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INTERVIEW

トップインタビュー【復刻インタビュー】古閑 裕×吉村秀樹×加茂啓太郎×吉田昌弘×西村 等(2005年7月号)- センチメンタル過剰なomoide座談会

センチメンタル過剰なomoide座談会

2005.07.01

「『IGGY POP FAN CLUB』なんてタイトルを付けるセンスが最高」(西村)

──向井さんはZAZEN BOYS、ひさ子さんはブッチャーズとtoddle、憲太郎さんはSloth Love Chunksやタイガン、SPIRAL CHORDなどで活躍中で、アヒトさんに至っては…。

古閑:ヴォーカルまでやってますからね(笑)、VOLA & THE ORIENTAL MACHINEとして。全員が中心人物になれるメンバーがたまたまナンバーガールとして集まったってことでしょうね。

吉村:でもね、“僕にもできるんだ”とか“私もしっかりしなくちゃいけない”とか、その意識を引き上げたのは間違いなく向井なんですよ。だからこそ、今はみんなそれぞれやってるじゃないですか。

吉田:ひさ子ちゃんも今度のブッチャーズの新作(『banging the drum』『bloodthirsty butchers VS +/-{PLUS/MINUS}』)で唄ってますもんね。

吉村:ひさ子がメイン・ヴォーカルのtoddleも今録ってるし。僕も何らかの形で関わると思いますけど。

──最後に、いささか“ABSTRACT TRUTH”(抽象的な真実)な問いになってしまうんですが(笑)、みなさんにとってナンバーガールとは?

古閑:バンドって何が起こるか判らないっていうのを、彼らと接して実感しましたね。僕がこの業界にいて20年、そんなことを改めて思い知らされたバンドです。数字的にも音楽的にも、すべてが極限にまで出たバンドだと思うし、だからこそ寿命が短かったのかもしれないですね。それが刹那的だったのかどうかは判りませんけど、何度も申し上げて恐縮ですが…僕個人としては儲けさせて頂きました、ハイ(笑)。

西村:「IGGY POP FAN CLUB」なんてタイトルを付けて曲にするような、あのセンスが最高でしたよね。歌詞には“IGGY POP”なんて一言も出てこないのに(笑)。あとは、自分が小屋の人間だからっていうのもありますけど、いい呑み会をするバンドだったな、と。向井さんを筆頭に、酒を呑むのがごく日常的と言うか、恐らく人生の半分以上は酒を呑むことで占められていると言うか(笑)。今も向井さんはフラッとSHELTERに現れて呑みに来てくれることもあるし、有り難いですよ。

吉田:まぁ…呑みましたねぇ、ホントに。よく呑んで、よく喋ったなぁ(笑)。本当に、自分の人生のなかでもの凄く重要な位 置を占める存在だったと思いますよ。当時は彼女もいなかったし(笑)、ナンバーガールに賭けるしかないところもあって(笑)。
加茂:ナンバーガールと出会う前の吉田は、本当にダメ人間の極致だったもんね(笑)。

吉田:まぁ、もともとがダメ人間でしたから(笑)。でも、自分の趣味と仕事がたまたま一致した幸運な例だと思いますよ。自分でも感情移入しすぎるくらいだったと思いますから。

吉村:吉田さんは一時期僕らの面倒も見てくれていて、本当に世話焼きですからね。

加茂:僕個人としては、メジャーっぽいあらゆる既成の価値観が一度ひっくり返されましたね。メジャーの判りやすい方程式だけじゃないんだな、と。ナンバーガールと出会うまでに10年以上この世界にいて、“メジャー・デビューするならいいスタジオに入っていい音で録ろう”とか“事務所も大きいところに入らせよう”とか、業界的なルーティンに自分が毒されていたところにナンバーガールが目の前に現れた。リアリティがあれば8チャンネルのアナログ・レコーディングでもいい、事務所なんてなくたっていい、スタイリストもヘアメイクも要らない。ただ単純にバンドを恰好良く見せられればいいんだと思うようになったんです。向井君はやっぱり主義・主張が強いから、彼を任せられる事務所はなかなかないだろうなとも思ったしね。根本的なDIY精神をよく理解していたバンドだったし、ロック・バンドというのはやっぱりこう在るべきだな、と。それは今の向井君のスタンスにおいても変わらないし、端から見ていて僕は今は凄くよく理解できますよね。

吉村:僕はですね、やっぱりキーポイントは“生ビール”ですね(笑)。そういうところが言葉にするなら“男らしい”し、本当に素晴らしかったと思います。あとは、今もメンバーそれぞれが確固たるポジションで動いているし、みんな個性がありますね。ナンバーガールに関しては絶妙たるその瞬間が合わさってたんじゃないか、っていう。向井のいろいろな判断も正解だったし、彼の感性も素晴らしい。先にあるヴィジョンとか決断力とか、凄いんですよ。それに尽きますね。バンドが上り調子だった時に向井が解散を決断したのも、結果 としては凄いことですよ。

吉田:そう、憲太郎君の替わりをあえて見つけようとしなかったのは凄いですよ。

11_oih.jpg吉村:だって、「福岡市博多区から参りました、ナンバーガールです」ということを最後まで守り抜いたじゃないですか。違うメンバーが加入したらそれは違っちゃうわけで。だから向井のこだわりは凄いものだったと改めて思いますね。僕も勉強になったし、その瞬間を見れたことは良かったですね。自分はバンドを持続させているし、ナンバーガールの元メンバーもいるし、違う感情はありますけど。まぁでも、ホント喉ごし爽やかな“生ビール”みたいだった。いろいろゴタゴタと話をしてきましたけど、僕はナンバーガールを全部そういうふうに表現しますね。要するに、“ナンバーガール、どうもありがとう”ってことですね。

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