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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】MARS EURYTHMICS(2007年10月号)- 4人が溶け合って醸し出す音は薫り高く、スパイシー!

4人が溶け合って醸し出す音は薫り高く、スパイシー!

2007.10.01

いずれはイタリア語の歌詞も生まれるかも!?

──歌詞と言えば、今回1曲目の『GT Bolero』が英詞ですが…。

磯部:はい。なんか英詞っぽい曲ができてるなーと思っていたんです。全曲日本詞っていうよりいいのかなー。ギターの悦(伊藤悦士)からも「英語で歌ってほしい」って言われて「ほんと? じゃあ考えとくわ」って答えてんですよ。他にも何人か「そろそろ英語で歌わないの?」とか言われたし。人に求められる以上やろうかなって。

──今までは避けてたんですか?

磯部:なんとなく避けてましたけど。

──今回は素直に作れたんですか?

磯部:うーん。まぁ英語だと呪文のようになるし、喋れるわけではない、っていうことでちょっとやめていたんです。だから、ちゃんとした自分の言葉でと思って日本語詞にしてたんですが、ちょっと呪文を唱えてみようって(笑)。久しぶりに英語で歌うと、歌い始めて10分くらいは「変な感じ!」と思いましたけど、録ってるうちにすごい感覚が戻ってきて。さすがハスキン時代から英語で歌ってるだけあるわ! と思いました(笑)。カンが戻りすぎて、もう1曲くらい英詞でもよかったのかもって調子に乗るところでした(苦笑)。でも、本当におもしろいことやるんだったら、イタリア語とかで歌ってもいいかも。「ポルチーノ!!」とか歌ってみたいです(笑)。絶対おもしろいと思いますよ!! ポルトガル語とかもいいですよね!! カタカナで詞を書いて、詞の世界と一緒にメロディ伝えて通訳してもらって……ってやりたいですけどねー。日本のこの界隈のバンドでは誰もいないと思うから。「響きがいいからイタリア語もやっちゃった」とか。

──英詞を歌うときの感覚ってどんなものですか?

磯部:楽器の一部になったような。英語は言葉にそこまで責任がないからこそ、日本語はすごく気を遣います。ここは“は”だったか“を”だったかで意味が変わってくるんで、そこを間違えないように。それを意識しすぎちゃって、結構大変だなぁって思いました。英語は呪文のように覚えちゃうんで、かえって覚えやすい。響きがよければいいし。 ーーー『GT Bolero』以外の曲も英語まじりだったり、日本語で書いて英語で読ませたり、いろんなタイプのものがありますよね。これは何か意図があって書いたんですか?

磯部:そうですね。いろいろ作業してる中で、ちょっと英語圏のバンドのような曲になってきたかなーという予感もありましたから、日本語を乗せまくるよりもフランクにいこうと。ここに日本語を乗せるとどうしても堅苦しいなって思うときは“窓”って書いて“ウインドウ”ってルビふったり。自分でルビを変えまくるのがおもしろくて(笑)。

──今回そういうのたくさんありますよね。“人間”を“ジンカン”と読んだり。

磯部:これは絶対やろうと思っていたんです。「ダンガーン!!」みたいでいいじゃないですか(笑)? ここはメンバーに「おもしろいコーラスしてもらいますからね」って言ってあったんです。

──マーズではコーラスは大事にしていきたい?

磯部:うん。やっぱりバンド感を出したいですから。コーラスは多少でも絶対あったほうがいいんですよ。ハモってくれても結構ですけど、難しいですからね。今は掛け合いくらいで。

──ハモりは難しそうですよね。「このリフ弾きながらだとハモれない」とかありそうですし。

磯部:それもありますからね。だからなるべく「ここはこうしてもらいますからねー」って言ってるところは、歌いながら弾けるフレーズにしてほしいんですけど、あんまり意識してないみたいなので。多分「弾いてるからできない!」とか言いたいがために、ちょっと難しいのにしてるんじゃないかと(笑)。でも、僕は弾きながら全部歌ってますからね!

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言葉は自分で作っちゃってます

──歌詞の話に戻りますけど、本当にひねりがあって、詞としての見た目も意識してるのかなと思ったんです。文字の並びを目で見ても楽しいというか。

磯部:その辺はめざしてますよ! 詩集とか出すのはもっとおっさんになってからでいいです。今もおっさんですけど、60歳くらいのおっさんになってからで(笑)。叙情って大事だし、好きだなぁと思うので。歌詞の中に叙情が含まれてなくても、自分では意識してます。どんなに滑稽な詞でも、ちょっと美しいってのは大事かなーと思ってます。

──叙情的な言葉のストックっていうのは普段から意識してやってるんですか?

磯部:意識してますよ。主には読書からじゃないですかね。古典じゃなくて現代の人が好きで、最近は重松清さんとか読んでます。なんとなく匂いが一緒というか。 ーーー“俄雨”を“にわか雨”と読むとか、磯部さんの詞から漢字の読み方を学ぶことも多いです。

磯部:最近は勝手に変えることも多いですけど(笑)。それも自分で決めちゃえばいいんだって気づいたんです。「何言葉につまっとんねん!」と思ったときに「これは変えりゃいいんだ!」って。前のアルバムくらいまでは“儚く”だったら、「儚くなきゃダメなんだ!“儚く”にちゃんと続く言葉を!」と思ってましたけど、今は「“儚いカバ”とかでもいいじゃん」って思うようになりましたね。だから今回はものすごいラクでしたよ。

──以前インタビューをした時に、「詞を書き出すまでは吐きそうになる」って言ってましたけど、それはもうなくなりました?

磯部:吐きそうになるのは変わらないですね(笑)。でもその時間が短くなった! やり始めたら早くて、今回も一晩でささっとできてたんで、みんなから「えーーっ!? もうできたの?」って言われたましたね。でも、これが一番の得意分野ですから。ラクしてるわけじゃなくて、ちょちょいのちょいですから。普段からの蓄積があるんで、作るのが早いんです。だって歌詞が先にできるなんてありえないし。その歌詞見ながら「どうしてもこの通りじゃないとイヤ」ってものじゃない。歌詞ってその曲にはまるもので、より一層美しくなるような工夫が必要。その創意工夫とは何かと言うと、ただ単に苦労すればいいってものじゃなくて、力を抜いたところに力があるような感じ。

──メロディが自然に言葉を選んでくるような?

磯部:はい。そのときの縁のような感じがします。そのとき出逢うべくして出逢ったような。

──じゃあ別の日に作詞してたらどうなるんでしょね。

磯部:全然違っていたかもしれないなーって思います。そういう余韻が好きです。「あー、もう決めちゃったなー」って。今の時期に作ってたら秋っぽくなってたかもなーって。ものすごく流されやすいので(笑)。

──季節だったり、そのとき考えてることに流されちゃうってことですか?

磯部:例えば身の周りの何かが壊れたりとか、デッキが壊れてCDがかからなくなったりすると、“聴けなくなる”とかそういう関連の言葉がバンバン出てきますからね。それって何かと通じてるなーって思いますよ。ミニアルバムの詞を書いてる時期はものごっつ暑かったですからね。毎日が熱帯夜でしたから。よく“蝉”とか出て来なかったなと今になって思いました(笑)。

──でも夏を連想させる言葉が多いですね。“俄雨”もまさにですし。

磯部:あーあ、まただ(笑)!!

──そういうのがちょっと楽しかったりします?

磯部:そうですね。いつ作ったかわかりますからね。ハスキン時代の歌でも。

──おもしろいですね。すごく普遍的なことを歌っているようで、実は時代性のある内容だったり。

磯部:まぁ自分の中での普遍はところどころにあるでしょうけど、これは単なる詩ではなくて歌ですからね。詩だったらもっと書き方が違うでしょうけど、歌詞だから、聴いていて聴きやすいとか美しいとか、「ここがこうなってるから肝心なところでこう聴こえる」とか「ここがすごく耳に入ってくる」っていうことを心がけてます。

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