<騒音寺>NABE:ボーカル TAMU:ギター OKA:ギター CO☆HEY:ベース サウザー:ドラム

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INTERVIEW

トップインタビュー騒音寺('08年10月号)

最後の大物R&Rバンド「騒音寺」の取材に成功!

2008.10.01

<騒音寺>NABE:ボーカル TAMU:ギター OKA:ギター CO☆HEY:ベース サウザー:ドラム


京都が生んだ和製ロックンロール・バンドの最後の大物にして最高峰「騒音寺」がベスト選曲の新録音アルバム『THE BEST OF SO-ON☆G』を10月1日にリリース。生前の中島らもが、彼らを非常に高く評価した文章を残し、くるりやザ50回転ズをはじめとするバンドマンたちにも大きな影響を与えてきたという、既にアンダーグラウンド・ロックの世界では有名なベテランである。これまで6枚のオリジナル・アルバムを自主制作で発表しており、すべての作品が歴史的名盤であることには間違いないが、このアルバムは入門編には最適なベスト盤となっている。今年のフジロック・フェスを熱狂させた、妖艶にしてワイルドな極上かつ衝撃のライブ・ツアーも続行中だ。騒音寺がLIVEしている21世紀には村八分もサンハウスもローリング・ストーンズもいらないのだ。(TEXT: サミー前田)

今や失われつつあるロックの美学と本質を体現しつづけるカリスマ・ボーカリストのナベ。90年代前半に再結成した村八分のチャーボーからのベースの誘いを断り、騒音寺を結成したという逸話も今となってはどうでもいいことだ。ナベはいま何を考えているのか?

──結成して10数年ということですが、これまでの道のりを振り返るとどうです?

「楽しかったとか楽だった、と言えば嘘になるかな。メンバーとの軋轢やら金銭面との戦いやった。度重なるメンバーチェンジに嫌気がさしたこともあったけど、サウザーにしろコーヘイにしろ、途中から騒音寺に入っても長続きしていられるのは、バンド自体が作品ごとに新しいチャレンジを試みているから、いつでも新鮮な空気を感じていられるからだと思う。それがセールスにも繋がっているんじゃないかな。騒音寺を結成してからセールスはずっと右肩上がり。めっちゃ緩やかやけど(笑)。この先にはもっと面白いことが待ってるんじゃないかって期待させるような。でもまだまだ初期やで」

──今までの騒音寺はあえてメディアに出ず、ライブツアーとCDだけの露出というイメージでしたが、今年はフジロック・フェスや、このベスト盤の発売もあり、いっきに多くの人に知られるようになりつつあると思います。今の心境をきかせてください。

「いや、心境になんの変わりもないよ。周囲が勝手に騒がしくなって、俺たちを持ち上げてくれているだけや。ただ、さっきも言ったように、金銭面で少しでも楽になればもっと上手く活動できるはずや。機材をもっと充実させていいCDを作り、それを自信にしていいライブをもっともっとしたい。そう思うのはミュージシャンにとって当たり前のことや。それに俺の曲作りの原動力になっているものの一つに、より多くの人に騒音寺を聞いて欲しいという強い気持ちがあるし、真のロック好きを唸らせる自信が俺にはある。フジロックやベスト盤がいいきっかけになればええな」

──世に出ていくことを拒んでいたわけではないということですね?

「メディアの件は、あえて出なかったわけじゃないよ。出たいとも思わなかったけど。やった!取り上げられた!って思ったら「歌謡ロック」て書かれるし。俺は基本的にロックさえやってりゃ笑っていられる性格なんや。ロック以外のことには本当にうとい。関わりたくない(笑)。こんなんやから毛嫌いされてたんちゃうか。今どき豹柄、長髪、骨太なロックなんて、メディアの方も好まんやろ。それに俺らはテレビタレントじゃない。ロッカーとしての自負がある。俺たちがメディアに取り上げられる時は、日本の音楽ファンのレベルや日本人の民度が少しは上がった時ちゃうかって笑いながらタムと話したことあるなあ(笑)。本当に俺らがフジロック出てええの?って思ったよ。ただ、あっと言わす自信はあったけどな。百戦錬磨だもん。心地よいだけのロックに飼い慣らされたオーディエンスの耳を吹っ飛ばす自信は本当にあったよ」



──作詩作曲をすべててがけていますが、曲作りはどのようにしているのでしょうか。

「作詩は毎日の日課。常にアンテナを張っていて、いろんな言葉を街から拾い集めてる。ツアー先でもノートを持ち歩いてはメモをとったりね。本読むのも好きやし。部屋にこもって、書き留めた言葉の群れを作品になるよう削っていく作業が至福の時。ライブよりも(笑)。しかし最近のバンド、言葉多いね。それじゃ言いたいことも伝わらないし、想像力もかきたてられない。日記を聞かされてるみたいで恥ずかしくなるよ!って言い過ぎか?(笑)。曲作りは本当に苦手やな。ノイローゼになるくらい。ただ、俺にはかつて聴いてきた膨大な音楽の引き出しがある。ちょっとやそっとじゃ涸れることはないくらい。ロック以外にもジャズや民謡、クラシックも好んで聴いてきた。それだけが命綱や。それらをいかに基本ブルース進行の騒音寺のロックに融合させるかがキーになってる。スタジオで合わせてみて体質に合わないものは一気に切り捨てる。長年やってると、バンドに合うか合わないかが最初の何小節かで一発でわかるんや」

──いや本当に、最高のロックンロール作家だと思いますよ

「でも、あんまり曲作りが苦手だから、この前会社の人に、曲作りを指南してくれるコンポーザーかプロデューサーを俺につけてくれって真剣に頼んだら、笑いながら「珍しいバンドマンだな、キミ。普通は嫌がるもんだよ。それに充分過ぎるほど良く書けてるよ」って言われて素直に嬉しかったけどな」

──一見強面かと思いきやライブのMCになると親しみやすいキャラクターですが、ライブ=エンターテインメントを意識しますか?

「昔は意識しなかった。逆にエンターテインメントを嫌ってたくらい。今は、特に意識はしないけど、自分らしさを素直にステージ上で出せてるんじゃないかな。それがエンターテインメントに繋がってたらいいことだと思うよ。客として見に行った時に、狭いステージで好き放題やって自己満足してるバンドをいいとは思わないし。俺もああなりたいって思えるほど説得力あるバンドなら最高だけどね。見たらわかるように自己満足じゃないじゃん、ギターウルフとかキングブラザーズとか。俺、現役バリバリの頃のセックス・ピストルズのライブビデオで、最後の曲が終わった直後にジョン・ライドンが客席に向かって一礼してるのを見たことあるよ。それで少し意識が変わったのを覚えてるな。あんなに恐ろしいミック・ジャガーもボウイもみんな最後は客席に一礼する。優れたエンターテイナーの証かもしれんな」

──ロックンロール、ロックバンドをやっている美学とは?

「ロックンロールやロックバンドなんて、そもそも貧困や反抗というものから生まれてきたものなんや。だから美学なんて言葉はロックにはない。しいて言うなら「反抗」やな。ステージで目張り入れてんのは反抗のアピールや。俺にはまだまだ足らんかもしれんけど」

──各メンバーについて一言づつ紹介して下さい。

「ドラムのサウザーは京都のライブハウスで見つけた。ロック叩かしたら京都一やと思った。エイトビートの激しい曲は彼じゃないと歌えない。サウザーのおかげで「社会の窓から」ができた。ベースのコーヘイはメンバーで一番若い。最初は下手やったけど、メキメキ上手くなった。ロックバンドはテクではなくハートやということを俺に教えてくれたかも。ギターのタムはバンドのキーマンや。彼が辞めるときがバンドの最後かもしれん。俺は特に感性だけで生きてる人間で、理論立てて物を話すのが苦手。サウザーにしろ岡にしろ同じ。メンバー間の通訳、マネージメントとのパイプ役でもある。俺たちが深いところで繋がっていられるのもタムのおかげやな。ギターに関しては花田裕之のバックやったりして経験に裏打ちされた確かなフィーリングを持ってる。俺は基本、彼のギターを聴いて歌を歌ってる。岡は完全な変わり者で皮肉屋やな。結成当初から俺と騒音寺をやってる。職人気質で、ブルースを弾く腕前は相当なもん。アプローチが完全にタムとは正反対で、基本的に岡は「狐か狸か」みたいな変形フレーズやブルースのソロ、タムは「ブランニュー・ギター」のようなストレートな曲でソロやリフを弾くというふうに使い分けてる。騒音寺を騒音寺たらしめてるのは間違いなくこの二人だろうな。不思議と岡の調子がいい時はバンドもいいし、悪い時はバンドの調子も悪い。本当に変なバンドや。ルックスバラバラやし。で、そこで俺は歌を歌う。楽しいで(笑)」

──今後の目標ややりたいことは?

「昔の音源を入れた『古寺』やこの『ベスト』のリリースで出遅れている新作を早く出したい。それにつきる。激しいもんになると思うで。しばらくはその作業とあとはツアーやな。12月3日の渋谷クアトロワンマンまでに30本以上のライブで技術的にも精神的にもレベルアップを計りたい。やりたいことは変わらない。チャージ2000円のライブなら5000円分のショウを、チャージ5000円のイベントなら10000円分のショウを、がモットーであり目標や」

──では最後にファンにメッセージ!

「これが騒音寺だ!と胸を張って言えるベストができました。是非聴いて、純度100パーセントのライブに足を運んで下さい。よろしく!」

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『THE BEST OF SO-ON☆G』

excite records XQCZ-1503 / 2,625yen
2008年10月1日発売

amazonで購入

LIVE INFOライブ情報

<新宿ガイジン・ファンタジー>
11月5日@新宿ロフト
withガイジン・ア・ゴーゴー、ファンタジーズ・コアほか
<THE BEST OF SO-ON☆Gツアー・ファイナル・ワンマン>
12月3日@渋谷クラブクアトロ
ゲスト・増子直純(怒髪天)、鈴木圭介(フラワーカンパニーズ)

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