BECRはドリフの“もしもシリーズ”のパンク版!?
──そうなんですけどね…。ま、それはいいとして“イー、エム、オー”ですが。
ヒダカ:笑いながらアンチテーゼをやってるっていう感じですよね。“違うよ!”って怒るんじゃなくて、それを笑いながらやってるっていう。
──それはけっこう、ビークルの一貫したスタンスですよね。
ヒダカ:うん、ビート・クルセイダースが最初から狙ってるポジショニングではあります。“チンポジ”みたいなね。
全員:(失笑)
──取材の時も下ネタを入れてるんですねぇ。
ヒダカ:そう、そこは忘れないように(笑)。あのね、怒ることは難しくないですよ、たぶん。トイ・ドールズやアディクツが原体験としてある、っていうのも大きいと思うし。
──楽しいし、笑えるバンドですよね。しかも、演奏はめちゃめちゃ上手いっていう。
ヒダカ:そう、この前、トイ・ドールズが“PUNKSPRING”に来たじゃないですか。あの時のドラムって、スナッフのダンカンだったんです。それってカンペキじゃん、っていうね。ただ、俺達がオールド・スクールのパンクをそのままやっても、それが今のキッズに通じるかっていったら、そうじゃないと思うんですよ。
──どうやって自分達のスタイルに変化させていくか。
ヒダカ:自分達なりに翻訳するというか。それがね、“お面”だったりするんですよ。白塗りの代わりにお面をかぶる、っていう。
──あ、なるほど。
ヒダカ:トイ・ドールズやアディクツが持っていたユーモア感はありつつ、それを現代的なBPMでやる、とかね。だから、ドリフの“もしもシリーズ”みたいなもんじゃないですか。もしもシリーズのパンク版ですね、ビート・クルセイダースは(笑)。
──ハハハハハ! それが2007年のキッズたちに受け入れられている、と。
ヒダカ:そう、ありがたいことですよね。
──「こんなに受け入れられるとは思ってなかった」って、よく言ってますよね。
ヒダカ:うん、予想外でしたね。翻訳したものが、それほど読まれるとも思ってなかったし…。たとえば『ライ麦畑でつかまえて』っていう小説があるってことは、みんなよく知ってると思うんですよ。だけど、「どんなストーリー?」って言われても、あんまりピンと来ないというか…特にあれって、ストーリーとかってないし。そんなふうにね、雲をつかむような話だろうと思ってたら、今のキッズ達はちゃんと判ってくれてるっていう。一番象徴的なのはね、マキシマム ザ ホルモンくらいの情報量があっても、みんな聴くってことだと思うんですよ。
──オリコン・チャートにフツーに入ってますからね。
ヒダカ:凄い濃厚じゃないですか。歌詞も多いし、メンバー全員が唄ってるし。ルックスの情報量だって……ねぇ?(笑)
クボタ:例えれば“殺害塩化ビニール”みたいに、一部の熱狂的なファンがいるっていうタイプのバンドだと思うんですよ、ホルモンって。それがオーヴァー・グラウンドにいるってことはあり得ないですよね。
──異形ですよね。
ヒダカ:ホルモンとかビート・クルセイダースって、間違いなく異形ですよ。でも、(キッズは)ちゃんとついてくる、というか、むしろリスナーのほうが先に行ってるのかもしれないですね、良くも悪くも。情報能力ってことで言えば、俺達が若い時よりも全然早いし、まさにPC世代ですよ(笑)。
クボタ:活字離れが進んでる、って言われてるけど、ブログだなんだって、文章もちゃんと読んでるわけだし。
ヒダカ:そう、ただアナログ的な手書き感が損なわれてるだけで、根本的な原理はそれほど変わってない気がしますね。クラブ・サウンドの揺り戻しでバンド・サウンドが戻ってきたり、クラブ・サウンドのほうからバンドに接近してきたり…。
──試行錯誤を繰り返しているうちに、どんどん面白い状況が生まれてくる。
ヒダカ:それが音楽の良さだと思うんですよ。ジョン・ライドンとアフリカ・バンバータの『タイムゾーン』みたいに。
──うわー、懐かしいっすね…。今回のアルバムも、まずは自分達のやりたいこと、面白いと思うことをやり抜く、っていうところで一貫してますよね。
ヒダカ:そうですね。遠慮はまったくないです。
クボタ:その時に思いついたアイデアはすべてぶち込むっていう。
ヒダカ:だから今回、ちょっと多めに曲を作ったんですよ。まぁ、リンキン・パークみたいに100曲も作ったわけではないですけど…それだけ作ったら、似るだろうっていう(笑)。
カトウ:捨て曲がいっぱいあった、っていうことじゃないの?
ヒダカ:断片的なアイデアだけでいったら、100くらいはあるかもしれないけど。それを全部カタチにしているヒマはないですからね…それはミリオンを売ってからやることかな、と(笑)。