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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】a flood of circle(2007年7月号)- 巡り往く輪廻の潮、夜を焦がす蒼きブルーズ。

巡り往く輪廻の潮、夜を焦がす蒼きブルーズ。

2007.07.01

熱帯夜の町から脱却するための“けむり”

──「308」は、アコースティック・ギターをフィーチュアしたミディアム・テンポのナンバーですが。

佐々木:アコギの録りは凄く時間が掛かったんですよ。凄く難しかった。

──“308”というのは部屋の番号ですか?

佐々木:そうです。この曲は、岡庭のアイディアを借りながら弾き語りで作りました。録音したものを岡庭に聴かせて、「どうよ?」と。

──まるで短編映画を観ているかのような物語性のある歌詞ですよね。

佐々木:何となくのキーワードを散りばめた感じですね。それなりに雰囲気は出ていると思いますが。

──“カモミール・フレイバー”なんて言葉、僕はこの曲で初めて知りましたよ(笑)。

佐々木:ハーブ・ティーの原料にそういうのがあるんですよ。ヨーロッパかどこかが原産の代表的なハーブなんです。

──そんな優雅な暮らしをしているんですか?(笑)

佐々木:いやいや、たまたま知ってただけですよ。

岡庭:佐々木は帰国子女なので、そういう海外の小粋なアイテムに詳しいんですよ(笑)。

佐々木:小学校の時に海外で5年くらい生活していたんです。3年間ベルギーで、2年間イギリスで過ごして。

──じゃあ、英語は堪能なんですね?

佐々木:いや、ずっと日本人学校に通っていたので、全く(苦笑)。

──個人的にはムーディーな雰囲気でハーモニーが美しい「夜はけむり」が一番好きなんですよね。

佐々木:この曲が一番いいって言う人は多いですよ。評判がいいので嬉しいです。

──この曲は「ガラパゴス」同じく、夜には魔物が棲んでいるというイメージですか?

佐々木:熱帯夜の町でズブロッカを呑んで、真夏の夜にボーっとしている感じですね。そこから脱却するために“けむり”があると言うか…。

──真夏に酒をグイグイ呷り、まるで蜃気楼のように景色が歪んで見えるような映像が浮かんできますね。普段からズブロッカを好んで呑んでいるんですか?

佐々木:バーでバイトしていた時にズブロッカを知ったんですよ。ズブロッカが凄く好きというわけではないんですけど、よく家の冷凍庫に入っている感じがありますよね。

──ズブロッカという言葉の破裂音もいいですよね。

佐々木:“ズブロッカの海の中で”という歌詞でバンドの音がなくなって独りで唄うんですけど、それは自分が是非やりたいとみんなに言ったんです。でも、その箇所は岡庭に「そうじゃない!」って結構口出しされたんですよ(笑)。

石井:ああ、言ってたねぇ(笑)。

岡庭:俺、そんなに熱っぽく言ったっけ?(笑) でも、この曲の歌詞は凄く好きなんだよ。

──詞だけ読むと散文詩みたいだけど、音に乗ると、不思議と説得力を持って意味が伝わってくるんですよね。

佐々木:そうだと嬉しいですけどね。雄弁なサウンドだと自分では思っていますけど。

──“命を削って石を売るような人が 世界を回す”という歌詞は、やんわりと今の世界情勢を皮肉っている印象を受けましたけど。

佐々木:まぁ、僕みたいな人間がこの世の中を皮肉ってみても…っていう思いもありますけど、何も言わないよりは言ったほうが少しはマシだと思うので。

──最後の「象のブルース」ですが、間奏に入るギターが情感に溢れていて、ちょっとサザン・ロックっぽいテイストもありますよね。

佐々木:だって、岡庭は「この曲でオールマン(・ブラザーズ・バンド)やりたい」って言ってたもんね。

岡庭:あれはオールマンでしょ! 「俺、オールマンやりたいんだよねぇ…ハモって欲しいんだけど」ってお願いしたんですよ。今まで何年もずっとオールマンを聴き続けてきたのに、ある時バスに揺られながら聴いていて、初めてギター2本ハモるところが恰好いいと思ったんです。そのネタをいつか使おうと考えていたんですよ。亮介の家で曲作りをしていて、亮介が「象のブルース」を持ってきた時にオールマンのネタが使えそうだとひらめいたんです。実際に合わせてみたらもうバッチリで。

──ただでさえブルース・ロックにカテゴライズされそうなバンドが、敢えてブルースをタイトルにした曲を発表するところに潔さを感じましたけど。

佐々木:余り使いたくないような言葉を敢えて使いたくなったんですよね。“象を飲み込んだウワバミの心”というサビの歌詞が最初にあって、タイトルは後で付けたんですよ。マイルス・デイヴィスの自叙伝の中で、音楽の歴史の授業で白人の先生が「ブルースは黒人の悲しみから生まれた音楽で…」と話した時に、マイルスが手を挙げて「俺は金持ちの歯医者の息子だけど、ブルースをやってるんだよ!」ってキレたって書いてあって、凄くいい話だなと思って。

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