シャウトするソウルのヴォーカルにグッと来る
──今回で4枚目ですけど、これまでで一番ストレスなく録れたそうですね。
ミウラ:まぁ、慣れてきたっていうのがありますね。録る人も『Beautiful Life』で今の人と初めてやって、その人と今回も一緒にやったからそれが良かったんだと思います。
──機材を変えたとかっていうのはありますか?
ミウラ:ギター・アンプを買ったんですよ。フェンダーのスーパーリバっていうのを、ちょっと変なところから格安で手に入れて。
──曲はかなりヴァラエティに富んだものが揃いましたね。
ミウラ:一気に作ったわけじゃなくて、前のアルバムの頃に作ったのとかもあるし、1年ぐらいかけて溜まった曲なんでね。
──前作までと、テーマというか作風にそれほど変化はないですよね?
ミウラ:まぁやっぱり……生活にも変化がないので(笑)。
──はははは。では、前作から今作までの間に変わった部分は?
ミウラ:ライヴでもっと燃えてやろうって思うようになりました。前から燃えてはいたんですけど、もっと振り切れてやろう、みたいな。
──メーター振り切って、もっともっと振り切っちゃえ! みたいな。
ミウラ:そうですねぇ。
──そんな燃え滾りモードになったきっかけは何かあったんですか?
ミウラ:やっぱりそのほうがこっちも面白いし、お客さんも面白いだろうし。
──うっかりビールとウィスキーを呑み過ぎてしまいそうな「Gimme Gimme」、コール&レスポンスの情景が目に浮かぶ「ナイトクラブ」など、今作もライヴ映えするような曲が多いですよね。
ミウラ:ライヴでやってから録ってるっていうのがありますからね。1曲だけ、ライヴで1回もやってない曲もあるんだけど。
ネモト:未だにやってないの?
ミウラ:やってないというか……できない(笑)。
──それはどの曲ですか?
ミウラ:「この熱き愛」。録音するときにできて、他の2人が「(ライヴで)そんな急にできない」って(笑)。「頼むからやめてくれ」って。
──「この熱き愛」は、今作の中で最もソウルフルな曲ですよね。
ミウラ:そうですね。ソウルは昔からホントに好きなんです。最近は富みに。もうソウルしか聴かないってぐらい。
──ミウラさんがソウルを聴いて一番グッと来るところは?
ミウラ:シャウトですね。張れるだけ張った声でずっと唄ってる人とかいて、凄いなぁ、って。
──日本人にも声量のある人はいますけど、向こうの人は骨格からして違いますからね。
ミウラ:デカいですからね。身体に反響するんでしょうね。
──そうなると、ミウラさんのヴォーカルもまたシャウトするところがキモなんですかね。
ミウラ:そういう曲を作るようにはしてますね。そうじゃない曲もいっぱいあるけど。作るときに自分の一番デカい声が出るところにキーを合わせて。自分が出せる一番高いところギリギリの音に一番デカい声を合わせて。
──今作を聴いて、夜ストはやっぱり歌ありきというのが大きなポイントだと思ったんですよ。ブルースやソウルのフォーマットを踏襲しつつ、最終的に残るのはミウラさんの歌声なのかな、と。
ミウラ:俺はそう思って唄ってますけどね。他の2人がどう思ってるかは判んないけど(笑)。
──歌を通じて伝えたいのはどんなところでしょう。
ミウラ:曲それぞれですけどね。……そんなに考えてないかなぁ(笑)。
──歌詞を伝えるっていうのももちろんあると思うんですけど、今回で言うと「ブラインドミウラストレンジャー's ブギー」の最後のフェイクっぽいところが一番ソウルっぽいと思ったんですよね。
ミウラ:あれは録音してるときに急に思いついたんですよ。曲はギターを弾きながら作るんだけど、録音のときはギターを弾かなくていいからなんか言っとこうかな、みたいな(笑)。
──録音のときはある程度曲を固めてからスタジオに入るんですか? それとも、現場でアドリブを取り入れながら進めますか?
ミウラ:曲ができてまずライヴでやってから録音するって感じだから、ライヴでちょっと変わるっていうことはありますけど、大体作ったそのままの感じですね。
──曲作りは、家で酒を呑みながら鼻歌まじりに?
ミウラ:メロディと歌詞は大概(仕事の)現場で。掃除屋やってるんですけど、そこで頭の中でメロディと歌詞を作って、家帰ってまとめるっていう感じですかね。
──じゃあ、メロディと詞は割と同時に浮かぶ感じですか?
ミウラ:そうですね。メロディを先に作って、それに合わせて歌詞を作るっていうのは余りしないです。前は詞のほうが先だったりもしたし。
──歌詞はストーリー性が強いですけど、メッセージを込めるというよりは、ストーリーを伝えるために語感を重視する感じですかね。
ミウラ:それはそうですね。判りやすい言葉で、っていうのは意識してます。
──レコーディングの直前まで歌詞を書き直したりしますか。
ミウラ:ライヴでやってるときは2番と3番同じで唄ってたのを、後かm(ら3番の歌詞を付け足したりとかはありますね。ライヴのときは結構適当なんで。
──収録曲は、できたものから流れを考慮しつつ並べていく感じですか。
ミウラ:できたものから…そうですね。収録するときに曲順は変えてますけどね。
──「プライベートな話をしよう」みたいなにグイグイ引っ張っていくノリのいいナンバーもいいですけど、「ホテルカスバに留まって」のようなジャジーなテイストの曲もグッと聴かせますね。
ミウラ:ああいうの好きなんですよね。あれは国境を越えるっていう歌詞なんですけど。
──なんとなくシベリアみたいな雰囲気が……。
ミウラ:俺の中では、ヘルシンキのイメージなんですよ。
──描かれる情景は、特に日本に限定しているわけではないんですよね。
ミウラ:そうですね。場所と時代は余り限定せずに……でも、泥臭い感じが好きです。
──設定が曖昧なぶん、聴くほうも妄想を許されるところがありますしね。
ミウラ:それか、極端に個人的なこととか。極端にしたいですね。凄く個人的なことか、どこの話か全然判らないようなのか、どっちかがいいですね。
──ボブ・ディランのように、個人的に思うところや思想を歌詞に盛り込むことはあえてしませんか?
ミウラ:ああ、クラッシュとかは凄く好きですけどね。ジョー・ストラマーの熱いところとか。でも、余り思想を入れたりとかはねぇ。
──それをソロに託そうっていうのは?
ミウラ:(ソロの)弾き語りはカヴァーで好きな曲をやるだけですからね。単純に楽しいから。
──ソロはフォーク・ブルース限定なんですか?
ミウラ:いや、色々やりますよ。ジャンルを問わず、古今東西の名曲を。ジャズをやったりもするし。
ネモト:シャネルズとかもやるよね(笑)。
ミウラ:「トゥナイト」ね(笑)。あの曲、大好きなんですよ。あとは小林旭の「ダイナマイトが百五十屯」とか。
ネモト:「ダイナマイト〜」はマーシー(真島昌利)もやってたもんね。
──じゃあ、そこはバンドと一線を引いて。
ミウラ:オリジナル曲はやっぱりバンドでやりたいですからね。
──ソロはソロで単純に楽しむ感じで。
ミウラ:そう。で、最後は呑み過ぎて弾けなくなって終わり(笑)。あとは誰かに抱えられて帰るという…。
ネモト:僕が下北でバーをやってて、そこでいつもミウラ君のソロ・ライヴをやってたんですけど、3部構成で最後はグダグダですから。お客さんもグダグダで(笑)。