コレクターズって“ジャーン、ジャーン”だよね
──「こんな曲を書いてよ」っていう依頼はしなかったんですか?
加藤:うん、してない。だって俺達から「こんな曲を書いてくれ」って言ったら、その人のカラーがなくなっちゃうから。逆に質問はされたけどね、「どんなのがいい?」って。コレクターズをイメージしてくれてもいいし、「バンドを20年続けた時にどう思うのか」ってところで書いてくれてもいいし、コレクターズに歌わせたいナンバーでもいいし、自分達で作った曲をコレクターズにカヴァーしてほしいって感じでもいいし。「自分達でもやりたいって思える曲を作りますよ」っていうのが一番多かったかな。半年後とか1年後には、これを自分でやらせてくれっていう。
──みなさん、気合いの入った素晴らしい曲を書いてますよね。
古市:うん。それはホントにそう思う。
加藤:頑張ってくれましたねぇ。アンサー・ソング(「Thank U」)を書くのが大変だったもん。「なんだよコレクターズ、ショボイじゃん」って言われたら最後だもんねぇ。アルバムの最後に入るわけだから、シメの言葉になるじゃないですか? となると“サンキュー”しか出てこないんだけど、どういう“サンキュー”にすればいいのかな、っていう。聴いてくれた人にもサンキューだし、曲を提供してくれた彼らにもサンキューだし。それとは関係ないところでも通用するような“サンキュー”にしたいっていう気持ちもあったし…。でも、結構上手く書けたんじゃないかなって思ってます。
──曲が上がってくるたびにテンションが上がっていく、っていう感じでした?
加藤:うん。特に民生君なんて、自分の生バンドでレコーディングしてきた、ホントに完成されたものを送ってきてくれて。民生君はコータロー君のほうが知り合いなんですよ。民生君のテレビ録りの時、いつもコータロー君がギターをやってるから。
古市:直接電話して、「民生が参加してくれないんだったら、この企画やめようかな」って言いました(笑)。
加藤:おどしも半分入れて(笑)。でも、ホントにいいものを上げてくれましたからね。曽我部君の曲だって、もともとちゃんとレコーディングされたものだから、既に完成してるわけですよ。逆にシンプルな弾き語りで送ってきてくれて、「これ、コレクターズでどうやろうか?」っていう楽しみもあったりして。でも、意外と簡単そうで難しかったねぇ。
古市:サンボマスターは自分達のスタジオで練習したものを録ってきたんだよ。それをカレー屋で受け渡しして。
加藤:近所に住んでるんだよ。電話して「一刻も早く!」って言ったら、カレー屋まで持ってきてくれて。家に帰って聴いてみたら、すっごくレベルが小さくてさぁ。しかも、ただ叫んでるだけで。“叫びのロック”とは聞いてるけど、ここまでは叫べねぇなぁ…って。山口君に「これ、どうしたらいいんだよ、山口君」って訊いたら、「いやぁ、加藤流でお願いしますよ」って(笑)。加藤流にメロディを足したりしましたけど。
古市:サンボマスターのヴァージョンも恰好良くてさぁ、なかなかプレッシャーでした。
加藤:最初は「コレクターズだもんなぁ…。どうしたらいいのかなぁ…」って言ってましたけどね。
──悩んでたんですかね?
加藤:そうかもね。でもさぁ、最初、「カセットテープに録っていきます」って言うもんだから、「勘弁してくれよ、今時カセットテープって…」って言ったんだよ。しかも、原稿用紙の裏にコードが書いてあって、それで包んであるんですよ! 今時、いねぇだろうって。
古市:かなり良かったよね、それ。ロックな感じで。
加藤:普通だったらメールで歌詞くれて、(音源は)ファイルで送ってくれるじゃないですか? 知らないですからね、そういうやり方を。
古市:素晴らしいです。
──サンボらしいなぁ。「スタールースター」は既にライヴでやってますが、これはもう“マーシー節”ですよね。
加藤:マーシー節だねぇ。今回のアルバムに参加してくれた人のなかでは一番付き合いが古いんだけど、最初に聴いた時“ああ、マーシーだ。変わんねぇなぁ”って思ったから。でも、これ、コレクターズを意識してくれたらしいよ。「コレクターズって“ジャーン、ジャーン”だよね」って言ってたからね。まぁ、もともとブルーハーツの歌もハイロウズの歌もシンプルだし、似てるところがあるんじゃないですかねぇ。同じシーンから出てきたわけだし。
古市:ギターも弾きに来てくれて。
加藤:そう、リードギターで参加してくれたんだよ。でも、マーシーはホントに変わらない。ルックスも変わらないし、喋り方とかも全く変わらないんで、ビックリした。5年振りくらいに会ったんですけど、全然変わらない、20年くらい前から。
──ゴーイング・アンダーグラウンドの松本素生さんが書いた「19」も、凄く彼らしい、ノスタルジックな響きを持つ曲ですよね。
加藤:松本君はアマチュアの時にコレクターズの大ファンだったらしくて、デビューしてからも交流があって。
古市:彼らのやってるイヴェントに出たりね。結構飲みに行ったりするよ。
加藤:同じ埼玉県出身だし(笑)。今回の話も、凄く喜んでくれたみたいよ。「19」は歌詞も凄く泣きの歌詞でね、頑張ってくれました。
古市:スタジオに入る前に「これから入りますから」って電話があったんですよ。殴り込みじゃないんだから、っていう(笑)。どんな凄いのが来るんだろう、って思ったら、彼の弾き語りで。