転がり続けるのがパンクじゃん
──じゃあ、逆に言うと2年前はしっかりイジケていた、と。
ヒダカ:かなりヒネくれてましたね。売れるわけねぇんだっていう。メジャーっていうのもね、言ってみれば思い出づくりのつもりでしたから(笑)。
──思い出づくり(笑)。
クボタ:そういう不安な気持ちもありつつ、っていうことですよね。それに最初は“判りやすいもの、POPなものにしなくちゃ”ってことばかり言ってたんですよ。でも今は、さっき言ってたみたいにオーヴァー・グラウンドで認められてきたっていうこともあるし、“判りやすさ”みたいなものはあんまり気にならなくなってきて。まぁ、とは言っても、ヒネくれた感は消えてないと思いますけどね。
ヒダカ:スプリット・ミニ・アルバムを一緒にやったバンドも、結局は好きなことをやってるんですよね。YOUR SONG IS GOODもTROPICAL GORILLAもASPARAGUSも、一見、もの凄くマニアックに見えるかもしれないけど、本人達にとっての“王道”をやってるだけなんですよ。ヒネくれようとしてるわけではなくて、衝動を吐き出してるっていうか。今回のアルバムにも、衝動が集まってるっていう感覚はあると思うし。
カトウ:そういう衝動は1曲目(「~TOXIC GORILLA~」/高速の2ビートが疾走していく轟音パンク・チューン)のド頭に込めまくってますから。ギターのカトウタロウ的には、この曲における“叫び声”が…。
マシータ:ギターの話じゃないんだ?(笑)
──いや、燃えますよね。
カトウ:お、ホントですか?
マシータ:叫ばれてるほうはイライラしますけどね(笑)。
カトウ:喜怒哀楽っていう人間が持ってる4つの感情があるじゃないですか。そのなかの“怒”の部分を最初に提示するところからアルバムが始まり、そのエネルギーによってマシータのドラムが炸裂する、そういう曲です(笑)。
マシータ:タロウの叫びのおかげで、パンクが怒りの音楽だってことを、久しぶりに思い出しました(笑)。
ケイタイモ:この曲を録ってからしばらく経ちますけど、いまだに怒ってますからね(笑)。
カトウ:感情を忘れかけた世の中に向かって、お面をつけたオレ達がそれを提示していくっていう…。
ヒダカ:そんなこと言ってると、自閉症の治療院に入れるぞ!
──(笑)でも、「~TOXIC GORILLA~」はちゃんとパンクに聴こえるんですよ。僕は個人的に80年代が10代だったりするんですけど、ある時期からパンクがパンクに聴こえなくなってきて。
ヒダカ:判ります。メロコア以降がダメってことでしょ?
──そうそう。
ヒダカ:俺達も似たようなところがありますよ。でも、“AIR JAM”以降のパンクに対する価値観の変化もあるし、何よりも“転がり続けるのがパンクじゃん”っていう気持ちがあるんですよね。だって俺、PILも好きだもん、っていう。ピストルズも好きだけど、ジョニー・ロットンがやってたパブリック・イメージ・リミテッドも大好きですから。
クボタ:そういえば、バッド・レリジョンが出てきた時に『DOLL』とか見てて、“泣きコア”って呼ばれてるって書いてあって。まだ“メロコア”っていう呼び方がなかったんですよね、その頃。
──初めて“エモい”って言い方を聞いた時も、ちょっと笑いましたけどね。
クボタ:そういう皮肉を込めて「E.M.O」(イー・エム・オー)〈本作に収められている、“エモ”のビート・クルセイダース的解釈ともいえるパンク・チューン〉っていうタイトルにしたんですよね。エモじゃなくて“イー、エム、オー”って読めっていう。エモは産業ロックですからね、今や。
──産業ロックって言葉、渋谷陽一先生がよく使ってましたよね、80年代に。
ヒダカ:あ、何か恨みでも?(笑)
ケイタイモ:『ロッキング・オン』を落とされたとか?(笑)
──違います。『DOLL』を落とされたことはありますが。
クボタ:『DOLL』って落ちなそうだけどなぁ…(笑)。