逆の発想で感じる楽しさ
──ところで、今回はキーボードの音がたくさん入っていますが、キーボードを入れることによりバンド内で意識的な変化はありましたか?
菊地:『はなればなれ』(M-6)は曲作りの段階でキーボードの斉藤さんに来てもらったんです。僕は曲を作るときは大勢で作りたいんです。何かしらの影響を受けますからね。『signal』は、デモの段階でメンバーはほとんど弾いていなかったんですよ。全員の音がなくても成り立つんだってわかりました。だから、次のアルバムを作る時は、「メンバーが音を出さなくてもいいや」って思ったんです。より曲に歌に歌詞に向き合うことができるので、それがバンドにとって良い場合もあるのかなって思いましたよ。音を出すって簡単だけど、楽器を持っているのに音を出さないのがかっこいいのかな。弾いてない時にステージで楽しくしてるベーシストだったり、ボーカリストだったり、ギタリストだったり、ドラマーだったりになれるか。ステージにいながら、お客さんでもありたいですね。
──だからこのアルバムではいろんなサウンドに挑戦しているんですね。それぞれの曲が相乗効果で引き立て合って、1枚を通していろんな曲が聴けたっていう印象を受けましたよ。それがplaneのPOPな部分なのかもしれないですね。
菊地:ほう。それいいですね(笑)。僕らは日本一優柔不断なバンドなんですよ。4人じゃ何も決めれないもん。ライブもライブハウスの人と仲良くなってライブをしたいし、ライブハウスの人と出会うからライブができるし、お客さんがいないとライブはできないし、やりますけど、いないとできない。
──みんなの協力を得て何かをしたいと。
菊地:そうそう。みんなで一緒に作り上げていきたいんです。
──『localizer』も多くの人の気持ちがちゃんと入っているということですね。
菊地:でも、レコーディングの時にメンバーに歌詞を見せないんです。曲を作る段階で音を出してるし、声も出してる。その時の声を聴いてほしいんですよ。雰囲気でわかって欲しいんです。いちいちこう弾いてやって言われたら気持ちが萎えると思うんです。だから、メンバーとも常に勝負しているんですよ。
──planeの場合、アレンジはどうやっているんですか?
菊地:各パート毎。持ってる楽器の担当者が一番気持ちよくやりたいと思ので、丸投げですね。
──今回はどの曲が一番楽しくできました?
菊地:『signal』ですね。
──デジタルっぽくて軽いサウンドの曲ですよね。重たい詞だけど、こういうサウンドに乗せることによって、どんよりしない。
菊地:「墓場まで一緒に行こうぜ」って言われたら嫌やけど、ほんまに行けたら最高の友達だったり恋人だったりするから、それがおもしろいなって思って作ったんです。
──『花火』(M-8)は華やかを想像させる花火なのに、こういう表現の仕方があるんだなって思いましたよ。
菊地:あれは1回目で1番を歌えた曲ですね。デモの段階ではもっとエフェクトがかかっているんですけど、歌をうまく歌ったから、機械にひっかからなくなったんです。でも、叫びたくはないんです。
──菊地さんはライブでも、感情をあまり前に出さないですよね。
菊地:内に秘めてる感じですか? ライブってのは楽しくて当たり前だと思うんです。でも、ライブ中に何かひとつでも違和感を感じることができたらそれまでも楽しくなる。逆に楽しいっていう状態ですね。
──planeの魅力はメロディーの美しさや、サウンドの作り方、ボーカルの綺麗さだと思いますけど、ご自身で思う魅力は?
菊地:迷いながら試行錯誤しながら。まわりの人たちのおかげでやれてますね。それは僕らに意志がないわけではなくて、こういう曲がやりたいと決めつけてしまうよりは、常に探している状態です。
──好きな異性のタイプを聞かれたときに、「その時好きになった人がタイプ」って答えるような感じですね(笑)。その時に、やりたいと思ったことをやるというのは進化していく感じがします。
菊地:そうなんです。それと今回ジャケットもいいんですよ。僕の頭にあるものをデザイナーさんに全部言ったんです。虹は架けたかったけど、それは言わずにいたんです。でも、出来上がってみたら虹が架かっていて奇跡ですね。
──これは綺麗なジャケだと思いましたよ。ところで、planeは11/6にはワンマンも決まってますね。
菊地:やっぱりボーカルは難しいですよ。
──え!?
菊地:ステージにいて黙ってられる人のほうがすごいんです。ライブって自分のペースじゃないですよね。その中で自分のペースを守れる人間になりたい。それは空気が読めないのかもしれないけど、そうでありたいという複雑な気持ちもあるんです。自分を見せたいと言うよりは自分でいたいんです。ライブはCDを聴いてなくても楽しめるように表現できると思ってます。アルバムは聴きやすいと思うので、ライブで良いと思ったらぜひ聴いてもらいたいです。