20周年は21年目のための準備期間
──改めて訊きたいんですけど、20周年っていうのは、コレクターズっていうバンドにとってはどういう位置づけなんでしょうか?
加藤:正直なところ20周年っていうのは、21年目のための準備だと思ってますけどね。能天気に20周年って騒いだところで、お祭りが終わった後っていうのは寂しいもんで(笑)。シビアなところ、20年っていうのはみんなを盛り上げるためにはいいキャッチフレーズだけど、俺達はもっと先を見てる。
──なるほど。
加藤:今回のアルバムによって、多分、新しいファンも増えてくれると思うのね。参加してくれた各アーティストのファンがコレクターズを好きになってくれたとしたら、次のアルバムが彼らにどう聴こえるのか……それが本当のバッターボックスだからね、俺達にとっては。そんな位置づけの年だね、実のところ。
──評価は次のアルバムで…。
加藤:出るでしょう、きっと。
──シビアな認識ですねぇ。
加藤:いやぁ、20年もやってると、浮かれてもいられないからねぇ。浮かれる時もあるんだけど(笑)、やっぱりこれって仕事だからさぁ、どうしても。『ロック教室』に参加してくれる連中を見ても、俺達より売れてる人達も多いわけじゃん? それはやっぱり悔しいよねぇ。
──サンボマスターも売れてるし。
加藤:ねぇ? コレクターズも彼らと同じくらいのところに行って、初めて俺達も胸を張れるわけだし。そういう意識は持ってないといけないよね。もちろんこのアルバムはいいアルバムなんだけど、自分の欲望はもっと違うところにもあるので。次のアルバムは相当頑張らないとね! ここで踏ん張らないとマズイっすよ。
──でも、これだけしっかりスタイルを貫きながら活動を継続させていること自体、日本では稀なわけで。それだけでも賞賛に値すると思いますけどね。
加藤:そうね、確かに。でも、バンドって生き物だからねぇ。みんな、続けたいんだろうけど何らかの事情で──メンバーが脱退したり、売り上げが変動したり──続けられないことも多いからね、何とも言えないんだけどね。とりあえず、幸せなほうだと思いますよ。人間関係だからね、これも。
古市:そうだね。
加藤:そこに商売が絡むから、もっと難しいよ。ローリング・ストーンズみたいにロック・コンツェルンみたいになったって難しいだろうしね。ああなってくると、それぞれが弁護士を立てて、スケジューリングもギャランティも決めたりしてるわけでしょ? ロンドンで陽気にリズム&ブルースをやってる頃から、随分とかけ離れるわけじゃん。そういう形になっちゃうわけだよ、どうしたって。もちろん、それぞれのバンドで事情は違うんだろうけど、コレクターズはよくやってるほうだなと思うね。よくやってるうちにもう少し頑張ろうかな、と。
古市:走行車線を走ってるからね、うちは。
加藤:いくつものバンドが追い越し車線でドンドン行っちゃって(笑)。
──ここまで続いた最大の理由って、何だと思いますか?
加藤:今から思えば、やっぱり、ロックに対する自分のハードルが高かったからじゃないかな。売れるとか売れないってことよりも、モッズっていうスタイルで世間に出て行くことで、音楽シーンに風穴を開けられるっていう自信がもの凄くあったし。それが今でも恰好いいことだと思ってるからね。最初の目標設定が高かったんだろうなって。
──その目標はまだ、理想の形では実現してない?
加藤:…まぁ、数字的なことで言えば、「こんなに頑張ってるのに、これくらいか」っていうのはあるよね、正直言って。満足してないから、やってるところもあるしね。そういう意味では全然実現してないよね。
──20周年アイテムとしては、11月22日リリースのDVD-BOXもありますね。
加藤:うん、歴史的な20年っていうのをひとめで見られるようなものがあったほうがいいなって思って。過去に出した3つのビデオをDVD化したり、あとはヒストリーですよね。クリップ集とかテレビ出演の映像もあるし。さらに2000枚しか作らなかったインディーズ盤をCDとして付けようかなって。…でも、続いていくバンドだからさぁ、“ここで終わり”っていう感じは出したくないので。“1964年、目白でおぼっちゃんが生まれました”みたいなのはやめようと思ってるんだけど。
──そうですね(笑)。
加藤:でも、20年かぁ…。20年ねぇ…。
古市:(笑)まぁ、レコード会社はキレイになったよね。
加藤:そう? キレイになったかなぁ。
古市:ここの会議室だってさぁ、凄いキレイじゃん。昔はどこも汚かったよ。
加藤:そう言えばそうだな。関係ないけど、80年代の女の子のほうがキレイだったような気がするんだけど。
古市:それはさぁ、感覚が鈍ってきたんじゃない? みんな同じに見えるんでしょ?
加藤:それもあるし、もっと言えば、今の女の子のほうがブスに見える。
古市:判るけどね。俺もそう思うから(笑)。
加藤:ある時期から、人間が変わったよね。
古市:変わったよ。それも渋谷系からじゃない?
加藤:そうかな。
──音楽はどうですか? 新しいものを聴いてピンと来ることってあります?
加藤:そんなの、イギリスの音楽なんて、みんな同じに聴こえるよ!
古市:余り響かなくなったよね、確かに。
加藤:オーディナリー・ボーイズなんて、「なんだよ、コレ?」って思うよね。
古市:刺激もないし、とにかく子供の音楽に思えちゃうんだよね、どうしても。果たして'78年に40歳の人がジャムを聴いてどう思ったかは、ちょっと判んないんだけど(笑)。俺らがオーディナリー・ボーイズを聴いた時みたいに感じるのかな?
加藤:それは判んないなぁ、俺にも。だけどさぁ、フランツ(・フェルディナンド)とかがナンバーワンだって言われても、全然判んないもんなぁ。
──つまんないですか。
加藤:余りにもパターン化されすぎてて、刺激が全くない。
──なるほど。確かにストロークスが話題になった時も、「いいバンドだけど、そんなに騒がなくても…」って思ったし。
加藤:別にカーズでもいいじゃん、って思うよね(笑)。だからさぁ、ポリフォニック・スプリーみたいなのが出てくると、ああいうのっていなかったから、面白いんだよね。「25人編成? 聴いたことねぇよ、こんなの」っていう。だけど瞬間最大風速だから、面白さが続かないっていうか、すぐに慣れちゃうんだけど。俺、ポリフォニック・スプリーが最後だね、面白いって思ったのは。
古市:雑誌だってさぁ、未だにツェッペリンが表紙になってたりするじゃん。
加藤:どんどん出てくるからさぁ、劣化コピーするしかないからね。そのなかで新しいものって言っても…。一番最初のオリジナルがいいに決まってるんだから。旨いものは先に食われちゃってる(笑)。
古市:俺らが新しいものを見つけて、それに影響されるってことはあり得ない。意味ないし、そんなことやっても。
──コレクターズはもの凄い音楽的変化ってないですよね。
加藤:そんなに器用じゃないから、出来なかったんだよね。
古市:最初に“これ!”って決めたものがデカすぎた。
加藤:他のモノがなかったってことか。でも、ホントに面白いバンドって今はいないよね…。
古市:なんかグチみたいになってきたな(笑)。
──じゃあ、前向きな話題でシメましょうか。
加藤:とりあえず日比谷の野音ですね! 10月22日なんですけど、これを一杯にするのが現時点での最大の目標です。
──あとは次のアルバムですね。
加藤:うん。来年に向かって頑張りますよ。