トリオ編成でできることは全部やろう
──今回発表される小谷さんの『CATCH』は、小谷さん、100sの玉田さん(ds)と山口寛雄さん(b)から成るピアノ・トリオによるものですけど、この顔触れの流れは“ta-ta”から始まったものなんですか?
小谷:いや、豊夢くんは『night』('03年5月発表)というアルバムでドラムを叩いてもらってて、“ta-ta”をやる時にも池ちゃんから「凄くいいドラマーがいる」って薦められてたんですよ。それ以前に他のアレンジャーからも「豊夢くんがいいよ」と言われていて、実際に音を合わせてみたらバッチリだったんです。それと、山口くんは豊夢くんの古い友達なんですよ。
──『CATCH』は、前作『adore』でのピアノ・トリオのサウンドがより鋭さを増して逞しくなって、楽曲の良さも際立っているし、非常に聴き応えのあるアルバムですね。
小谷:ありがとうございます。(田渕に)どうでしたか?
田淵:もう、素晴らしかったです。凄く良かったぁ……。
小谷:良かった、良かった(笑)。
田淵:「作品が完成したとき、競馬場で馬がレース前に囲いの中で暴れながらスタートを待ち切れないでいるような、そんな状態になった」って小谷さん本人がコメントを書いていて、それが凄い良くて。「そっかぁ!」って思いながら聴きUんました。3人の編成がよりギュッとした感じになってるし、曲のメロディとかも凄くいいし。
──ピアノ・トリオでやることの意義みたいなものの焦点が、このアルバムでまたグッと絞れた感じはありますね。
小谷:そうですね。今までよりもっと太い音にしたかったんです。いい音を作ろうとすると時間もコストもかかるので、トリオ編成でできることは全部やろう、みたいな感じで。ゲスト・ミュージシャンとかには頼らずに。
田淵:小谷さんの手書きのセルフ・ライナーノーツが資料にあって、これをじっくり読んでから聴いたんですよね。手書きの文字からご本人の性格までもが窺えて(笑)。どの曲も好きですけど、シングルになった「Who」とかは凄く好き。サビのメロディがいいですよね。
小谷:良かったぁ(笑)。
田淵:あと、最後に収められてる「CATCH」はバンドっぽい感じがしました。その2曲はアレンジとかにバンドっぽさがあると思いましたね。一人の人が作ったのを演奏してもらったとかじゃなくて、3人で作った感じが凄くして、恰好いいと思いました。
──ひさ子さんは、この『CATCH』を聴いて「自分もレコーディングに参加したかった!」とは思いませんでしたか?
田淵:実はそれ、今日聴きながら考えてたんですよ(笑)。「私がこのアルバムに参加していたらどうなるかなぁ?」って思ったんですけど、ピアノが入ってるとギターってどうしていいか判らないものなんですよね。だからギターが入っても、“ホワ~ン”とか“フワ~ン”みたいな感じかなぁ、と。これに“ジョッワ~~~~ン”ってでっかいギターが入ったら、それはちょっと違うかなぁ、って(笑)。
──でも、「CATCH」の最後のほうのうねりを上げる部分には合いそうですけどね。
小谷:ああ、いきなり最後の最後にね(笑)。
──ピアノとギターは、本来ハモりづらいものなんですか?
小谷:うん、難しいですね。ちょっと被っちゃうんですよ。
田淵:“土台”というよりも“色付け”という役割がなんか似てるというか、ピアノもギターも守備範囲が広いんですよね。コード感とかも小谷さんの曲は凄く独特だな、って『CATCH』を聴いて改めて思ったんです。一貫して独特なものがあるなぁ、って。そこで音が当たるとかの話になると、なかなか難しくなるかもしれませんねぇ。『Then』('02年3月発表)に入ってた、eastern youthがバックトラックをやってる「音」は小谷さんの曲の中ではギターの音がよく出てると思うんですよね。あの曲が凄い好きで……「この曲、好きィ!」と思って、コピったぁ(笑)。
──小谷さんは、今回のアルバムで「ここにひさ子さんのギターを入れたい」とかありました?
小谷:そりゃありますよ(笑)。ひさ子ちゃんのギターは1秒くらいで世界が変わるじゃないですか? 3人だけでいい音を作ろうという方向に行く前は、『adore』の時みたいにひさ子ちゃんに来てもらって、できたら池ちゃんも呼んで……とか考えたんですけど、それじゃベースが違うだけで“ta-ta”になっちゃう、と思って(笑)。“ta-ta”は今動いてないですけど、私の中では凄く存在が大きいんです。ギターが中心にあるサウンドはその“ta-ta”でできるだろうというのがあったし、小谷美紗子のソロの時はピアノの弾き語りをどこまで恰好いいものにできるかが課題なんですよね。
──3人の音だけで突き詰めるところまで突き詰めてみよう、と?
小谷:そうですね。最近はずっとトリオでライヴもやっているので、ライヴでできないことはレコーディングでもなるべくやらないようにしたんです。
──だからこれだけ生々しい質感に仕上がっているんですね。
小谷:ほとんどがライヴ録音なんですよ。1日に2~3曲レコーディングしたんですけど、2~3回リハをやって、「せーの」で録って、それで終わり。
──「奇跡」という曲は、鼻づまりで震えたヴォーカルのテイクがわざわざ選ばれていたり。
小谷:あの曲は、もう大泣きで。泣けて泣けて涙が止まらなくて、何回唄っても泣き声になったんです。でもそれが、本当の歌だと思って、敢えてあのテイクにしたんですよ。
──英語で唄われている詞は、日本語だと直接的すぎるからという意図があるんですか?
小谷:1曲目(「Rum & Ginger」)はもう、その通りで。「彼女と何回やったの?」っていうのをサビでずっと繰り返してますから(笑)。これが日本語だと、親に聴かせられないですしね(笑)。単純に、英語のほうがメロディに乗りやすいというのもあるんですけど。















