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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】騒音寺(2007年5月号)-ロックンロールの何たるかを体現し続ける正真正銘のロックンロールバンド

ロックンロールの何たるかを体現し続ける正真正銘のロックンロールバンド

2007.05.01

地元京都を始めとする関西圏では既に絶大な人気を誇り、他地方や東京でもじわじわと動員を増やし続けている騒音寺。4月27日に、通算6枚目、現メンバーになってからは初の音源となるフルアルバムをリリース。「騒」と書いて「ガヤ」と読むこの一枚には、人間の喜怒哀楽、人が人として生きていく上で大切なものが全て詰まっている。きらびやかでありながら泥臭く、歌って踊れて笑って泣ける、騒音寺の極上のロックンロールはいかにして生み出されるのか?唯一のオリジナルメンバーでありフロントマンのナベ(vo)に話を聞いた。(interview:稲垣ユカ)

何処を切っても騒音寺という作品

──現メンバーでのレコーディングは初だったと思いますが、如何でしたか?

ナベ:こんなにスムーズにいったレコーディングは初めて。というのもプロのエンジニアを起用したおかげで。

──今まではエンジニアは誰がされてたんですか?

ナベ:もう手近なミュージシャンや、ベースのやつに機材を与えてやらせとった。どちらにしろ内輪の人間がやってたから、録りの最中に急に気が変わってここをああしようこうしようって言い出してセッションしながら音を決めていくことも多くてね。

──じゃあ今回はその道のプロの方が方向をハッキリ決めてくれた分スムーズだったと。

ナベ:そうだね。なにしろ時間や金の問題もあるから、だらだらやっていられないっていうムードがあって。一から十まで音を決めてレコーディングに臨んだ結果、今までで一番スムーズにいったレコーディングになったよ。録音前のリハーサル量は半端じゃなかったけどね。コーヘイもよくついてきてくれたよ。

──今回新たに取り入れたことなんかはありますか?

ナベ:スタジオが良くなったことが一番の変化ですね。おかげで音に立体感が出たよ。前作と比べても格段に良くなったやろ?

──そうですね、良い意味で凄くきれいな音になりましたよね。反面、苦労した点は?

ナベ:苦労した点は…俺以外のメンバーに聞いたほうがいいかも。タムなんて曲によってギターやアンプ、しょっちゅう変えてたからね。

──曲作りは普段どんな感じで進めて行くんですか?

ナベ:イントロからエンディングまでほぼ七割は俺とタムでスタジオに持って行く。今まではほぼ俺が十割だった(笑)。成長したなあ。やっと人の話を聞けるようになりましたよ(笑)。

──イメージ的にはセッションで作っていそうな感じがしますけどね。じゃあナベさんが割とギターなんかもこだわって指示したりとか?

ナベ:音楽のことになると俺は頑固だからねえ。ファーストからサードくらいまでは「お前、ああ弾け、こう弾け」うるさかったよ~。ドラムのサウザーが入ってから…4枚目からかな、ある程度「餅は餅屋」に任すようになったのは。今は随分楽になった。

──信頼できるメンバーとやれてるってことですね。

ナベ:メンバーが全員騒音寺はなんたるかを判っている証拠だね。決められた枠の中で、どれだけ自分がプレイできるか、メンバーも、もちろん俺もそれに賭けてる。それがやりがいだとも思うし。だから、セッションは要らん。決められた枠を5人でどうやって100%埋めるか。そのために原形の枠をメンバーに持っていくのが俺の役割だね。お互いの呼吸なんかも、だらだら終わりの無いセッションを繰り返して時間を浪費するより、イントロからエンディングまで、短時間で集中して新曲を煮詰めていく段階で合ってくるほうが演奏がタイトになるクセがついていいんだよね。

──各々の役割という部分では、今回ギターのタムさんがM-7「ガタゴト」のボーカルもされてますけど。

ナベ:それはまずアルバムに幅を持たせたいというのがあって。騒音寺にとって彼の存在は大きいですよ。彼が騒音寺のキーマンと言っても俺は言い過ぎではないと思う。彼がいなかったらここまで騒音寺は存続していなかったと思うよ。

──具体的に、ナベさんから見たタムさんというのは?

ナベ:タムは今の時代には珍しいくらい真摯で努力家で。あと、ロックに対するベクトルが俺と一緒。だからそろそろアピールしてもいいんじゃないの?って俺がけしかけたんや。それと、彼が歌うことで長丁場のライブなんかは絶対もっといいライブになると思うから。あの「ガタゴト」は、俺には歌えないと思って一回はごみ箱に捨てた詩で。それをタムが拾って、持って帰って曲をつけた。俺には歌えない歌をさらっとあんなふうに歌えるなんてね。ロックンロールバンドのキーマンのギタリストが歌うことに俺は結構憧れてたから、ついにやった!って感じ。あいつさえ良かったらこれからも騒音寺の中でどんどん歌っていって欲しいね。

──こちらとしても是非聴いてみたいですね。それと、毎回曲調のバラエティに富んでいますが、一枚に収めるのにバランスを考えたりしますか?

ナベ:演ってみてしっくりこないものは練習段階であらかじめ外してあるから、そういう悩みは全く無いね。

──前回・今回とインストも収録されてますよね。

ナベ:インストを収録するとアルバムが引き締まるからね。インストでしかできない表現方法もあるし。

──ところで、2000年にファーストアルバムを出してから今作で6枚目ということで、コンスタントにアルバムを出し続けていますけど、これは意図的ですか?

ナベ:アルバムリリースは俺のさじ加減一つで決まるんです。曲や詩は常日頃からアイデアをため込んでいるんやけど、それを作品として仕上げる作業に一番時間をかけるから、年に二~三回期間集中で部屋にこもるんですよ。彫刻家に似ているね。外へ出て歩き回って材料となるいい土や木を見つけてきては、頭の中で思うまま形にしてみる。要らない部分をどんどん削っていって最後に磨いたりワックスをかけたり…。俺にとっては、「削る」「磨く」時間が一番重要で、最もミュージシャンとしてカタルシスを感じる時間でもあるんですよ。その集大成がアルバムになるわけだから、まったくもってアルバムリリースは俺のさじ加減ひとつなわけ。

──なるほど。そしてそれをステージで披露するのがバンドの醍醐味だとも思いますが。

ナベ:俺はライブすることだけがバンドのすべてだとはまったく思わなくて。「そろそろ新しいのが聴きたい」というファンの声は無視できないし、少なからずファンがいる以上作品をリリースすることはアーティスト側の義務だとも思うしね。

──曲があってこそのバンドでありライブですもんね。じゃあリリースはナベさんの「そろそろかな」っていう判断で。

ナベ:そう、今回も「このペースでいけば春くらいにはリリースできるんじゃないか」という読みで自らリリースを決めたんや。自分で決めた締め切りに追われるのもおかしな話だけど、マンガ家みたいに作業場にこもるのもええもんやで、火事場の馬鹿力もでるし(笑)。メンバーはそのさじ加減に振り回されてたまったもんじゃないだろうけどね(笑)。

──(笑)ちなみに、アルバムコンセプトは決めてから作るんですか?

ナベ:アルバムコンセプトを決めてから作り出したことは今まで一度も無いね。目指すのは、何処を切っても騒音寺という作品を残すことだけ。アルバムをリリースするということは、ファンのためでもあるし、バンドの成長の過程を見せることでもある。リリースごとにバンドの状況や変化を楽しんでもらえればそれが一番いい。自由の象徴のロックがコンセプトに左右されて堅苦しいものになるなんて愚の骨頂や。ただ、今回はコーヘイが加入した直後に、彼のためにコードが二つや三つのシンプルな曲を書いて練習したよ。偶然それが自分らにも良い影を落としてくれた。コンセプトではないけれど、今から思えば今回は「原点回帰」的なアプローチやな。そんな風に、アルバムのイメージやコンセプトなんて、俺たちにとっては時間がたって、振り返って見えてくるもの程度でいいんだよ。

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