自分のちっぽけな世界観を拒絶することから何かを始める
──「sterotype」という曲のタイトルは、文字通り紋切り型の曲という自虐的な意味が込められているんですか。
ゲンドウ:紋切り型かなぁ(笑)、俺達なりのフックは効いてると思うけど。F.I.Xっていう俺とHERAがやってたSPIRALCHORDの前身バンドがあって、そのセルフ・カヴァーって言うか。
HERA:SPIRAL CHORDでやったらどうなるかなと思ってね。自分で言うのも何だけど幻のバンドだったので、持ち曲が3曲と作りかけの1曲しかなかったんだよ。「sterotype」はその中の貴重な1曲(笑)。オリジナルはもっとテンポが遅いんだけど。
──最後の「!!!!」はゲンドウさんがひたすら“エクスクラメーション”と連呼するユニークな曲ですね。緩急の付いたアレンジで、もちろん文句なしに格好いいんですけど。
HERA:アイディアは俺と憲太郎で考えた。『脳爆旅団 -Brainburst Brigade-』のエンドロールの曲なんだけど。
中尾:2人でテンポの遅い曲をセッションして、シェルターの西村(仁志)がカメラを回してたやつですね。
HERA:その曲をちょっと広げた感じだね。
──1曲目の「distance to substance」って、確かツアーのタイトルでしたよね。
ゲンドウ:そう。Nahtと回った時のツアー。そのツアー中に書いた曲で、見切り発車でそのツアーでもやり始めた。タイトルとサビのリフレインを考えてた時に、これが一番しっくりきたんだよ。元はと言えば俺が付けたツアー・タイトルなんだけどね。奪還成功(笑)。
──『サ・ヨ・ナ・ラ・セ・カ・イ』というアルバム・タイトルは、MOGA THE \5の『ハ・ル・カ・カ・ナ・タ・』に対するSPIRAL CHORDからの回答なんでしょうか?(笑)
HERA:深読みし過ぎだよ(笑)。
ゲンドウ:俺も実は後から気が付いた(笑)。もちろん何の関連性もないよ。家のレコード棚にあった『ハ・ル・カ・カ・ナ・タ・』を偶然見た時に“あッ!”って驚いた(笑)。タイトルに特に明確な意味はない。意味深にしておきたかっただけで。このタイトルからいろんなことを想像して欲しいけど。
──写真家・森山大道の作品で『写真よさようなら』という写真集があるんです。それは、写真という概念や社会という幻想を捨て去ってしまえというテーマの下に編まれたものなんですよ。彼にとって表現の術である写真を意図的に堕胎することで、新しい世界と出会うと言うか。
ゲンドウ:それと発想は近いと思う。自分の持ってるちっぽけな世界観を拒絶することから何かを始めるって言うか、そういう自分の内なる部分が表れてるんじゃないかな。
──プロデューサーはこのタイトルにも意見するようなことがあったんですか。
中尾:いやいや、言葉の部分に関しては僕は何も口を挟みませんよ。
──歌詞についてあれこれ言ってみたりもせず?
中尾:そんなことしないですよ。紡ぎ出された言葉は大事に扱いますから。プロデューサー云々っていうのも、今回のエンジニアが前に一緒に仕事したことがあるヤツだったので、僕が作業しやすい環境にあったっていうだけなので。
早く次の作品が録りたくて待ちきれない
──ゲンドウさんに伺いたいんですけど、GENDO十DEATH(ゲンドウのソロ・プロジェクト)はどんなきっかけで始めたんですか。
ゲンドウ:120%やらされた感じだよ(笑)。札幌でやってる蛯名(蛯名啓太、Discharming man)の企画ライヴで弾き語りでやってくれって頼まれたのがきっかけで。
──それをシェルターの西村が聞き付けて、東京でも披露されたわけですね。
ゲンドウ:そういう流れ。3月には大阪でもやるんだけどね。
──GENDO十DEATHの活動がSPIRAL CHORDにフィードバックされるようなことはありますか。
ゲンドウ:俺自身はないけど、この2人はあるかもしれない…かな? 判らないけど。まぁ、2人にとっていい刺激になってくれればいいとは思う。
HERA:SPIRAL CHORDでやれないことをやれてるんじゃないかとは思うね。バンド形態ではなく、独りじゃなければできない表現って絶対にあると思うし、それをやれているのは単純に凄いと思うよ。
──ソロになると歌が全面に出るわけだし、その活動を重ねることでSPIRAL CHORDでも唄うことに対してより意識的になるのかなと思ったんですが。
ゲンドウ:うーん、まだそこまででもないかな。憲太郎は俺にもっと唄わせたいらしいけど。
中尾:うん、もっと唄って欲しいですよ。何て言うか、歌にこそゲンドウさんの恥ずかしい部分が隠れてるでしょう? そこをもっと出して欲しいなと思うんですよ。
──同じヴォーカリストならではの発言ですね。
中尾:やめて下さいよ(笑)。
──『サ・ヨ・ナ・ラ・セ・カ・イ』の収録曲はどれも、装飾を解いてメロディだけ取り出しても充分成立する秀逸さがあるじゃないですか。だから、これらの曲をアコースティック・スタイルで演奏したらどうなるんだろうとふと思ったんですけど。
中尾:この3人でアンプラグドを? 必然性が全くないですよ(笑)。GENDO十DEATHのライヴも、アンプラグドではないですもんね?
ゲンドウ:うん。思い切りプラグ・オンだし。
──確かに、HERAさんがジャンベを叩く姿は想像できませんしね。
HERA:さすがにジャンベはやらないよ(笑)。
中尾:HERAさんは前にカフォンを叩いて指を折ったことがありますからね。
HERA:いや、折ってないんだよ。高森(ゆうき)のライヴで何曲か一緒にやったことがあって、叩き方がよく判らなくて叩きまくったら、指の関節の軟骨がガッツリ出ちゃったんだよ(笑)。
──今年、SPIRAL CHORDとしてやってみたいことは何かありますか。
HERA:Rooftopの表紙かな(笑)。
──検討します(笑)。少々気の早い話ですが、今年はもう1枚くらいアルバムを出そうという構想はないですか。
ゲンドウ:あるよ。できれば進みたいし、切り出したい。頭の中ではね(笑)。
中尾:今回は、レコーディングが終わった直後にもう次のを録りたいって全員が思ってましたからね。
HERA:次はフルで行きたいよね。
ゲンドウ:早く録りたいよ。待ちきれない。でもまぁ、頑張り次第かな。オトナの事情がいろいろとあるからね(笑)。