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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】夜のストレンジャーズ(2007年1月号)-燃え上がる俺の魂──SET MY SOUL ON FIRE!

燃え上がる俺の魂──SET MY SOUL ON FIRE!

2007.01.01

あえて言うなら“グッド・ミュージック”

03_ap02.jpg──今度のアルバムを作るにあたって「こうしよう」っていうのは最初に何かあったんですか?

ミウラ:とりあえず、全員シラフで臨みました(笑)。

──いつもは呑みながらなんですか?(笑)

ミウラ:そうですね。今回はシラフで、もっと丁寧に演奏しようみたいなのはありましたね。

──ちゃんと弾こう、と。

ミウラ:そう、「ちゃんと弾こう」って思いましたね。

──今までは気持ち良く弾けて唄えればそれでヨシだった?

ミウラ:失敗しなきゃいいか、みたいな。判ってなかったんですね(笑)。今も判ってないけど、前は今よりもっと判ってなかった。

──丁寧に弾こうと心がけたのは、何か心境の変化でもあったんですか?

ミウラ:うーん……これからそうしていこうと思おうとして…いる。判んない(笑)。

──きちんとした演奏を心がける上で、他のメンバーと事前に話し合ったりもしたんですか?

ミウラ:そんなに話し合うこともないですからねぇ。曲もライヴでずっとやってたものだし、その間に他の2人も考えてちょこちょこ変えたり、色々やってると思うんですけど。

──もうバンドとして7、8年やってますもんね。そこはもうあうんの呼吸で?

ミウラ:そうですね。余り考えたりはしないですねぇ。

──ミウラさんから「この曲はこんな感じで」とか細かく指定したりは?

ミウラ:いや、まぁキーとコード進行ぐらいで。あとは適当に、って。1、2回合わせてみて大体これで、みたいな(笑)。大まかなイメージから外れないようにはしてますけどね。

──それができるのは、3人の音楽的なバックグラウンドが近いっていうのもあるんでしょうね。

ミウラ:そうですね、だからそんなに大きくズレたりっていうのはないですね。

──「今回はソウルな感じで!」とか今更言うわけでもなく。

ミウラ:うん、言わないですね。ただテッちゃん(ds)には「16ビートはやめてくれ」って言ったりしますけど(笑)。アイツは16ビートが好きなんで、でもこの曲にそれは違うだろう、みたいな。そういう極端な勘違いはありますけど(笑)。

──「200km Baby」にはジェイムス・ブラウンの「I Got You (I Feel Good)」っぽいフレーズがあったり、他にもいろんな音楽ネタが盛り込まれていると思うんですけど、そういう仕掛けは音楽好きにはたまらない楽しみでもありますよね。

ネモト:ジミヘンとかね(笑)。

ミウラ:そm(う。元ネタはジュニア・ウェルズとかも意外に。全然違ってますけど。

──ベースやドラムにもフレーズの元ネタがあるんでしょうか。

ミウラ:どうなんですかねぇ…。ヨーホー(b)は良いメロディを弾きますけどね。テッちゃんはどうなんだろう…。でもここ1、2年で凄く締まったドラムを叩くようになりましたね。

──ドラムが締まったぶん、ヴォーカルが安定するようになった感じはしますか? ドラムが違うと唄いづらいなんて話をよくヴォーカルをやっている方々から伺いますけど。

ミウラ:ああ、そうかもしれないですねぇ。

──夜ストは音楽に対する造詣の深さがさりげないところがいいですよね。「こんなの知らねぇだろ」みたいなお仕着せがましい部分がない。

ミウラ:まぁ、単純に自分が好きだっていうだけで。押し付ける気はないですね。

──自分達の音楽的なルーツをファンに聴いて欲しい気持ちはありませんか?

ミウラ:「聴けばいいのに」とは思いますけど。でも、ユニオンとかで俺の好きなレコードが安いので、余り人気が出ちゃうとそれもどうかなぁって(笑)。いつまでも安い中古盤が買えるといいなぁって思いますけど(笑)。ただ、みんな聴けばいいのに、いい音楽はもっといっぱいあるのに…とは思いますけどね。

──でも、日本でブルースっていうと、良くも悪くもエリック・クラプトンっぽい求道的な聴き方を良しとする堅苦しさがありますよね。

ミウラ:そうそう。ダサい人がやってるみたいなね。うんちくばっかりで。

──能書きばかりたれるジャズ・ファンもタチが悪いですけど(笑)。

ミウラ:大人の音楽、とかね。でも、ロバート・ジョンソンなんて30前で死んでるし。

──夜ストはそんなブルースやソウルの音楽的素養をよく噛み砕いて判り易く伝えてますよね。歌詞も平たい日本語だし。

ネモト:歌ありきですからね。ブルースがやりたくてそういう歌詞を付けるっていうんじゃなくて、まず歌があって、っていう。

ミウラ:いいこと言うねぇ。

──そんな他人事みたいに(笑)。でもホントにまず歌ありきのグッド・ミュージックという感じがしますね。今回のアルバムも粒が揃ってて、これだけ曲数があるのに「え、もう終わりなの?」って結果的に何度も聴ける。1曲1曲を冗長にしようっていうのがないですよね。こういうスタイルの音楽なら、ジャム・バンドみたいに曲をいくらでも長くすることができるじゃないですか。

ミウラ:ああ、そういうのは好きじゃないんですよね。家でレコードを聴いてても、オイシイところだけ聴いたら他のやつを聴きたくなっちゃう(笑)。

──ただ、曲を短くまとめると、そのぶん構成力の難しさも要求されますよね。

ミウラ:…余り考えてないですね(笑)。

ネモト:自分が飽きる前に終わろう、みたいな。

ミウラ:そう、飽きちゃうんですよね。

──長いギター・ソロとかも好きじゃないですか?

ミウラ:そんなにネタも持ってないし、好きじゃないですねぇ。オイシイことだけやりたいんですよ。自分がオイシイことだけ。

──まぁ、いわゆるR&Bの定型っていうのは3分以内で終わるのが定義ですもんね。

ミウラ:シングルは短いんですよね。

──夜ストにプログレの要素なんかを求めても仕方ないですしね(笑)。

ミウラ:聴いたことないですからね(笑)。

──ブルースを基調とすると、どの曲も似たような感じになって曲を覚えるのが大変じゃないですか?

ミウラ:ああ、エルモア・スタイルみたいな。でも、ブルースをやってると言い切るような感じでもないんですよね。ロックっていうふうにも考えてないですけど。あえて言うならやっぱり……いい音楽。それこそグッド・ミュージック。ソウルとかブルースでも、俺を通って出てきたらまた違う音楽になってると思うし。

──決して借りものではないし、ちゃんとミウラさんの肉体を通過して発信された歌ですからね。

ミウラ:うん、借りてはないですね。…借りたっつったらまた極端に借りたりしますけど(笑)。モノマネみたいなのとか。

──これからもソウルっぽい曲は増えていきそうですか?

ネモト:でも、一番新しいのはブギーだよね。

ミウラ:ああ、そうだね。ソウルばっかり聴いてるって言ってる割には、できる曲はそうでもなかったりするし。

ネモト:不思議なのが、夜ストはホーンが入ってそうな曲なのにホーンが聴こえないんですよ。でもそれでちゃんと完成してるんだよね。そこは不思議ですね。

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