糊口を凌いで日々を生きる我々にとって、夜のストレジャーズの奏でるシンプルで温かみのある音楽は至上のなぐさみの種である。呷ったストレートのウイスキーが五臓六腑にじんわりと染み渡って身体が火照るように、彼らの歌は労働に従事して疲弊した心と身体に昂揚をもたらしてくれる。かと言って、その歌には過剰にベタついてしみったれたところがない。そのバランス具合が何とも心憎く心地好い。どの歌も軽妙洒脱でスイングしているのである。堅硬にロックするばかりではなく、しなやかにロールもするのだ。彼らにとって通算6作目となるフル・アルバム『ON THE ROAD AGAIN』には、無闇に気張ることも弛緩することもない実に理想的な歌と演奏がこれまた実に理想的な音質で収められている。熟成しきったまろやかさばかりではなく、適度な粗さがあるのもいい。日々の生活から滲み出る偽らざる感情を誠実に具象化した真心の歌。それは芳醇な香りの美禄に匹敵し得る明日への活力源となるのだ。(interview:椎名宗之)
君にはファズはムリだ
──今回は録音とトラックダウンを含めて5日間で完成に漕ぎ着けたという順調っぷりだったそうで。
ミウラ:そうなんですよ。凄く早かったです。ピース・ミュージックの中村(宗一郎)さんの急かしのテクの賜物って言うか(笑)。やり取りも良好な感じで。
──中村さんからは具体的にどんなアドバイスを受けたんですか。
ミウラ:声の出し方とかですね。「ミウラ君、その声の出し方はマズイんじゃない? アゴを引いて唄ったら?」って言われて、その通りに唄ったらちゃんと出ましたね。それは凄い良かったです。そんな基本中の基本を全然知らなかったんで。あと、レコーディングはどうしても緊張しちゃうから、つい走っちゃうんですよ。なので、「落ち着きなよ」といさめられたりもして(笑)。
──ピース・ミュージックって凄く狭いスタジオですよね?
ミウラ:狭いですよ、一部屋なんで。でも、凄くやりやすかったですね。
──耳馴染みの良いサウンドの質感で、録りの塩梅は過去随一ですしね。
ミウラ:生っぽいですよね。それが凄い良かったと思って。歌以外は"せーの!"で3人で録ったんですけど、そのライヴ感がよく出てると言うか。そういう録り方が適したスタジオなんだと思いました。まぁ、中村さんからは「もうちょっと音を足してもいいかもよ」って言われたんですけどね。
──ピース・ミュージックにはレスリー・スピーカーとか珍しい機材がありますからね。
ミウラ:ファズとかありましたしね。それこそ、『I FUZZ YOU』にホントはファズを入れたかったんですよ。使ったこともないのに中村さんからファズを借りて、フレーズを中村さんに聴かせてみたら「それにファズは合わないね」って言われたんです。「君にはファズはムリだ」って(笑)。ファズを入れるから『I FUZZ YOU』だったのに(笑)。
──タイトルの割にファズが全然入ってないからおかしいと思ったんですよ(笑)。
ミウラ:ファズには"むず痒い"っていうイメージがあって。エルヴィス・プレスリーの『ALL SHOCK UP』の歌詞の中に"fuzzy tree"っていう言葉があるんです。"体中がむずむずして堪らない"みたいな歌詞なんですけど。だから『I FUZZ YOU』は"むず痒くさせてやる"って感じですね。
──今回は頂き物のシンライン(フェンダー・テレキャスター)も活躍されたそうで。
ミウラ:鳴りが気持ち良かったですね。みんなこういうギターを使うはずだよなぁと思って。今まではハコもののギターだったからシャキッとしないって言うか、シンラインはピッと止まってワーンとしない感じがいいなと思いましたね。
──本作は夜ストの世界観を語る上で重要な要素のひとつであるワーク・ソングが作品の方向性を担っているように思えますね。『ソウルフリーター』や『ファクトリーガール』には労働哀歌的な側面もあるし、『最終バス』には"この作業着を死ぬまで着ていくんだろう"という歌詞もあったり。
ミウラ:ああ、そうですね。100年に一度の経済危機だとか、俺はずっとフリーターだからそういうのとは何の関わりもなくて、むしろデフレで良かったくらいの感じなんですよね。西友も安くなったし(笑)。あんなに安いと、中小のスーパーはみんな困るんじゃないですかね。
──ワーク・ソングを唄っている意識は殊更ないですか。
ミウラ:全然ないですね。何も考えてないです。日々の生活から滲み出ることを唄ってるだけですよ。みんなそうだと思うんですけどね。
──僕の稼業もブルー・カラーみたいなものなので(笑)、『ソウルフリーター』の"顔を見せろよ 輝いてるぜ/絵空事でいい 間違ってない"という歌詞には随分と励まされたんですけど。
ミウラ:"フリーター"っていい言葉だなと思ってて。"自由なヤツ"ってことですから。自由でいいじゃない? って思ってるんですけどね。もちろん、自由であるためにはそれ相応の責任も伴いますけど。
自分の本心をありのままに
──『ヤング&ヒッピー』も自由の象徴として描かれているんですか。
ミウラ:俺自身はヒッピーにはなりたくないですけどね。昔、屋久島とかいろんな所でヒッピーの祭りみたいなのがあったなんて話を聞いて、そこでガンジャをキメたりした若者がフォーク・ギターをガーッと弾いてるようなイメージがバーッと浮かんだんです。若いならそういうのもいいなと思って。一応"He was young"なんで、今はどうか判らないけど。国立辺りにはヒッピーくせぇのが今も結構いますけどね(笑)。
──"金なんてないから 知恵をしぼって生き延びる/夢だけはあるから 何をやっても生き残る"という歌詞は、中央線沿線に住まうヤング&ヒッピーに希望を与えると思いますけどね。
ミウラ:その部分は自分でもそう思ってるんですよ。そこは本気なんです。
──これだけ先行きが不透明で閉塞した時代だからこそ好き勝手にやれよ、みたいなニュアンスですか。
ミウラ:うん、そんな感じですね。
──その『ヤング&ヒッピー』や『ジェリーリー』のように勢い良くブチかますナンバーももちろんいいんですけど、今回は『夏の恋人』や『ガールフレンド』のようなロマンティックなミディアム・バラッドも凄くいい出来だなと思いまして。ミウラさんのぶっきらぼうで塩っ辛い歌声が甘さだけに流れないと言うか。
ミウラ:自分では歌ヘタだなァ...って思いますけどね(笑)。危ういなこれ、っていうのが結構あるんですよ。でも、ラヴ・ソングはホントに大事だなって思ってます。それだけ読んだら照れくさい言葉でも、詞になってメロディがあって唄えば何とかなるし。
──『ガールフレンド』は自転車をふたり乗りした若い恋人たちに過去の自分たちを投影するというロマンティシズムに溢れた歌で、とても愛らしいラヴ・ソングですね。
ミウラ:やっぱり、いつ聴いても行ける感じの曲のほうがいいですね。詞に関しても、今流行りの言葉は入れないようにしてるんです。それだけはいつも考えてるんですよ。何十年経っても聴ける感じがいいから、漠然と古い感じの詞にしたいと思ってるんですよね。
──『夏の恋人』の冒頭にある"工事現場の水道で"とか、『ガールフレンド』の"下らないアルバイト"という言葉もワーク・ソングにリンクしてくる気がしたんですよね。
ミウラ:自分の本心をありのままに書こうって思うと、そういう言葉をついつい入れちゃうんですよね。やっぱり、バイトは下らないもんだと思ってるんでしょうね(笑)。普段からもうどうしようもなくイヤだなと思ってますから。
──古典的なブルースがそうですけど、ミウラさんの場合も日々の労働から歌が生まれたりするものですか。
ミウラ:労働と言うか、生活から生まれるものですね。労働はしたくないけどしょうがなくやっていて、それもやっぱり生活の一部なんですよ。グチですね、労働に関しては(笑)。
──『ガールフレンド』にはどことなくエノケンっぽい軽妙なスイング感もありますよね。
ミウラ:メロディとかはそんな感じかもしれないですね。エノケンさんみたいな古き良き歌謡曲とかも凄く好きですから。あと、キャブ・キャロウェイとかスリム・ゲイラードとか、ああいう人たちも凄く好きなんで、その辺の影響もあるんでしょうね。
──『サムクックで踊ろう』もソウルフルでありながら洒脱な軽妙さが心地好いんですよね。
ミウラ:ベタつかない感じにならないように逃げちゃうのかもしれないですね。
──ミウラさんの声質もあるんですかね。
ミウラ:あんまし上手くないっていうのがいいのかもしれませんね(笑)。声質はまぁしょうがないですけど、歌はもっと上手くなりたいですね。もっとソウルフルに唄いたいし。ソウルフルの解釈もいろいろでしょうけど、なかなかそうも行かないんで。
ソウルっぽく聴こえるといいなと思う
──歌のOKテイクの基準はどんなところなんですか。
ミウラ:今回は中村さんですね。中村さんに「途中でやめないで全部唄ってくれ」と言われたんですよ。今まではダメだとそこで唄うのをやめて、聴き直してからもダメなところを唄い直すやり方だったんです。それが今回は、ちょっとヘンだなと思ってもそこは後で直せばいいから、とりあえず全部通しで唄ってくれと。それで録りが早かったんだと思います。
──ぶっ通しで唄うと喉に負担が掛かりそうですけどね。
ミウラ:結構平気でしたね。タバコも今回は割と吸ったし。
──酒のほうは?
ミウラ:たまに近所のコンビニで缶ビールの一番ちっちゃいヤツを買って、テッチャンとふたりでばれないように隠れて呑んでましたけど(笑)。
──多少のアルコールは声帯にいいんですかね。
ミウラ:良くないでしょうねぇ。いいことはひとつもないんでしょうけど、真夏だったから、つい...(笑)。
──『ON THE ROAD AGAIN』というアルバム・タイトルは、ジャック・ケルアックの自伝的小説『路上』(ON THE ROAD)へのオマージュも込められているんですか。
ミウラ:『路上』は凄く好きで、結構何度も読み返してるんですけど、このアルバムのタイトルには直接関係はないですね。それよりも、自分たちはツアー・バンドっていう気分です。
──大好きなロックンロール・バンドが自分の街にやって来る昂揚感を描いた前作のタイトル・トラック『トラブルボーイズ』と似た世界観ですね。
ミウラ:そうですね。全然変わってないです。バンドとバイトしかやってないし、それしかできないですからね。だから、詞はそのことしか書けないんですよ。
──ツアーの醍醐味はやはり暴飲に尽きるんでしょうか?(笑)
ミウラ:マネージャーを入れて4人とも、最後の最後まで必ず居酒屋に残ってますからね(笑)。"明日があるから今日はここで帰ろう"っていうのが誰ひとりできないんですよ。
──体力的にもぼちぼち辛くないですか。
ミウラ:呑んでるとボンヤリして、訳が判んなくなるんですよ。ここから動くよりもここで呑んでるほうが面白いって言うか、その場の気分に乗っちゃうって言うか、揃いも揃って心が弱いって言うか(笑)。
──ミウラさんの場合、『Whiskey Headed Man』の歌詞みたいに翌朝スーツがなくなっていたりしても、余り後悔はしなさそうですよね(笑)。
ミウラ:店に出禁とかにならない限りは大丈夫かなと(笑)。でも、俺は毎度反省はしてますよ。家でも怒られますし(笑)。それで2、3日は治るんですけど、また忘れちゃうんですよね。
──ブログを拝見すると、ちゃんと休肝日を設けていらっしゃいますよね。
ミウラ:ああいうふうに書いておけば、親も安心するかなと思って(笑)。ああやって書いてる時だけですよ、休肝日を作るのは。でも、健康診断の前に2日酒を抜いただけでγ-GTPが基準値以下だったんで、良かったなと思って。ただ、悪玉コレステロールが高くて困りましたけどね。
──それなのに、マヨネーズえびせんを見事に一袋平らげてしまうという(笑)。
ミウラ:そうなんですよ。油物、揚げ物、エビカニはダメだっていうのに全部入ってますからね(笑)。
──呑んでいる時にふらりと心地好いメロディが浮かんでくるものなんですか。
ミウラ:そうでもないですね。大まかなのが頭の中でだいたい出来てからギターを引っ張り出して、"これ行けるな"っていう時点でビールを開けますね。呑んでる時は作れないですよ。どうしてもボンヤリしちゃうんで。
──ミウラさんは今も恐ろしい枚数のCDやLPを買って聴き込んでいますが、理想とする音楽を生み出す上で、それだけの音楽的素養が時に大きな壁として立ちはだかることもあるんじゃないですか。
ミウラ:越えようがないですからね。たとえば、サザン・ソウルでエイトっぽいのは日本語でも乗せやすいんですけど、三連のはなかなか難しいんですよ。だからRCサクセションの『スローバラード』はホントに凄いと思いますね。『オーティスが教えてくれた』とかもそうだし。清志郎さんはそういう日本語の乗せ方を発見したんだろうなと思って。俺はそれがまだできないし、そういう曲をまだ1曲も作れてないんですよ。ソウルっぽく聴こえるといいなと思いますね。
俺の弦は今だって錆びついてない
──『ジェリーリー』のような火を吹くロックンロールでも、日本特有の濡れた情緒を含めたソウルフルさを感じますけどね。
ミウラ:『ジェリーリー』は純粋に格好いいですね。クランプスのラックスが亡くなって、ラックスに捧げようと思って作ったんですけど、『ラックス』だと言葉が合わなくて『ジェリーリー』にしたんです。でも、ラックスもジェリー・リー・ルイスは好きだろうし、それもいいかなと思って。途中のビヨーンみたいなブレイクがクランプスっぽいかなと思って入れたんですけどね。
──あと、『ブラインドミウラ イズ バック』の語り口調に近いヴォーカルも新機軸で格好いいなと思いましたが。
ミウラ:ああいう唄い方は単純に面白いですよね。何回もライヴでやると飽きられるんですけど(笑)。最初はウケがいいんですけど、2回目、3回目になると飽きられちゃうんです。
──"なぁ兄貴 わりいけどよ ギター貸してくんねぇかな"という歌詞は、酔ったミウラさんが実際にやっていそうな行為ですね。
ミウラ:実際にやってるんですよ(笑)。ツアーで地方へ行って、打ち上げの帰り道に駅前で唄ってるヤツを見るとたまにやっちゃうんです。「"E"はこう!」「ロバート・ジョンソンはこう弾くんだ!」とか言って。酔っ払ってるから全然弾けてないんですけど(笑)。向こうから「もういいすか?」なんて言われて(笑)。
──先だってもブラインドミウラストレンジャーとして古今東西の名曲カヴァーに挑んだ単独音源を発表されましたが、これだけ耳が肥えているとカヴァーしてみたい曲も無尽蔵にあるんでしょうね。
ミウラ:結構ありますね。普段、家でギターをチョロチョロ弾いて遊んでる時に"あ、これはあの曲っぽいな"と気づいたりするので、それを覚えておいて、弾き語りのライヴがあると練習するんです。"こういう曲か"ってコードを発見する時が凄い楽しいんですよ。歌もギターもいい練習になるし、やってて単純に楽しいんですよね。
──バンドではなく、あくまでも弾き語りだからこそのカヴァーなんですか。
ミウラ:そうですね。バンドだとカヴァーは余りやりたくないんですよ。そんなヒマはねぇって言うか。それよりかオリジナルでやったほうが絶対にいいですね、バンドは。弾き語りはアルバイトみたいなもんですよ。現場へ行くくらいなら弾き語りをやったほうがいいっていう。
──ソロ音源は3時間で14曲を録音したという、バンド以上に強行スケジュールだったそうですけど。
ミウラ:個人練の時間を使って一気に録りましたね。曲順通りに録るので、後半に行けば行くほどノリが良くなっていくんです。だから、最初のほうはつまんないんですよ(笑)。
──『ON THE ROAD AGAIN』に話を戻しますが、個人的に最もグッと来たのは『最終バス』なんですよね。これぞ珠玉のワーク・ソングだと思うし、星空にビールの空き缶を投げつけるんだけど慌てて拾いに走るというちょっと情けないところもあって、ミウラさんの持ち味が凄くよく出ていますよね。
ミウラ:盗んだバイクで走り出せないですからね(笑)。
──夜の校舎の窓ガラスを壊して回ることもないでしょうし(笑)。
ミウラ:割ったらガムテープを貼りますよね(笑)。
──でも、歌の最後で"最終バスを降りちまえ"って唄うところにやけっぱちの反骨精神を感じますけど。
ミウラ:酔いが回って面倒くさくなっちゃったんですかね?(笑) 最初はそういう感じじゃなかったんですけど、ライヴでやっていくうちにバスを降りたくなったんでしょうね(笑)。
──最終バスを降りてしまったら、とぼとぼ歩くしかないですよね。
ミウラ:その後に余りいいことはないんでしょうけどね。でも、降りちゃうんですよ。
──投げつけた空き缶を拾いに行くような小心者が、酔った勢いで"俺の弦は今だって錆びついてない"とうっかり大きく出ちゃうところが個人的には大好きなんですよね(笑)。
ミウラ:歌の中でしか大きなことなんて言えませんから(笑)。声高に言うのが恥ずかしいんですかね。
誠心誠意育んだ真心の歌
──ブログを拝見して意外だったのは、作詞の面でブルース・スプリングスティーンの影響が大きいとミウラさんが書いていたことなんですよ。でも考えてみれば、『BORN TO RUN』は70年代のブルー・カラーのアメリカ人が深く共鳴した作品だったわけで、夜ストの歌の世界観と共通した部分はあるんだなと思って。
ミウラ:スプリングスティーンは凄い好きなんですよ。歌詞は日本語の訳詞でしか判らないんですけど、庶民派みたいなところが好きなんですね。好きな彼女に子供がいたりとか、『THE RIVER』で言えば組合のことを唄っているところとか。そういうのがグッと来ますね。実際に聴いて歌詞を読むまではマッチョなイメージでしたけど、『BORN IN THE U.S.A.』もまさかあんな歌詞だとは思ってませんでしたからね。単なるアメリカ讃歌だと思ってたのに、母国に対する愛憎半ばする感情を唄ったものだったし。
──スプリングスティーンもまた日々の生活の中から生まれる偽らざる感情を歌にしていますよね。そして、他でもない自分自身のために歌を紡いでいるんだと思うし。
ミウラ:みんな自分のために歌を作ってるんじゃないですかね。自分がグッと来るような歌を。それが人に伝わればいいですよね。誠心誠意育んだ真心の歌が伝われば嬉しいなと言うか。作ってる時は自分のものだけど、お客さんがいるところで唄う時はちゃんと伝えたいですから。「喋る声が小さい」って怒られることもたまにあるんですけど(笑)。
──歌を通じて社会と繋がっているという意識はありますか。
ミウラ:ライヴはお客さんがいるし、そういう意識はありますね。お客さんがゼロだったら繋がってないでしょうけど、ひとりでもふたりでもいれば、そこで繋がってる気はします。それでギャラを貰ったりするわけですから。ホントはバンドだけで食べていけたら最高なんですけどね。毎日寝坊してもいいんだろうし...そうも行かないのかなぁ(笑)。
──"ソウルフリーター"を続けながら精力的にライヴをやっているわけですから、かなり濃密な時間を過ごしているように思えますけどね。
ミウラ:時間は結構あるんですよね。バイトする時間もそんなに長いわけじゃないし、ライヴも毎週毎週ツアーへ行くわけじゃないですから。曲を作れる時間もいっぱいあるし。最近は曲が浮かぶことが多くて、曲のネタはまだいっぱいあるんですよね。ただやっぱり、歌もギターももっと上手くなりたいですよ。欲を言えば、サザン・ソウルやブルースの人たちのいい時の演奏がいつでもできるようになりたいですね。
──でも、夜ストの場合は上手くなりすぎちゃうと演奏の妙味が損なわれてしまう気もしますけど...。
ミウラ:いや、なりすぎたいですねぇ(笑)。まぁ、そうはならないんでしょうけどね、恐らくは。
──鬼が笑う話ですけど、次なる作品でトライしてみたい楽曲とかはありますか。
ミウラ:ソウル・バラードのいい曲を作りたいですね。大好きなウィリー・ウォーカーみたいな感じの曲を。
──お手本としたい日本語のソウル・バラードと言うと?
ミウラ:やっぱり『スローバラード』ですよ。特にそのライヴ音源が好きですね。要らない言葉はひとつもないし、メロディもちゃんと寄り添ってるし、ホントに凄い曲だと思います。だから俺も、ソウル・バラードの完璧な1曲を作りたいんですよ。それが次のアルバムでできれば嬉しいですね。