heart of difference』が出来るために、今までの時間があったんだなって思うぐらい。プロデューサーさんやいろんな人に出会って、野瀧とか山ちゃんと一緒にやっていた時間があって、どういう曲を書けばいいんだろうってもがいていて、でも『a heart of difference』とかが出来たことによって、自分の中でひとつ自信に繋がったような気がしています」
── 『a heart of difference』の「共に笑い 共に泣き合える 仲間がいる」という歌詞がすごく好きなんですけど、これまでの歴史があって再び歩き出したバンドの姿を感じることが出来ました。
「これはドラムの翔ちゃんが加入すると決まった日に、その勢いで歌詞を書き上げました。翔ちゃんが最初に“やろう”と言ってくれて本当に嬉しくて、“ようやく光が見えた”という思いもあったし、改めて自分がちゃんとバンドを引っぱって行かなければという気持ちにもなったんです」